「気合いや根性では会社は伸びない」星野リゾート代表・星野佳路が語る「経営はサイエンス」の真意
「気合いや根性では会社は伸びない」星野リゾート代表・星野佳路が語る「経営はサイエンス」の真意

星野リゾートはいまや国内外81施設(7月25日時点)を運営し、日本を代表するホテル・旅館運営会社へと成長した。しかし、その経営を支えているのは、カリスマ性でも情熱でもない。

「経営はサイエンスです」そう言い切る星野佳路代表は、経験や勘よりも、世界中で検証された理論を信じる。常識を疑い、人と違う道を選び、競争を前提に戦略を組み立てる──。「経営は根性ではない」と語る星野氏に、勝ち続ける会社の条件を聞いた(この記事は、7月25日(土)午前11時30分~テレビ東京で放送『日経スペシャル ガイアの夜明け Beyond The Story』でのインタビューを元に再構成したものです)

「理論」と「根性」、経営に必要なのはどちらか

――星野さんは、これまで数々のホテルや旅館を再生し、星野リゾートを国内有数のホテル運営会社へと成長させてきました。星野さんといえば、すごくクールな部分と、スタッフを鼓舞する熱いリーダー、その両方の印象を持つ人も多いと思います。

星野 そうですか。熱くなるのはスキー以外ないぐらいの感じで生活しているので、自分ではあまりそうは思わないですね。

――スタッフやチームの方に熱を伝えるようなこともされているんじゃないかと思うのですが。

星野 いや、あまり意識してないですね。熱を伝えるということは。

――では、例えば「理論」と「根性」なら、どちらが大切だと思いますか。

星野 それはもう、理論です。理論のほうがはるかに大事ですね。もう根性で仕事をする時代ではないかもしれないですね。

――かなりはっきりおっしゃいますね。

星野 私は経営をできるだけサイエンスとして捉えたいんです。もちろん、人が相手ですからすべてが理論どおりにはいきません。でも、世界中で長年研究され、多くの企業で検証されてきた経営理論を使うほうが、成功する可能性は絶対に高い。

むしろ、そうした理論を無視するほうがよほどリスクが高いと思っていますし、「気合い」とか「根性」は持続可能性という点でもあまりあてにならないですよね。

「続けられるのは、根性があるからではない」

――一方で、理論を実践し続けるには、最後は精神力も必要ではないでしょうか。

星野 よくそう言われます。でも、それも少し違うんです。私は薬に例えて説明することがあります。病気になれば薬を飲みますよね。薬は効くことが証明されているから、すぐに効果が出なくても飲み続けられる。経営も同じなんです。

理論に基づいた戦略は、今日始めて明日成果が出るものではありません。3年、5年とかかることもある。それでも続けられるのは、効果が検証された理論だからです。

自分の思いつきだけで作った戦略なら、成果が出ないと「間違っていたのかな」と不安になって、すぐ変えたくなるでしょう。

――つまり、続ける理由は「根性」ではない。

星野 そうです。根性ではなく、「理論が正しい」という前提があるから続けられる。そこは大きな違いですね。

「常識」と言われると、まず疑いたくなる

――そうした考え方は、子どもの頃からのものだったのでしょうか。

星野 学校の先生には、よく「天邪鬼だ」と言われていました(笑)。昔から「これが常識です」と言われると、「本当にそうなんだろうか」と思ってしまうんです。

――反骨心とは違う?

星野 少し違いますね。常識を疑うというか、なにかこう一般的に信じられていることに対して、「そんなはずはないでしょう」というところから考え始める。

そして、「なぜ違うと思うのか」を、自分なりに論理で説明しようとするんです。

――だから理論を学ぶ、と。

星野 そういう部分もあります。感覚だけでは、人を説得できません。自分の考えを説明するには、理論というほどじゃないかもしれないですけど、理屈は必要になります。

「人と違うほうが、安全だと思っています」

――星野さんは「人と違う見方をする」ことを、以前から大切にされてきました。

星野 そうですね。よく「リスクを取る経営ですね」と言われるんですが、自分では逆なんです。むしろ、人と同じことをするほうが危ないと思っています。

ホテルや旅館は、一度つくれば15年、20年という長い時間をかけて投資を回収していかなければならない。その間、お客様に選ばれ続けるには、他と同じでは埋もれてしまいます。

だから私は、「どうすれば違いをつくれるか」をいつも考えています。人と違うことは、私にとって挑戦ではなく、長期的に生き残るための安全策なんです。

――世間では「横並び」が安心だと考える人も少なくありません。

星野 もちろん短期的にはそう見えることもあります。でも、競争という視点で考えれば、同じ商品、同じサービスを提供している会社が増えれば増えるほど、競争を勝ち抜くのは厳しくなる。

だからこそ、競争しなくて済む場所を探す。そのための差別化なんです。私は昔から、その発想で経営してきました。

「これまでの最大の失敗は…ないですね」

――経営者として、「競争」はどのように捉えていますか。

星野 競争は好きか、と聞かれれば、好きなんだと思います。ただ、「好きだから競争する」というより、「企業は競争から逃げられない」という感覚ですね。市場にいる以上、競争は前提条件です。

――これまで経営者としての「最大の失敗」は何でしょうか。

星野 最大の失敗…そういう風に思ったことはないですね。

もちろん、もっと早くできたかもしれない、と振り返ることはあります。最初の10年は軽井沢にずっといまして、あそこは一番時間がかかりました。

もっとスピード感を持てていれば違う展開もあったかもしれない。でも、その時間をかけたからこそ得られたものもある。なので、昔に戻ってタラレバの話をしても仕方ないと思ってます。

――これまでのお話を聞くと、とても合理的で慎重な経営者という印象を受けます。一方で、ご自身では「楽観的」ともおっしゃっています。

星野 そうですね。基本的には楽観的なんだと思います。もちろん心配性です。だから最悪のケースも考えます。でも、理論に基づいて戦略を立て、「これは正しい方向だ」と判断したら、あとは前向きに続ける。

うまくいかなかったときも、悔しいって思ったことはあまりないですね。次の一手がどんどん頭に浮かんできて、それを追いかけていく感じです。やめたいと思ったことはありませんし、「もう終わりだ」と考えたこともありません。

――理論があるから、未来を信じられる。

星野 そうかもしれません。「信じよう」と意識しているわけではありませんが、正しい戦略を積み重ねていけば、結果はついてくるはずだという感覚があります。理論どおりにやって成果が出ないときは、理論そのものを疑うのではなくて、理論どおりにやってないんじゃないかと疑う。だから、必要以上に悲観することはありません。

文/集英社オンライン編集部

後編 「会社は社長のものではない」星野リゾート代表・星野佳路が語る、“経営者が消える”組織のつくり方 に続く

【番組名】 日経スペシャル ガイアの夜明け Beyond The Story
【放送日時】 7月25日(土)午前11時30分~12時00分 テレビ東京で放送
【配信】 放送未公開部分を含む星野佳路さんの「Beyond The Story」オリジナル版や、「ガイアの夜明け」の過去放送回まで 動画配信サービス「テレ東 BIZ」なら見放題!
テレ東 BIZ:https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/gaia

 

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