「サイコパス」という言葉を耳にする機会も最近増えてきたのではないだろうか。中村信子さんの著書でも話題になった「サイコパス」は、実は身近な存在としてあげられている。
そもそもサイコパスとは?どういった特徴があるのか?サイコパスの定義と付き合い方を考えてみたい。

サイコパスとは?日本語では「精神病質者」


サイコパスはそもそも、英語が語源の言葉。ロングマン現代英英辞典によると「暴力や犯罪に向かわせる、深刻でかつ長期的な精神病を患った人」という意味があるという。日本語に訳すと、精神病質者という意味だ。具体的に何を意味するのか、詳しくみていこう。

サイコパスってどんな人?意味、定義とは


サイコパスと聞くと、冷酷な犯罪者のようなイメージを持つ人もいるかもしれない。確かに冷酷で暴力的な面はサイコパスの特徴といってもよいだろう。しかし、それはサイコパスの一面に過ぎない。


サイコパスの定義は、他人への共感力に欠けた自己中心的な感情をもち、他者への思いやりや犯罪意識に欠けた人物のこと。しかし、実際に表面上だけではサイコパスかの判断はできないのだ。

それは、サイコパスは、問題行動によって判断されるのではなく、感情など内面的なものも評価されるためだ。そのためかサイコパスそのままの特徴を醸し出している人もいれば、胸にサイコパスを秘めた社会的成功者も多くいる。サイコパスだから犯罪に傾倒するというわけではない。

中野信子さんの著書「サイコパス」も話題に


話題に上がるサイコパスは、なぜここまで広がるようになったのだろうか。まずは、洋画やアニメなどサイコパスを題材としたような作品の影響もある。
しかし、ここ最近の日本でさらに大きい影響を与えたのが、脳科学者である中野信子さんの著書「サイコパス」ではないだろうか。



サイコパスは、脳の共感する部分が普通の人と比べて欠如しているという中野さん。著書では、語りが魅力的、大きな舞台でも堂々としているなどのサイコパスの特徴をわかりやすく解説している。それは、これまで難しい言葉で表現されてきたサイコパスの定義とは違い、具体的かつ読んでわかりやすい内容だ。「サイコパス」に該当した人や「サイコパス」の疑いがある人物に近い人からは共感の声も上がっている。

サイコパスに見られる20の特徴とは?


ここまで日本で話題のサイコパスについて紹介してきたが、どのような項目に該当したらサイコパスと判断されるのだろうか。サイコパシー・チェックリスト改訂版より、サイコパスに見られる20の特徴をみていきたい。


サイコパスに見られる20のチェック項目


以下が、サイコパシー・チェックリスト改訂版でのサイコパスに見られる20のチェック項目である。

1.口達者で表面的な魅力がある
2.自己中心的でナルシスト
3.退屈しやすく刺激を欲している
4.異常なまでに嘘を吐く癖がある
5.抵抗なく人を操れる
6.良心や罪悪感といった感情に乏しい
7.感情が薄っぺらい
8.冷淡で共感性に欠けている
9.他人に依存した生活を送る
10.自分の行動をコントロールできない
11.性に関してだらしない
12.幼少期に問題行動を起こした
13.現実的かつ長期的な目標を立てられない
14.深く考えず衝動的に行動してしまう
15.無責任な行動が目立つ
16.自分の行動に対しての責任を持てない
17.結婚や離婚を繰り返す
18.少年時代に犯罪歴がある
19.仮処分取り消しなどを受けたことがある
20.さまざまな犯罪歴がある

各項目をみていき、あてはまる項目が多いほど、サイコパスの傾向があると判断していく。ただし、自身では客観的な判断が難しいため、診断には専門家の判断が必要である点には注意したい。

この項目から見えてくるのは、前述したようにサイコパス=犯罪者というわけではないという点だ。20項目のうち犯罪にかかわる部分はたったの3項目。むしろサイコパスの診断では、反社会的な行動よりも、内面的な部分を評価している。

確かに、脳科学者の中村信子さんも発信しているように、ここ最近の犯罪者にサイコパスの傾向も多いように感じるが、そうした犯罪傾向を持っているのは、サイコパスの中でもごく一部に限定されることに注意したい。
反対に、一見すると人を引き寄せる魅力的な人でも、内面ではサイコパスの特徴を多く持っている人なのかもしれないのだ。

サイコパスが多いとされる職業トップ10とは


冷淡、口達者などデメリットととらえられる部分も、職業によっては生きてくる場合がある。むしろサイコパスな面があるからこそ成り立つ職業も少なくない。特にカリスマ性やリーダー性が重視される職業では、サイコパスの活躍度は大きい。

