今回で3日目を迎える、DDT・高木三四郎インタビュー。はっきり言って、今回は山場です。
必見です。みんなが聞きたいことを集中して聞いてしまっているし、高木大社長が一番伝えたいことがこの日のテキストに詰まってるから。ご覧ください。
PART1 PART2
高木三四郎に遂に質問「飯伏幸太はWWEに行くのか?」

「WWEには勝てない。勝とうとしちゃいけない」


――今回のWWE日本公演は「中邑真輔、凱旋!」という意味合いがすごく大きいと思うんですけど、実態としてはいわゆる“引き抜き”という話だったと思います。これって、高木さんは経営者としてどうお考えですか?
高木 そもそもこれには背景があって、「WWEネットワーク」という動画配信サービスをWWEは持ってるんですよ。
日本の場合はテレビ局が映像を作り、そこから放映権料をもらってプロレス団体は成立してた。でも、WWEは最初から映像のセクションを持ってて、自社で制作した映像をテレビ局に販売していたんですね。そして今は、WWEネットワークで「24時間、いつでもWWEの試合を観ることができます」と打ち出しているんです。WWEには映像ストックがふんだんにあるので。で、今のWWEネットワークには会員が何万人もいるわけですよ(注:2016年4月現在で約182万人)。あのサービスは、月額が9ドル99セント。
約1,000円くらいだと換算すると、18億ものお金が何もしなくても毎月入ってきます。これは大きい。かつてのWWEは「ロウが2.9%だ」とか「スマックダウンの視聴率が3%を切った」って、ケーブルテレビの視聴率を気にしていました。でも、今は加入者数を増やすことに専念しています。ただ、アメリカ国内のファンのパイはもう決まっちゃってる。だからアメリカ以外のパイ、海外の選手に食指を伸ばしにいく。
土壌は、もう出来上がっていますから。世界中のプロレスラーの頂点はWWEで、みんなの中に「WWEに上がりたい」という意識ができているので、その辺は簡単。「ウチに上がんない?」「わかりました」みたいな。その流れは脅威と言うより、正直な話、もう無理ッスよね。
――止めることはできないと。
高木 止めることはできないし、勝てない。

――WWEには魅力もあるし、金銭的な面でも太刀打ちできないし。
高木 いや、と言うよりもハッキリと勝てないですよ、絶対に。だから、勝とうとしちゃいけないと思います(笑)。
――なるほど(笑)。
高木 呼ばれたら、行きたい奴は行けばいいと思うし。だけど、DDTにはDDTの価値観があるし、DDTにしかできないことを作り上げていく必要性があるんじゃないかと僕は思ってます。
「WWEだとこれとこれはできない。DDTだとこれとこれはできる」っていうのをドンドン作っていく方がいい。WWEが路上プロレスをやるかと考えたら、たぶんやらないと思うし。WWEがパワーポイントを使ったプレゼンテーションをやるのかって言ったら、やらないだろうし。
――WWEが「煽りパワポ」をやったらビビりますよね(笑)。
高木 やらない事をやっていく。
そのコンテンツを商売にしていく。ウチもぼちぼち、ちゃんとした動画配信とかコンテンツビジネスに入っていかないと太刀打ちできないなというのは感じてます。

