【ニューハーフ】『シーメール白書』佐々木順一 編集長
はるな、椿姫の活躍の影にある"ニューハーフ先進国"の現状
はるな愛さんや椿姫彩菜さんの登場で注目を集めているニューハーフ業界ですが、今年上半期で話題になったことといえば、4月に東京のあるニューハーフヘルス店が、就労ビザを持たない韓国人を働かせていたとして摘発されたことです。もちろん違法行為なのですが、その背景には、韓国社会がまだ性同一性障害に対して閉鎖的であるために、彼女たちの行き場所がないという実情があるのです。
ただ、こうして戸籍も身体も女性になることができるようになったために、若くして性転換手術をした人がその事実を隠したまま男性と結婚→子どもができない→調べてみると元は男だった→俺の人生どうしてくれる、といった新たな問題も起こりかねません。
【葬儀】『寺門興隆』矢澤澄道 編集長
『おくりびと』大ヒットの影で葬儀で活躍する納棺師の是非
映画『おくりびと』が米国アカデミー賞を受賞し、日本で大ヒットしたことで話題になった葬儀業界。それは今日の葬儀状況をものの見事に象徴していると思います。ひと口で言えば、そこには肉親の「死」でさえまるごと業者に任せきって、それでなんの疑問も抱かなくなった、いやむしろ、納棺師の丁寧な死に化粧に感動し、何から何まで遺族が望むとおり代行してくれる業者の親切さに、感激する日本人の姿が見えます。
しかし、ほんの数十年前の日本人は身内に死者が出れば、まず家族が遺体をきれいに湯灌し、死に装束をきちんと着せてあげたもの。見ず知らずの他人が遺体に触れるなど想像もできなかったことです。
さらに、葬儀はほとんど自宅ないし菩提寺で行ったものです。その受付や進行や挨拶ごともすべて隣近所の「葬式組」が担い、遺族は遺体に寄り添って極楽浄土をひたすら念じていればよかったのです。そして多くの縁者がちゃんと「香典」を持って焼香に訪れました。一人の死によって縁ある者たちが生かされる、いわば物心共の相互扶助の営みが葬儀であり、そうしたことを中心で支えたのが菩提寺だったのです。葬儀は亡き人が仏となって生まれ変わる儀式でした。
消費者協会によると、現在の葬儀費用の平均は約200万円とのことです。確かにこの額に疑問を感じる向きは多いでしょう。けれども、単に金額だけが葬儀の問題ではないことは明白です。人の貴い死ですら「近所の手をわずらわせて迷惑をかけたくない」と思わせる現代の風潮の原因は何なのか、一度は必ず死なねばならない一人一人の問題として考えたらどうでしょうか。
【薬事】『ドラッグストアレポート』『薬事新聞社』川畑朗編集長
改正薬事法の施行で一般薬の史上秩序が崩壊!?
今年6月の改正薬事法で医薬品のコンビニ販売などが騒がれた薬事業界ですが、改正法施行後に第一類医薬品(副作用等リスクの高いもの)の売り上げ減少が業界で話題となっています。これは第一類の販売が薬剤師のいる店舗でなければできないことなど、規制が強化されたことが大きいのですが、さらに「登録販売者制度」によって一般薬の約95%に当たる第ニ類と第三類販売の他業種参入が活発化の兆しを見せ、規制に守られてきた業界は厳しい市場競争に晒されつつあります。もともと政府は法改正で医療費削減のため、専門の薬剤師を薬局に集中させることで安全性を担保し、2兆円規模とも言われる医療薬を一般薬に切り替えて、皆保険から自己負担にシフトする狙いがあったようです。しかし、現状の販売不振が続くと店舗に薬剤師を置かれなくなったり、売り上げが落ちた製薬企業が第一類の開発意欲を減退させたりする可能性もあります。
また今年は新型インフルエンザの流行があり、その特効薬であるタミフルの副作用が一時期話題になりましたが、業界ではある専門誌のスクープで抗うつ剤SSRIの副作用にも注目が集まりました。服用によって攻撃性が強まるという特殊な副作用が疑われるというもので、昨年、福岡市の公園トイレで起きた児童殺傷事件の被疑者である母親も犯行前にSSRIを服用したことで通常考えられない能力を発揮したのではないか、との報道がありました。
【農業】『農業経営者』昆吉則 編集長
農業はなぜはやらなかった? 農業関係者&政府&企業の思惑
今年、一般誌「BRUTUS」(マガジンハウス)などでも特集を組まれ、若者の農業参入が話題になった農業界。しかし、これまでは誤った情報が数多く流されていたと思います。たとえば、「農家は儲からない」とよくいわれますが、これは決して真実ではありません。確かに197万戸の国内販売農家のうち、約59%は年100万円以下の販売収入しかありません。しかし、彼らのほとんどは親戚に米を贈ることが目的の趣味的な農家です。
それではなぜ、こんなイメージが先行しするのか? それは農協など農業関係者たちが、古い制度を維持し、既得権益を守っているからです。彼らは政府に「貧困農家を守れ!」と宣伝し、多額の補助金を垂れ流してきました。
さらに政府も農協票を期待し、農協の組織維持に役立つ政策を続けてきたわけです。しかも、900万人の農協組合員の約半分は耕作すらしていない准組合員であり、販売額1000万円を超える農家は約1.5%しかいません。だから、事業的農業経営者の声は政策に反映されない。要するに産業としての農業は農業関係者や政府によって潰されてきたわけです。
また農業ブームでおかしな点があるなら、それは企業の農業参入です。今年、イオンが加わりましたが、一般企業が農業生産するというのは世界でもまれ。なぜなら、人件費が高く、採算が合わないからです。おそらく業界的には作物で商売するよりも、食品のざんさから肥料を作って循環させるなど、エコ的な宣伝を狙っているのではないでしょうか? 本来、企業は農地に出資して儲けるべきですが、「農地法」(出資は50%未満まで)の制限があるため、これも難しい。いったんは声高に農業参入しても撤退する企業は少ないのでは......。
(取材・文=Kyopro/「サイゾー」9月号より)
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