ここでは、心理学者であるケヴィン・ダットン氏が著書で紹介しているサイコパスが多いという職業トップ10を紹介する。

1位 最高経営責任者
数ある職業の中でもサイコパス率が高いといわれるのが、CEO、日本では社長にあたるポジションである。有名な会社社長がサイコパスなのではないかと考えられているのもこのためだ。
彼らが最高経営責任者に多いといわれる理由は、冷淡でかつ大胆であるため。あれこれ責任を考えたり、周囲を考えてストレスに押しつぶされたりしないために、普通の人ではできない冷静な判断やあっと驚かせる経営手腕が発揮できると考えられる。
サイコパスに見られる20の特徴とは?あなたの周りにもいるかも

2位 弁護士
冷静さ、過大なまでの自信、人をあざむく力などサイコパスの特徴はときとして魅力的で有能な弁護士を作り出すことがある。さらに犯罪者の側に立って弁護するためには、罪悪感や正義に押しつぶされない強さも必要だ。こうしたとき、他人への共感が低いサイコパスの特徴は生きてくる。
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3位 キャスター
テレビやラジオなど、人前に立つプレッシャーのかかる職業もサイコパスが多いといわれる。
サイコパスの特徴が職業に生きてくるだけでなく、ナルシシズムな欲求が、人前に出ることによって満たされるためだ。
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4位 セールスマン
口のうまさや表面的な魅力の高いサイコパスは、セールスマンとしての魅力もある。好成績をたたき出す人も少なくない。一方で、執拗なまでの数字へのこだわり、チームとしてのコミュニケーションの不足があだになって失敗する人もいる。
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5位 外科医
イギリスの外科医師会の調べでは、通常の診療科よりも外科医にサイコパスが多いことがわかっている。これは、1分1秒を争う緊急の場面も多い外科手術で、即時の決断が必要とされるためだ。冷静に、かつ無駄な感情に左右されないサイコパスは外科医の仕事向きでもある。
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6位 ジャーナリスト
行動力や人を寄せ付ける魅力などは、ジャーナリズムにおいて重要な部分だとケヴィン・ダットン氏はいう。こうした特徴を持ち合わせているサイコパスにとっては、まさに適職だ。
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7位 警察官
自分よりも他者を優先して守るという点で考えると、警察官はサイコパスとはかけ離れているようにも思える。ケヴィン・ダットン氏が指摘するのは、そうした正義ではなく、サイコパスの持つ任務を着実にこなす判断力と冷静さだ。
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8位 聖職者
人々を導くという点で、人々から尊敬される聖職者も意外にサイコパスが多いといわれる職業だ。理由は、人を操ることに長けたサイコパスは、ときとして聖職者としてのカリスマを見せるためである。既存の宗教で想像するとイメージしづらいが、新興宗教などでの教祖をイメージするとサイコパスに聖職者が多い理由もなんとなく想像できる。
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9位 シェフ(料理人)
9位にあがったのは、レストランや飲食店など、身近な職業であるシェフだ。他人が失敗するような混とんとした雰囲気が好きという点で、サイコパスに好まれる傾向があるという。
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10位 公務員
2014年、イギリスではサイコパスの職員を積極的に採用することを検討したことがあった。理由は、サイコパスの論理的思考が、公務員という仕事においてはまり役だったためだ。
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もし職場にいたら?サイコパス気質な人との付き合い方


ここまでサイコパスの特徴やサイコパスの多い仕事を紹介してきた。サイコパスは、意外にも身近なところにいることがわかる。もし職場にサイコパスがいたらどのように付き合っていくのがベストなのだろうか。

迷わず距離をとって付き合う


サイコパスは、脳の構造的に他人への共感力が欠如している。そのため、いくらこの気持ちを分かってほしいとアピールしても、心も体も疲れてしまうだけだ。もともと他人への共感意識がないサイコパスとは平行線の状態が続いてしまう。

サイコパスの人間と付き合って疲弊してしまうようであれば、迷わず距離をとった付き合い方をしたほうがよいだろう。適度な距離があれば、自分のことを理解してもらいたいという共感意識もそこまで生まれない。

サイコパスの特質を改めて理解しよう


サイコパスとは基本的には距離を置いた付き合い方が望ましいと紹介したが、必ずしもそうでない場面もある。たとえば、上司がサイコパスだった場合だ。上司がサイコパスだと、理不尽な要求や搾取によって心のバランスを崩してしまう人も少なくない。

そうした場合、重要なのがサイコパスの特質を理解することだ。確かに冷淡で他人をコントロールしようとする人との付き合いは大変なこともある。しかし、冷静な判断ができるサイコパスだからこそ、自分を有能だと見せれば態度も変わってくる。この際、サイコパスの逆鱗に触れないよう、サイコパスである人を立てることも大切だ。特性を理解して逆手に取れば、サイコパスと円満な関係を築くことも可能なのだ。

近年注目されるサイコパスは、その突飛した部分から犯罪者予備軍と勘違いされることも多い。しかし実際は、脳の共感力の部分が、正常な人と比べて欠如しただけであり、害がない場合も少なくない。意外に身近な場所にいるサイコパスだからこそ、勝手にいろいろと決めつけるのではなく、特性を理解して付き合うことが大切だろう。