人材のWWE流出は止められない。でも、恐れることは何もない


――KENTA選手を契機とした日本人選手のWWE流出が加速化していくんじゃないかという気がしているのですが、止めようがなさそうですよね。
高木 いや、でも別にいいんですよ。WWEは入れ替わりが激しいので何年もいるわけじゃないし、必ず戻ってくることもあると思ってます。
――なるほど。
高木 誰かが行ってしまったとしても、育成さえきちんと行っていれば取って代わる次の選手がちゃんと出てくるんです。行きたいと言う者は止めることはできないし、それは行けばいいんです。ただ、WWEでも抱えきれる選手の数は限られているし、何年かしたら絶対に戻ってくるわけだから、その時に条件が合えばまたウチに上がればいいし。そもそも、英語圏で皮膚の色も言語も違う人間なので。まず英語が喋れなければいけないだろうし、3~5年すれば色んな人材が出てくるじゃないですか。そしたら、多くの選手が契約解除されるわけですよ。その時に声をかければいいだけの話なので。
――なるほど、たしかに。
高木 3~5年の間に価値を膨らませてくれればいいのかなあって。行っちゃうのはしょうがないじゃないですか? で、行った方がいいと思うし。一旦大きくなって戻ってくればいいだけの話なんです。何より、僕はマンネリが一番の敵だと思っているので。
――では、高木さんとしては選手が契約解除されるタイミングを待ち構えている感覚ですか?
高木 そうですね。永久就職ではないので戻ってくることもあるだろうし、価値を高めて戻ってきたら、今度は日本で伸びてきた新しい選手と闘えば面白くなりますよ。
――そうなると、また新しい展開が始まりますね。
高木 だから行く分にはいいし、価値が上がって本人にギャランティが入るのはそれはそれでいいと思うし。行ったら、もしかしたら確変が起きてスーパースターになるかもしれないじゃないですか?
――武藤さんのグレート・ムタはそうでした。
高木 だから、人材流出を恐れることは何もないです。人間である以上、やっぱり世界の大舞台で活躍したいという欲は絶対にあるし。
――もちろんですよね。
高木 DDTは、残念ながらワールドマーケットではありません。日本の団体である僕らの試合が海外に配信されてるかっていうと、どこの国にも配信されてないです。でも、WWEは完全にワールドマーケット。「ワールドマーケットで勝負したい」というのは、人間の欲としてしょうがない。それを閉じ込めることはできないから、だったら行きたければ行きゃあいいじゃんって。ただ、DDTを変な辞め方だけはしないでね? と。例えば、その選手の商品をいっぱい作って、その在庫がいっぱい残ってる状態で向こうにポ~ンと行かれたら迷惑がかかるから、最低限、商品の原価を買い取るくらいはしてねとか。で、たしかに選手が抜けてしまったらこっちの団体も大ダメージですけど、そうなってもいいように後進をしっかり育成していれば、絶対にその時に下が伸びてくるんで。
――プロレス界は、その繰り返しですよね。
高木 そう、その繰り返しなんです。それで、また戻ってきたら、それは大きな流れになるかもしれない。僕は、そういう考え方です。

「WWEも、たぶん飯伏幸太を欲しがってる」(高木三四郎)


――ここで、ファンが一番知りたがってる質問をしようと思います。もう、単刀直入に伺います。あの~、飯伏幸太はWWEに行くんですか?
高木 いや、行けないでしょう。
――本当ですか(笑)?
高木 行けないでしょう(笑)。
高木三四郎に遂に質問「飯伏幸太はWWEに行くのか?」

――今や、「行くんだろう」とたかをくくってるファンが大勢いる状況なんですが……。
高木 いや、行けたら大したもんだと思いますねぇ。まず、アイツは寂しがり屋なんで、一人で行動できないんですよ。
――ハハハハハ! いや、でも飯伏選手、アメリカに行ってましたよねえ?
高木 話相手がいれば大丈夫なんです。
鈴木 だから、マイケルさん(中澤マイケル)を連れて行ってたんですか(笑)?
高木 だから、マイケルも行ってた。WWEがマイケルごと雇ったら、飯伏は行くと思います。
――(笑)。
高木 でも、飯伏はたぶん行かないですよ。行けないですよ。WWEもたぶん飯伏は欲しいだろうし、「中澤マイケルとセットで契約」という特殊な条件を提示すれば別かもしれないですけど。WWEは独占か半独占みたいな契約になりますもんね? そうなったとしたら彼は自由を求めるんで、たぶん無いですね。
――飯伏選手はDDTみたいなプロレスもやりたいでしょうし。
高木 そうですね、そうそう。
鈴木 契約で「他の選手も一緒に雇って」っていうのも、なかなか無いだろうし(笑)。
――「遊び相手も一緒に雇っていい」なんて契約は、聞いたことないです(笑)。
高木 ありえないですよ! 聞いたことないです(笑)。それがある以上は、絶対にないです。ただ、今回のCWC、クルーザー級クラシック・トーナメントみたいな形で出ることはあると思います。
――スポットというかゲストというか。
高木 はい。条件さえ合えば。
――ぶっちゃけ、飯伏幸太が高木さんに相談することは今も頻繁にあると思うんですが、WWE参戦を匂わすような相談は来てないですか?
高木 いや、ないですねえ。僕、クルーザー級クラシック・トーナメントについても後から聞いたくらいだったんで。で、「行くの? 長期契約するの?」って聞いたら「いや、どうっすかねえ」ってはぐらかされましたもん。
――そうだったんですね(笑)。「行くんじゃないか?」「熟考してるんじゃないか?」「水面下で話が進んでいるんじゃないか?」と勘繰ってるファンもいて、NXTの客席に飯伏がいる光景を観て「これって予告編じゃん」と受け取るファンもいたもので。
高木 まあ、いるでしょうねえ。でも、無いと思いますよ。
――なるほど。実際、「路上でのプロレスはやって行きたい」という飯伏選手のコメントもありましたもんね。わかりました。

