〈福岡県議“実弾”疑惑〉「人の弱みに付け込んだカツアゲ」正副議長ポストのために「現金を払った」証言が続々…声紋鑑定99.99%以上でも、もらった副議長は「記憶にない」
〈福岡県議“実弾”疑惑〉「人の弱みに付け込んだカツアゲ」正副議長ポストのために「現金を払った」証言が続々…声紋鑑定99.99%以上でも、もらった副議長は「記憶にない」

一部議員による豪華海外視察などの問題が続出している福岡県議会で、今度は議長、副議長職の就任前に、定数87のうち41議席を占める自民党県議団幹部らに多額の現金を支払ったとの証言が相次いでいる。

すでに5人の県議が支払いをメディアに認め、金銭授受前のやり取りとされる音声も公開された。

さらに服部誠太郎福岡県知事も県議に負けない豪華海外視察を堪能していたことが露呈。福岡県の政界は一体どうなっているのか。

「カツアゲ、みかじめ料のような要求だった」

議長、副議長の席を得るため、求められて“実弾”(現金でのワイロ)を使ったと最初に西日本新聞などに証言したのは、2020年6月から1年間議長を務めた元自民党会派所属で現在無所属の吉松源昭県議と、同時期に副議長だった自民党の江藤秀之県議だ。

吉松氏は2018年12月、当時自民党県議団会長だった原口剣生県議から「汗をかく気はあるのか?」と聞かれ、自民党と他会派のゴルフ代名目で550万円を払い、2019年10月には中尾正幸現副議長に同様の名目で1000万円を渡したなどと証言。中尾副議長にカネを要求された際のやり取りとされる音声も公開した。

江藤県議も副議長就任前に中尾副議長に求められ、現金で500万円を支払ったと話し、そのほかにも「お車代」や「食事代」など合計すると2人が支払ったと証言したカネの総額は2750万円になる。

「吉松氏が『議長ポストにつながる支払いだと理解できた』と話したことで、“議長ポストはカネで買う”とのかねてからの噂が事実ではないかとの見方が強まりました。

そこでメディア各社が正副議長経験者に取材をかけると、ほかにも3人が払ったと認めました。そのうち、1人の民主党系会派に所属する元副議長は『蔵内勇夫議長に500万円を現金で手渡した』とメディアに話しています」(地元記者)

蔵内議長は豪華海外視察問題でも中心になった“県議会のドン”と呼ばれる重鎮。6月の釈明会見では、「私は海外旅行は続けます。あ、すいません。海外旅行じゃありません。海外活動です」と口にして物議を醸している。

(#1)

7月7日に記者会見した吉松県議は、「弱みに付け込んだカツアゲ、あるいはみかじめ料的な要求だった」と非難する。

「99.99%以上」声紋鑑定でも「記憶にない」

だが、吉松県議らは単なる“被害者”ではない。

「議長選挙の票集めでカネの授受があれば、贈収賄容疑にあたるとの見方があります。さらに吉松氏の議長就任時の政治資金パーティーには県職員も多く参加し、収益が2000万円を超えていたといい、本人は『トントンになった。よくできたシステムだと思った』と発言しています」(地元記者)

福岡県では県職員でつくる組織が正副議長の政治資金パーティー券を組織的に購入してきたことが今春発覚し、取りやめられている。正副議長になりたい県議が自腹を切っても結局、懐は痛まない仕組みになっていた疑いがある。

一方、現金を受け取ったと名指しされた側で認めた県議はいない。蔵内議長は吉松県議のカツアゲ発言の翌日、民放の取材に、「僕は彼(吉松県議)をね、育ててきたつもりなんだ。(中略)どこでああなっちゃったのかね。残念です」と吉松氏をこき下ろした。その後も、民主党系会派の副議長から500万円も含めカネを受け取ったことはないと主張している。

中尾副議⻑はさらに苦しい立場だ。吉松県議が1000万円を渡す前日に中尾氏とやり取りしたものとして公開した音声では、中尾氏とみられる男性が他会派とのゴルフで「接待みたいなことをやる」と発言。

その費用を翌日に預かると受け取れる発言をし、「大金やけんね。管理しとかんとね」とも言っている。

音声を聞いた中尾副議長は、「俺の声っぽい。でも記憶にない。金銭を受け取っていないので信ぴょう性に乏しい」と主張した。

その後、西日本新聞などは音声を専門機関で声紋鑑定してもらい、「99.99%以上の確率」で中尾副議長の声で間違いないとの結果が出たと追撃。追い込まれた中尾副議長は、「科学的にそうであれば私の言った言葉なんでしょう。でも記憶にない」と話し、もはや説明がつかない状態だ。

“実弾”疑惑は県庁にも飛び火…海外視察に3億円超

県議会の騒ぎが広がる中、服部知事は14日に、県職員が県議を「先生」と呼んだり、委員会室に入る県議を起立しお辞儀で迎えたりする過剰な対応を改めると表明し、議会との関係を見直す姿勢をアピールする。

だが、その服部知事も21年4月の就任以来、豪華海外視察を行なっていた。

「県の発表では、これまでに知事と副知事が行なった23件の海外視察には約3億3732万円が使われています。県議会の海外視察では、ハワイの高級ホテル『シェラトンワイキキビーチリゾート』の一泊11万4600円の部屋に泊まったことが税金浪費の象徴として非難されましたが、知事はパリで一泊13万4000円の部屋に泊まっていました」(県政界関係者)

知事はこのグレードの部屋を使ったことを「反省すべきこと」と述べたが、県議会の一部議員と同じような考えで税金を使っていたことになる。

そしてこの関係者は、そうした状況になるのは「当然」と指摘する。

「服部知事は初の県職員生え抜きの知事ですが、蔵内さんに気に入られて副知事にまで出世し知事になった、『番頭』みたいな人で、なんでも蔵内さんの言うことを聞くような人です。蔵内さんこそがラスボスです。

結局、県議会も県庁も、私物化がこれほどひどいのは他にはないんじゃないでしょうか」(同関係者)

また、今回県議会のカネの問題が出た背景には、蔵内議長を頂点とする自民党県議団が「強くなりすぎたためではないか」との指摘もある。

「福岡の自民党県議団というのは自分たちの権益を求め、国会議員なんかとも一線を画す独特なところがあるんです」と別の野党関係者は話す。

実際、福岡県は高市早苗首相を支える麻生太郎自民党副総裁の地元だが、その麻生氏は獣医師でもある蔵内議長が世界獣医師会会長に就任したことを祝う6月のイベントに、「強引ともいえるような⼿腕をいかんなく発揮されることを楽しみにしたいと思います」と、意味深なビデオメッセージを寄せている。

蔵内議長は麻生副総裁との関係は良いと強調する一方で、今回の告発騒ぎを「政治的陰謀と感じるか」と聞かれたのに対し、「噂は聞きました。私の政治スタンスに対する対⽴をしている⽅々との問題じゃないかというのが⾔われているということは、東京で聞きました」と、これまた思わせぶりな回答をしている。

だが、どのような思惑があろうと、議会で違法の疑いがあるカネが飛び交っていた疑惑は消せない。福岡県議会事務局は5月下旬、議会棟での取材の撮影や録音を許可制にするなどとする取材制限を突然かけようとしたが反対の声に押され、撤回した。今回のように、「報じられては困ること」が、福岡の政界にはまだまだあるのではないか。

※編集部追記 24日午前、副議長である中尾正幸議員が議員辞職した。

同日午後1時より、中尾氏は記者会見を行う予定。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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