黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に横浜創英中学校・高等学校 校長の工藤勇一が出演。著書『学校の「当たり前」をやめた。
工藤勇一
黒木)今週のゲストは横浜創英中学校・高等学校校長、工藤勇一さんです。工藤さんがお出しになった、『学校の「当たり前」をやめた。』という本を読ませていただきました。そのなかで「学校は子どもたちが社会のなかでよりよく生きて行けるようにするためにある」と書かれていますが、その辺りをもう少し具体的に教えていただけますか?
工藤)明治維新以降にいまの学校制度ができました。当時の学校教育の目的は、国を栄えさせ、富国強兵という政策のもとでしたから、現在の目的とは違います。いまは「すべての子どもたちがこの社会のなかでよりよく生きて行ける、そういう力をつけさせる」ということが世界の教育の1つの目標になっていると思います。
黒木)生きて行く力。
工藤)実はもう1つあります。それは大げさに言えば、人類が存続できるようにするということ。持続可能な世界をつくるためには、社会全体の幸せが必要なのです。日本はよく「みんな違っていい」と聞こえのいいことを言いますよね。
黒木)はい。
工藤)そのことをいちばんわかっていらっしゃるのが、ヨーロッパのEUの方々だと思います。EUは日本と違って島国ではなく、地続きですから、何千年も戦争をし続けている。気が休まったことがないくらい戦争を続けています。第一次世界大戦や第二次世界大戦、特に第二次世界大戦では科学技術がとてつもなく進歩したので、これ以上科学の進歩が進んだら兵器も含めどうなるのだろうと。
黒木)そうですね。
工藤)EUでは、自分の国に反対する人がたくさん生まれるわけです。でも戦争をしないという最上位のことのためには、「それも対話をして合意しましょう」ということを、国のトップリーダーの人たちは声高に訴えかけ、それに国民が賛成してEUに加盟したのです。これを世界中に広めませんかというのがSDGsです。ずいぶん飛躍してしまったと思いますが、我々が学校で教えなければならないことは、「みんなが幸せになるためにはどういう合意をしたらいいのか」という学びを学校のなかにつくってあげる、これが世界の教育目標になっているのです。
黒木)それがみんなの幸せに、世界の平和につながって行くということですね。

工藤勇一
工藤勇一(くどう・ゆういち)/横浜創英中学・高等学校校長
■1960年・山形県鶴岡市生まれ。
■1984年から山形県で数学の中学教諭を5年務め、東京都台東区の中学校に赴任。
■その後、東京都や目黒区の教育委員会、新宿区教育委員会・教育指導課長などを経て、2014年に千代田区立麹町中学校の校長に就任。宿題・定期テスト・学級担任制など、これまで日本の学校教育で当たり前に行われて来たことを次々と廃止し、生徒が自律的に学習や活動に取り組む学校づくりを実施。
■麹町中学校で校長を6年間務めたのち、内閣官房教育再生実行会議委員や経済産業省「EdTech」委員などの公職も務める。
■2020年4月からは横浜創英中学校・高等学校の校長に就任。