
いったいどんなだろう。なんだか淫靡で、ちょっとワクワク。きっと店内では、めくるめく世界が広がっているはずだ…などと、勝手な妄想をふくらませ、コッソリ人目を忍んで入店した。
店内にはくの字型のカウンターがあり、そのまわりにイスが置かれただけの、ガランとしたラーメン屋みたいな雰囲気。しかも…あれえ? カウンターにいるのは、おじさん板前一人だけ。こう見えて、実は女性だったりするのか。どちらかというと、もう1人の注文をとる男性のほうが、なんとか見ればそう見えなくもないけど…とか、頭の中、大パニックになりつつ、怒られるのを覚悟で、「今日は女性の板前さんは? 時間交替なんですか?」と聞いてみた。すると、
「ああ…本当は女の板前さんが欲しいので、いま募集中です。ここはチェーンなんですが、今は別の店のほうで研修中なんですよ」と言う。
なんでも浅草近辺に3店舗あるそうで、「女板前を置きたい」という希望で始めたのだとか。だったら、「女板前(募集中)」とかのコピーにしたほうがいいような気が…。
結局、食べたのは7個500円のにぎり。1皿100円の回転寿司よりは高めだが、ちゃんと職人さんが握ってくれるのだから、確かに激安ではある。味は驚くほど美味しくもなければ、驚くほど不味くもないが、いろいろミステリアスな雰囲気は格別だ。
これからさらに「女板前、ほんとはほしいが見つからない 1ヶ50円」とか「女板前 ずっと探してもう半年 1ヶ50円」とか、続編をポエム看板にしていってくれないだろうか。そしたら、ずっと見守っていきたいのだが。(田幸和歌子)