右利き、左利きを決めるのは何か? その秘密は脳ではなく、脊椎にあった(ドイツ研究)

利き手が生じる理由は脊椎にあった? /iStock
 世の中には右利きの人と左利きの人がいる。その割合は世界全体でみると、50万年以上前から左利きが約10%、残りが右利きで、矯正しない状態であれば、10人に1人が左利きということになる。


 そもそも人間には2本の手がある。にもかかわらず「利き手」があるというのも不思議な話だ(ごく稀に両利きの人もいるようだが)

 どのようなメカニズムで、どちらかの手が優先して使われるようになったのだろう?脳や神経レベルで生まれつき決まっているものなのか?それとも経験によって使いやすい手の好みができるからなのか?

 『eLife』に掲載された研究では、脳や神経学的な発達とはまったく無関係であると解説している。それによると、意外にも利き腕を決めているのは脊椎なのだそうだ。
【胎児の脊椎で検出された遺伝子活動の非対称性】

 ルール大学ボーフム(ドイツ)をはじめとする研究チームが調査したのは、まだお腹の中にいる妊娠8週から12週の赤ちゃんだ。

 従来の説では、脳の左半球と右半球のどちらの遺伝子活動が活発になるかで利き腕が決まると推定されていた。

 しかし発達する胎児の脊椎で生じる遺伝子の発現を観察したところ、これまで知られていなかった非対称性が見つかったというのだ。


 そうした脊椎での活動は、「運動皮質」という脳の前頭葉の一部で、意図的な筋肉の運動を制御する領域が脊椎とつながるずっと前にすでに始まっている。

 脊椎には手足に電気パルスを送信する役割を担う部分があるが、問題の遺伝子活動はどうもそこを中心に起きているらしく、この活動に生じる非対称性によって右利きになるか、それとも左利きになるかが決まるのだそうだ。

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【非対称性は胎児時代の外部の環境要因に左右される】

 また研究では、この非対称性を作り出す要因も明らかにしている。

 それは、親から受け継ぐ遺伝的な突然変異や特性といったものではなく、お腹の中の赤ちゃんの成長に影響する環境要因であるとのことだ。

 その環境(外部)要因が具体的に何であるかははっきりしないらしいが、それによって発達中の赤ちゃんの中で酵素の作用が変化し、それが遺伝子の発現パターンまでをも変えている可能性があるそうだ。

 その結果として、脊椎内で遺伝子活動の非対称性が生じ、やがてどちらの利き腕になるのかが決定するという。

 
 もしかしたら、右利きが生まれやすい生活環境や左利きが生まれやすい生活環境なんてものもあるのかもしれない。

Epigenetic regulation of lateralized fetal spinal gene expression underlies hemispheric asymmetries | eLife
https://elifesciences.org/articles/22784
References:iflscience

 利き手に関する研究はこれまでもいくつか紹介しており、研究によりその内容は異なっているが、人類が全員同じ利き手になるということだけはなさそうだ。

 左利きが9割で右利きが1割という今と逆転する未来が将来訪れる可能性があるのか?もしくはほぼ全員が両利きになる可能性はあるのか?

 たかが利き手、されど利き手、とても興味深い分野である。

記事全文はこちら:右利き、左利きを決めるのは何か? その秘密は脳ではなく、脊椎にあった(ドイツ研究) http://karapaia.com/archives/52292139.html