テレビはまだまだトガっている。心に“刺さった”番組を語るリレー連載「今週のトガりテレビ」。
直木賞作家の話術に明石家さんまが注目
「お前、引っ張りだこになるぞ!」
明石家さんまは、目の前の初対面の男に言った。
それは7月17日放送の『さんまのまんま 真夏のおしゃべり祭り』(カンテレ・フジテレビ系)でのこと。その男は、直木賞作家の西加奈子とともにゲストでやってきた、同じく直木賞作家の朝井リョウだ。
彼の特異なキャラクターとトークスキルを、さんまはすぐに見抜いたのだ。もちろん、朝井のファンやラジオリスナーにとっては、自明のことではあった。
2015年から1年間放送された、歌人の加藤千恵と組んだ『朝井リョウ・加藤千恵のオールナイトニッポン0(ZERO)』や、高橋みなみと組んだ『高橋みなみと朝井リョウ ヨブンのこと』(2017年~2021年)、そして再び加藤千恵と組み、2026年2月に配信が始まったポッドキャスト『朝井リョウ・加藤千恵 信頼できない語り手』(いずれもニッポン放送)などでの語り口は、圧倒的。
その才気が見過ごされるはずもなく、テレビプロデューサーの佐久間宣行は、朝井とプライベートでも仲の良いオードリー・若林正恭がMCを務める『ご本、出しときますね?』(当時BSジャパン、現BSテレ東)や『あちこちオードリー』(テレビ東京)などに、彼をゲストとして呼んでいた。もっとも、それらはいずれも気心の知れた相手とのトークだった。
そんな朝井が、ついに明石家さんまと相まみえる。
どんな化学反応が起きるのかという期待は大きかったが、不安がまったくなかったわけではない。だが、それは杞憂に終わる。
朝井は、わずか数ターンのやりとりで、さんまの心をつかんだのだ。
丁寧で優しげな口調でありながら、そこに“猛毒”をまぶし、しかも、それが立て板に水のように淀み無く続いていく。
「こういう男だったんだ。もっと暗い、ボソボソとしゃべるようなイメージやった」
そう言うさんまに、朝井は一筋縄ではいかない答えを返す。
「そのような影もお見舞いすることもできます」
まさに軽妙洒脱。
そんな朝井に、さんまは、これからオファーが絶えなくなると繰り返す。しかし、朝井はきっぱり言い放つ。
「嫌です。断ります」
さんまは「もったいない」と惜しみつつ、朝井リョウをこう評した。
「難儀な男」
それは、さんまにとって最上級の褒め言葉だろう。
「しゃべり方、オモロいな」笑福亭鶴瓶が注目した個性
この日の放送では、6月9日に亡くなった俳優の中村玉緒さんを追悼する映像が放送された。さんまは、中村玉緒について、同じく今年亡くなったガッツ石松と並んで「昭和最大のボケ2人」(『さんまのお笑い向上委員会』2026年6月27日)と評していたが、その玉緒の「ボケ」としての才能を見出すきっかけになった番組こそ、『さんまのまんま』だった。
33年前の1993年5月31日に、2人はこの番組で初共演を果たした。
その際、左手を隠し気味に話す玉緒に対し、さんまは「えらい太い指輪してはるなって思ったら絆創膏だったんですね!」とツッコんだ。
その映像を見ながら「ここやねん」と述懐するさんま。
普通、女優ならば本番では絆創膏を外して出る。そうしない玉緒に面白さを感じたさんまは、即座にプロデューサーに「すまないけども、中村玉緒さんをバラエティ番組にレギュラーで出したいから口説いてくれ」と頼み、『さんまのSUPERからくりTV』(TBS)などでの共演につながったという。
さんまの、“異物”とも言うべき存在の面白さを嗅ぎ取る鋭い感覚を物語っている。
笑福亭鶴瓶もまた、その嗅覚を持っている。7月17日放送の『A-Studio+』(TBS)にゲスト出演した俳優の中島歩に対し、彼が一言二言話したところで「ちょっといいですか?」と遮って言った。
「しゃべり方、オモロいな」
中島歩は、美輪明宏演出・主演の舞台『黒蜥蜴』で2013年に俳優デビューを果たすと、翌年には『花子とアン』で朝ドラに初出演。
その後も、大河ドラマ『青天を衝け』、『不適切にもほどがある!』、『愛の、がっこう。』、朝ドラ『あんぱん』、大河ドラマ『豊臣兄弟!』など、数々の話題作に出演してきた。
『俺たちバッドバーバーズ』(テレビ東京系)で草川拓弥とダブル主演を務め、現在放送中の『Tシャツが乾くまで』(TBS系)でも主要人物を演じている。
彼の最大の特徴は、そのねっとりとした独特の口調だ。
その可笑しみは、トークでも健在だった。
7月12日のラジオ『爆笑問題の日曜サンデー』に出演した際も、自覚的なのか無自覚なのか分からない、とぼけた受け答えで日大藝術学部の先輩である爆笑問題を翻弄した。
これを受けて、その週の『爆笑問題カーボーイ』(ともにTBSラジオ)では、太田光が、「中身空っぽ」などとイジりつつ、「あれは大物」「あいつは器なんだよ。本当に空っぽの器なんだよ」「もしかしたら、すごい役者になると思う。もうなりかけてるけど」と絶賛しながら振り返っていた。
中島歩が明かした意外な“夢”
中島は国木田独歩の玄孫で、もともと『爆笑問題カーボーイ』のリスナー、その番組のトークで日藝(日本大学藝術学部)を知り進学し、落語研究会に所属していたなど、その経歴もユニークだ。
『日曜サンデー』では「将来の夢」を聞かれ「スター」という漠然とした答えで爆笑を誘っていたが、『A-Studio+』では、大学の落研での自己紹介のときも「スターになりたい」と言っていたことが判明していた。
鶴瓶は「狙っていない素」だから面白いと称賛し、田中裕二も「バラエティもいけそうだね」と評した。それでも本人は「正統派俳優」だと言い張る。そのズレが面白い。
実際、『Tシャツが乾くまで』の番宣のため、7月10日の『ラヴィット!』(TBS系)をはじめいくつかのバラエティに出演したが、その絶妙に“変”な一挙手一投足で視聴者を釘付けにした。
朝井リョウも中島歩も、かつての中村玉緒がそうであったように、今のバラエティ番組の中では間違いなく“異物”だ。
テレビは“異物”が混入されたときにこそ、その面白さがあらわになる。
しかし率直に言えば、今のテレビには、彼らが"異物"のまま魅力を発揮できる余地がある番組はあまり見当たらない。
彼らが出たくなるような番組が多くなることこそが、テレビの面白さのバロメーターになるに違いない。
文/戸部田誠(てれびのスキマ)

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