女性専用車両へ乗り込む「男性差別反対派」こそ男性を侮辱している
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女性専用車両へ意図的に乗り込む男性の集団が、乗客や駅員と度々トラブルを起こすことが、大きな問題となっています。2018年2月16日には、千代田線がそのトラブルの影響によって、遅延が起こる事態にまで発展したことが大きなニュースになりました。


女性専用車両はもう論じるに値しない問題


彼らは「女性専用車両は男性差別である」「女性専用車両は男性も利用できるはずなのに、排除を受けている」と主張しているわけですが、その是非についてはもはやあれこれ論じる余地はありません。既に違法性を争った裁判で彼らの主張は退けられており、痴漢対策のために致し方ない措置として決着がついています。

「chikan 」が世界共通言語化し、海外から日本に渡航する際にも注意喚起されるほど、日本は世界でも類を見ないほどの痴漢大国です。確かに、女性専用車両は理想の形とは思えないですが、日本の電車は「女性にとって世界で最も治安の悪い車内空間」になっている現状を鑑みれば、導入せざるを得ないのは当然です。判決は何ら間違っている判断はしていないと言えるでしょう。

それでもなお女性専用車両に反対するのであれば、結果的に痴漢を利するような主張をしているわけですから、以前の記事『自分を「普通の男性」だと誤解している「痴漢の補完勢力」たち』でも指摘したように、「痴漢の補完勢力」です。今回のケースは「痴漢の補完勢力」による社会全体に嫌がらせだと思います。


鉄道会社は乗り込み集団に賠償請求をすべき


ところが、鉄道会社の意思決定層の反応は非常に鈍い。集団は「1000回以上乗っているが、遅延は数回しかない」と自ら証言していますが、それだけ頻発しているにもかかわらず、より強いルールを敷くことなく、すべて現場任せで放置している状態です。これでは駅員さんたちもたまったものではありません。

以前、認知症患者が徘徊中に列車にはねられ死亡した事故について、列車遅延が起きたことから、JR東海が遺族に対して賠償を請求したことがありました(2016年3月1日の最高裁判決によってJR東海の敗訴確定)。

今回の件は東京メトロですが、鉄道会社が遺族に対して賠償請求をして、意図的な嫌がらせをする人々に賠償請求をしないのは明らかに歪んだ判断でしょう。列車を利用する顧客の利益を守る気があるのであれば、彼らのような勢力にこそしっかりと賠償請求をするべきです。

「痴漢の補完勢力」になり下がるテレビ人たち


また、テレビのコメンテーターたちも、まるで「痴漢の補完勢力」になり下がったような発言をしています。

2018年2月27日放送の「モーニングショー」(テレビ朝日系)では、今回の女性専用車両への乗り込みを扱いましたが、メインキャスターの羽鳥慎一氏は「乗り込む男の人たちの言うこともわからなくもない」「方法が違うのかなと思う」と発言し、コメンテーターの青木理氏も「男性差別だって理屈としてはある」と発言。
あくまで方法論の問題であって、彼らの主張していること自体は正しいと擁護したと捉えられるような言い方です。

これを受けて、一時期Twitterで「#モーニングショー」がトレンド入りするほど、抗議の声が殺到しましたが、当然のことでしょう。コメンテーターがテレビの世界という特殊な男社会で生き続けているために、ジェンダーに関する社会問題において感覚が正常でなくなるケースは少なくないはずですが、まさに今回もこれに該当するケースだと思います。

辛うじて番組アシスタントの宇賀なつみアナウンサーが女性専用車両の必要性を訴えていましたが、「専門にしているわけでもない社会的地位のあるおじさんたちが多数派で、そこに若い女性を添える」という役割分業のままジェンダー関連のニュースを扱うと、間違ったことを言うリスクが高まるのは自明の理です。

男性への運賃割引というトンデモ提案


さらに、インターネット上では、「男性は女性専用車両に乗れない不利益を被っているのだから、運賃を割引するべきだ」と主張する人々まで現れました。

「女性専用車両に乗りたい=痴漢に遭いたくない」という女性の要求は、プレミアムでも何でもないのに、女性に対して男性よりも高い料金をふっかけようという発想であり、決して許容できるレベルではありません。

むしろ現状は痴漢に遭いにくい男性のほうがより快適なサービスを受けられていることを分かっているのでしょうか? それなのに「自分たちを割引しろ」と主張するのは、あまりに自己中心的過ぎるでしょう。


良識ある男性は男性性への侮辱に怒るべきだ


男性差別を声高に叫ぶ「男性差別反対派」は、男性という集団に対する過剰な自己同一化が起こっていると考えられるため、主語を「男性」へと大きくして持論の正当性を主張しますが、同じ男性として「やめろ」「一緒にするな」「男性という属性を自己正当化に利用するな」と言いたいです。

痴漢被害者の置かれた状況を顧みることなく、たった1両乗れないことに被害妄想をこじらせている人たちは、「男性の声」ではなく、「人間性が歪んでいる人の声」でしょう。「男性ガー!」「男性ガー!」と言って、男性全体の名誉を傷付ける発言を繰り返すのはいい加減やめてもらいたいです。

一方、良識ある男性は、男性性を侮辱し続ける彼らに対して、もっと怒るべきだと思います。自分の性が加害行為への正当化に悪用されているわけですから。

ですが、彼らの暴挙に対して怒る男性は、先のモーニングショーの件でも露呈したように、いまだに少数派。現状は、結局日本人男性の多くが「痴漢の補完勢力」になり下がっているとも言えます。
本当にこのままで良いのでしょうか? 良識ある男性の奮起を期待したいです。

社会はしっかりミソジニーを取り締まるべき


女性専用車両を乗り込む集団は、先日渋谷で街頭演説を試みましたが、事前にネットで知った有志のカウンターから大反対に遭ったため、中止となったようです。でも、残念ながら彼らはこれで懲りることはないでしょう。今度も女性や社会に対して嫌がらせを続けると思われます。

鉄道会社は、賠償請求を行うことや、注意してもやめない人に対して法的措置に出ることを警告すること等、やるべきことはたくさんありますが、国土交通省や国会および地方議会も対応するべき時期に来ていると思います。

列車内の防犯カメラ設置、加害行為の厳罰化、被害者が訴えやすい環境の実現、加害者の適切な治療、痴漢を軽視する誤った文化の一掃等、痴漢対策をより一層進める必要がありますが、それに加えてこの女性専用車両に意図的に乗り込む行為を繰り返し、注意をしてもやめない人々も、刑事罰に処すべきではないでしょうか?
(勝部元気)