10月14日(金)、15日(土)、16日(日)の3日間に渡って、千葉・幕張メッセ 9-11ホールで10万人規模のヴィジュアル系音楽フェス『VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powered by Rakuten』が開催される。内容は日替わりになることがすでに告知されているが、その中でも注目すべきは、イベントの中で催される『エクスタシー・サミット』。
なんと、1992年の大阪城ホールと日本武道館を最後に開催されていなかったあの伝説のイベントが24年ぶりに復活するという。80年代半ばから取材していた側だから、身震いと共に当時の思い出の数々が蘇ってくるっての。

このコラム3回目にして最終章は、過去の『エクスタシー・サミット』を振り返ってみよう。“若手バンド育成のためのイベント”というYOSHIKIの発案によって1988年からスタートしたのが『エクスタシー・サミット』だった。その1回目は、今はもう閉店してしまった大阪のバーボンハウスで行なわれている。出演はローディー軍団のGEORGE率いるLADIES ROOM、ローディー軍団の頭であるHARAが率いるラナンシー、EXTASY RECORDSに加わったばかりのZI÷KILL、COLORのローディだったDENが結成したBY-SEXUALなど。そう、スタート当初はXは出演することなく、まさに若手バンドのために舞台を用意してあげていたイベントだった。

それがちょっと変わってきたのが1989年に目黒鹿鳴館で行なわれた東京での『第2回エクスタシー・サミット』。このときもXとしての出演はなかったものの、イベントの司会進行を務めたのはTOSHI。さらにZI÷KILLのライブ中にはHIDEがヴォーカリストとして飛び入り(後に“ジキルとハイド”なるバンド名を名乗る)、TOSHIもLADIES ROOMのステージに飛び入りしてハノイ・ロックスの曲をカバーするというサプライズも。

それだけに留まらず、ヴォーカルにCOLORのDYMAMITE TOMMY、ギターにYOSHIKI、ベースにLADIES ROOMのGEORGE、ドラムにTAIJIというラインナップによる“無敵バンド”が登場。最初の趣旨はどこへやら、完全に乗っ取りに掛かったYOSHIKIだった(笑)。
同時に『エクスタシー・サミット』はセッションバンド祭り、レーベルを超えた過激なロックイベントといった色合いも見せ始めていく。

元来、好奇心旺盛なYOSHIKIである。なにしろ、あの伝説のテレビ番組『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』に何度か出た過去だってある。他のバンドがバラエティ番組のネタ的に扱われるのはイヤだと拒否していたのに対して、YOSHIKIは面白そうだからと出演し、“ヘビーメタル界最高のこんちくしょう”と高田純次に命名されたことだってある。さらにヘビーメタルチーム運動会や、やしろ食堂での衝撃ライブなど……、おっと、ここまでにしておこう。このコラム、御本人も読んでくれているみたいなので。

ともかく面倒見のいい親分肌にして、未知のことにも進んで挑戦していくのがYOSHIKI。だから『エクスタシー・サミット』も回数を重ねていくたびに拡大化。1991年10月には、ついに日本武道館で実現させる。さらに1992年には大阪城ホールと日本武道館でも開催。もちろん出演バンド達のそれぞれのステージもありながら、Xのメンバーを中心とした各セッションバンドや飛び入りも大きな見どころになった。

TOKYO YANKEESにはHIDEとPATAが飛び入りして、サウンドをさらに暴走させたかと思えば、TOSHIはLADIES ROOMの百太郎と“トシ出山とジュテーム百太郎ズ”を結成してビートルズや演歌をカバー。
TAIJIはセッションバンドで骨太ロックを轟かせ、YOSHIKIはDer ZibetのISSAYと、ルー・ルードの曲をしっとり聴かせる。

また、2度目の武道館のときには、Xの「Silent Jealousy」をもじった“サイレントいやらし~ず”なるセッションバンドまで登場。ちなみに命名したのはGEORGE。ステージではYOSHIKI、HIDE、PATA、LUNA SEAのSUGIZO、TOKYO YANKEESのNORI、ZI÷KILLのKENという6人のギタリストによる豪快なリフで「X」を決め、どえらい騒ぎを巻き起こした。

そして当然ながらラストを締めくくるのは無敵バンドである。出演ミュージシャンが入り乱れながらの熱狂したステージは、まさに『エクスタシー・サミット』でしか目にできない豪華なセッションだった。俗にいう、どんちゃん騒ぎである。あと、各バンドの機材転換時、Xのメンバーや出演ミュージシャンが出てきては、おもしろトークで盛り上げたのも、『エクスタシー・サミット』ならでは。

今回の『VISUAL JAPAN SUMMIT 2016』も出演ラインナップが続々と発表され、すでにものすごいことになっている。ただし14日は『エクスタシー・サミット』と銘打っているだけあって、出演バンド達も相当な覚悟が必要なはず。だってYOSHIKI親分、何をしでかすか分からないっすから。
(文/長谷川幸信)

◆連載 第1回目:エクスタシー・サミット復活に身震い…YOSHIKIが率いたEXTASY RECORDS設立秘話(1)
◆連載 第2回目:荒くれ者の集まり、EXTASY軍団…YOSHIKIが率いたEXTASY RECORDS設立秘話(2)


■■筆者プロフィール
フリーライター。
インディーズ時代より、X(X JAPAN)のインタビュー記事を音楽雑誌ロッキンfで執筆。『エクスタシー・サミット』のオフィシャル的ムック『無敵 EXTASY BOOK』(1992年、立東社)、『無敵II EXTASY BOOK 1993』(1993年、立東社)でも執筆及び編集協力で参加した。ちなみに、TOSHI、YOSHIKI、PATAとは同じ歳。
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