ある女性タレントが全身脱毛をめぐって大手美容サロンとトラブルになっているという。タレントのマネジャーによると「全身脱毛を依頼したがやけどを負ってしまい、完治まで半年以上かかることから一部グラビアなどの仕事ができなくなったので補償を求めたが、代金の返金のみだった」という。



 一方、サロン側は「事前にやめるように言っていたのに、女性が日焼けをした影響があった。被害の範囲は数センチ程度で仕事ができないとは思えず、脱毛処理で想定すべき範疇のもの」と反論した。

 互いに平行線をたどっていることから訴訟に発展する可能性がないか聞いてみたが、タレント側は「脱毛トラブルなんてイメージダウンになるので」(マネジャー)と否定的だ。

 そんな両者の言い分はさておき、最近は国民生活センターにも脱毛に関する苦情が急増中だ。多いのは「脱毛をきちんと行ってもらえなかった」という施術レベルの問題や、「高額な料金を払ったのに予約が取れない」などの契約トラブル。芸能人やニューハーフなど、プライバシー厳守な顧客も多い東京・新宿の脱毛サロン「Amour salon」の代表、横田はるか氏は「それも当然」だとする。


「私は最初、大手脱毛サロンに入社したんですが、数時間の研修を受けた翌日にはお客さんを施術するよう指示されました。ちゃんとした技術が身についていないのに駆り出されたのは、エステティシャンに公の資格がないので、誰でもできてしまうからなんです」

大手脱毛サロンの危険を訴える横田さん

 美容師のように指定の養成施設を経て国家試験を受験するような制度がないため、その現場を初めて見たときは「あまりのひどさに、愕然とした」と横田氏。

「別の若いエステティシャンの施術を見たとき、お客さんが目隠しをしているのをいいことに、携帯電話を片手にやっていて、大手でもこんなにいいかげんなものかと驚いた」(同)

 さらに予約をめぐる詐欺的な対応も、この業界の常套手段のように横行しているという。

「ひどいところは経費を抑えてギリギリの人手で運営して、ほとんど予約が取れない状態にしているんで、3カ月後にやっと予約が取れるなんて状態になります。そうすると月1万円のコースでも3カ月先までの2カ月、施術ゼロで料金を取れるので、店側は一石二鳥。お客さんがまとめて何十万円という高額の先払い契約をしても、予約の保証まではしてません。

このペースだと全身を脱毛するのに一体何年かかるんだという、詐欺みたいなこともあるんです」(同)

 悪質な業者だと「次の施術まで3カ月ぐらい空けた方がいい」とウソの見解を示すこともあるというからひどすぎる。こうした詐欺的な業者は大半が客寄せのために初回500円などの激安価格で釣り、実際には高額な契約をさせるパターンだという。

 国民生活センターに問い合わせたところでも「初回250円でやってもらいにいったが、店の人に強く勧められ、数十万円の全身脱毛コースを契約してしまった。翌日、解約を求めたが断られた」というものや「2年間は無制限で通える高額コースを契約したが、実際には年に5回しか予約が取れなかった」といった苦情があるという。

 一般的に悪質業者を見破る方法は非常に難しいといわれるが、横田氏は「見極めるまで高額な契約はしないこと」とアドバイスする。

「技術的には肌の色の濃さによって施術の調整が必要なのに、それができないエステティシャンも多いので、まず事前のカウンセリング時に細かい説明で知識があるかどうかを見極めたり、施術のときにわざと“強めにお願いします”とか注文をつけて、対応できるか見るのも手です。
高額な契約は信頼できると思ってからでも遅くはないので、やたら契約を急がせる業者は信用しない方がいいでしょう」(同)

 最近は男性客も増えている脱毛は、肌の露出が増える夏の需要が高いが、慌てて駆け込んだためのトラブルも多い。前出の女性タレントも、写真集撮影のスケジュールに間に合わせようと急いだ中での被害だった。前年の秋冬から翌年に向けて、焦らず信頼できる業者を見つけて行うのがよさそうだ。
(文=ジャーナリスト・片岡