リック・フレアーはヨシヒコと闘いたがっている?


――前田日明さんも飯伏選手のことは絶賛してて、飯伏幸太vsヨシヒコ(空気人形レスラー、正体はダッチワイフ)をYoutubeで観て「やるねぇ」と仰っていたそうです。あと、藤原喜明さんもヨシヒコと試合をしたことがありますよね?(2012年8月18日の日本武道館大会のランブルにて実現)
高木三四郎に遂に質問「飯伏幸太はWWEに行くのか?」
この選手が、ヨシヒコ。「地獄の墓掘り人形」の異名をとる。

先ほどのピストルを使ったストーリーについて怒る先輩もいれば、一方でUの選手は理解を示すという状況があるわけですが。
高木 いや、僕はヨシヒコと試合をしてどうだこうだというのはどうでもよくて、あの試合を観た人が「これ、どうなるの?」と思うことが重要なんです。ドラマを観て「なんだよ、こんなの筋書きじゃねえかよ」って怒る人は誰もいないじゃないですか? 感動できるもの、共感できるもの、素晴らしいものをエンターテイメントとして昇華しちゃえば、そんなことはどうでもよくなるんですよ。僕はDDTをそこまで持っていきたい。
――たぶん業界内で、ヨシヒコ戦について「よくこういう事をやったね」とアイデア自体を評価する声もあったと思うんですが、そういうのはどうでもよくて「楽しんでもらいたい」「感動してもらいたい」ということですか?
高木 そうです、そうです、そういう事です。まあ、あれに対してどうこう言う人はまずいないですからね。あの試合に関しては、あるベテランレスラーが「あれは、俺はできない」って言ってましたし。
――あれは、できないですよねぇ……! 猪木さんの「ほうき相手でも試合を成立させられる」という評価を具現化した試合ですよね。そもそも、あれは何がどうなって決まったんですか?
高木 あれは、飯伏が「後楽園ホールのメインで、次の挑戦者はヨシヒコに指名したい」って。
鈴木 考えられないですよ(笑)。
高木 さすがの僕もね、3時間くらい悩みましたよ。
――ブハハハハ、3時間!
高木 悩んだ末に、「まあ、やろうか」って。でも、あれはWWEも絶対にやらないし。で、TAJIRIさんが僕に言ってくれた話ですごい興味深かったのは、WWEのバックステージでヨシヒコと猪熊裕介の試合をみんなで観ていたらしいんです。で、その時にたまたまリック・フレアーが通ったんですって。そして、フレアーが5分くらいジーっと観てたらしい。で、一言、「これがプロレスだ」と言って去って行ったって。
――うおおーーーーーーっ! 感動しちゃいますねえ!!!
高木 それ聞いた時に、俺はガッツポーズですね(笑)。
――うわぁ、スゲエー。フレアーもやってみたいと思ったんじゃないですかね!?
高木 じゃないですかね? プロレスラーで、自信のある選手ならば、みんな「やりたい」って思うと思いますよ。

(PART4へつづく)


(寺西ジャジューカ)

東京・両国国技館「両国ピーターパン2016~世界でいちばん熱い夏~」
■日時
2016年8月28日(日)
開場12:30 開始14:00
■会場
東京・両国国技館
■チケット販売場所
チケットぴあ、ローソンチケット、e+、DDT公式チケットフォームほか

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