テロ以降の米消防署を癒すマスコット犬
アメリカでは最近アニマル・セラピーの見地から、職場や学校、病院、老人ホームなどでペットとして動物を飼うところが増えてきた。ストレスを癒してくれるだけでなく、職場の人間関係も潤滑になるのだそうだ。
そういえば、犬を飼っている人はみないい人に見えたりするよね。

ソーホーのラフィエット通りにある消防署では、ディズニー映画「101匹わんちゃん大行進」でお馴染みのダルメシアン犬が、マスコットとして飼われている。名前はトゥエンティちゃん。彼女のいる消防20分署にちなんで名づけられた。

ガテンなお兄ちゃん達に囲まれたトゥエンティちゃんは、さしずめたくさんのナイトにかしづかれたプリンセスのようだが、アメリカの消防署では、昔からダルメシアンをマスコットとして飼うことがよくあるそうだ。その経緯をニューヨーク最大のドッグショーでおなじみの「ウェストミンスター・ケンネル・クラブ」の広報の人に聞いてみた。

「ダルメシアンの起源は定かではありませんが、18世紀頃、旧ユーゴスラビアのダルマチア地方が原産であるとされていたことから、ダルメシアンと名づけられました。活動的で警戒心が強く利発なので、猟犬や牧童犬として飼われていました。19世紀頃から、警察犬や軍用犬としても使われていましたが、最近ではペットとして飼われています」

やはりダルメシアンのあの美しい肢体は、早く走らせるのにぴったりだったようだ。しかもダルメシアンにはもうひとつの特性があった。

「ダルメシアンは、唯一馬を先導して走れる犬といわれています。馬もよくなつくそうです。
もうひとつの原産地と言われている古代エジプトの壁画にも、ダルメシアンらしき犬が馬車の伴走として描かれています」

おおー、そんな大昔からダルメシアンは人間と共に生活していたなんて。時代は大きく下がって、イギリスやフランスでも馬車の警笛の代わりにダルメシアンを走らせ、そしてまだ消防車が馬車だった頃のアメリカでは、信号も交通規則も整備されていない道路で馬を先導させていた。火事の中ダルメシアンが活躍する逸話も多いらしい。そして馬車ではなく自動車社会になった後では、消防署のマスコットとして、消防隊員たち個人によって飼われていたが。

そしてアメリカ同時多発テロ以降マスコット犬たちは、いつも危険と隣り合わせにある消防隊員達のヒーリング・ドックとして見直されてきた。寝食を共にし、家族のようにかわいがられている。

消防隊員の方の話によると、ちょっと甘えん坊のプリンセス、トゥエンティちゃんは、消防車が出動するたびに、置いてけぼりになるのをさみしがるのだそうだ。彼女を悲しませないようにも、くれぐれも火の用心。(チン・ペーぺー)
編集部おすすめ