Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1298回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画・ドラマを発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

今回は、3月6日に公開された映画の中から『宣誓』と『しあわせの選択』をご紹介します。

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(C)2025 Kart Entertainment Co.,Ltd.

『宣誓』あの時、自衛隊は何をしていたのか……

2026年3月11日、東日本大震災の発生から15年を迎えます。この15年間、被災地の復興が進む一方で、ここ数年は時間の経過に伴い、震災の記憶や被災地への関心が薄れていく“震災の風化”が懸念される声も上がっています。

映画『宣誓』は、東日本大震災で避難を余儀なくされた人々が暮らす避難所を舞台に描いた、喪失と再生の物語。リアルを徹底的に追求した作風で定評がある柿崎ゆうじ監督が、被災地支援の際に見聞きしたエピソードを元に、知られざる“あの時”の様子をスクリーンに映し出します。

『宣誓』東日本大震災から15年、メディアが語らなかった真実

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『宣誓』のあらすじ

東日本大震災の被災地に派遣された自衛隊員、春日純平三等陸尉。彼は自身も津波で妻と幼い娘を亡くしていたが、それを隠して現地での任務にあたっていた。

避難所では、様々な事情を抱えた人たちが不便を感じながら生活している。その中で、春日はひとりの少年と出会う。名前は、吉村和樹。彼もまた家族を亡くし、失意の中で心を閉ざしていた。

立場も年齢も違う2人だったが、失ったものの大きさは同じ。彼らは自然と寄り添いあうようになる。

遠巻きに自衛隊の活動を見守っていた和樹だったが、やがて心の内に、ある変化が表れて……。

『宣誓』東日本大震災から15年、メディアが語らなかった真実

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『宣誓』のみどころ

主演を務めたのは、映画・ドラマ・舞台で活躍する前川泰之。喪失感に苛まれながらも私情を押し殺して任務に邁進する春日の心情を、静かに、しかしエモーショナルに体現しており、真に迫るものがあります。

そんな春日三等陸尉の右腕的な存在である佐藤真奈美陸曹長役の竹島由夏をはじめ、黄川田将也、出合正幸など、柿崎ゆうじ監督作品に欠かせない俳優たちが集結。羽場裕一辰巳琢郎大地康雄といったベテラン勢がしっかりと脇を固めているのも見逃せません。

また本作は、陸上自衛隊の全面協力のもと、撮影を敢行。数十名の現役自衛官が撮影に参加し、“本物”が持つリアリティが随所から伝わってくる作品となっています。

『宣誓』東日本大震災から15年、メディアが語らなかった真実

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東日本大震災発生当時、災害支援をおこなった自衛隊の奮闘は日本国内だけでなく、諸外国からも注目を集めました。「日本人の強靭な心を見た」と称賛される声がメディアを通じて流れたことを記憶していますが、ともあれ自衛官もひとりの人間。本作からは、危険を顧みずに責務を全うする者たちの矜持と、その反面、一個人が内包する弱さや葛藤が伝わってきて、震災をテーマに掲げた映画の中でも異彩を放つものとなっています。

それと同時に、15年経った今だからこそ考えたい「本当の復興とは何か」ということに心を傾ける人も多いことでしょう。あなたは「あの時」、何をしていましたか? そんなことも頭の片隅に置きながら、映画館のシートに身を委ねてみて下さい。

『宣誓』東日本大震災から15年、メディアが語らなかった真実

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『しあわせの選択』常軌を逸した、就活サバイバル・エンタテインメント

製紙会社で25年間、堅実に仕事をしてきたユ・マンス。郊外に邸宅を持ち、妻と2人の子ども、2匹の犬とともに理想的な生活を送っていた。

ところが突然、会社から解雇通告を受け、そのバラ色の人生は一瞬のうちに崩壊する。再就職もうまくいかず追い詰められたマンスだったが、ある衝撃的なアイデアが浮かんできて……。

『パラサイト 半地下の家族』で米アカデミー賞作品賞に輝いた、パク・チャヌク監督最新作。韓国を代表するスター俳優イ・ビョンホンとソン・イェジンが初共演を果たした『しあわせな選択』。中高年世代のリストラをブラックユーモアたっぷりに描きながら、ファミリームービー、コメディ、はたまたスリラーへと変貌を遂げていくストーリー展開は見応えたっぷり。

果たして、彼らの“選択”は“しあわせ”へとつながるか。その顛末は、スクリーンでご覧あれ!

『宣誓』東日本大震災から15年、メディアが語らなかった真実

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<作品情報>
宣誓
2026年3月6日(金)からシネマート新宿ほか全国公開

出演:
前川泰之 竹島由夏
黄川田雅哉 出合正幸 水橋研二 伊藤つかさ 宮本真希 半井小絵 齋藤優聖
羽場裕一 内田朝陽 辰巳琢郎 徳重聡 大地康雄

脚本・監督:柿崎ゆうじ
プロデューサー:柿崎ゆうじ 前田茂司 井上和彦
ラインプロデューサー:善田真也
キャスティングプロデューサー:山口正志
音楽:西村真吾
撮影:松本貴之
照明:佐藤俊介
録音:小清水建治
編集:神谷朗
音響効果:柴崎憲治
自衛隊監修:橋口憲一
助監督:松本壇
製作協力:アカデミーエンターテイメント ビーテックインターナショナル
協力:防衛省
制作プロダクション:楽映舎
企画・製作:カートエンターテイメント
配給:NAKACHIKA PICTURES
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『宣誓』東日本大震災から15年、メディアが語らなかった真実

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<作品情報>
しあわせな選択
2026年3月6日(金)からTOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開

出演:イ・ビョンホン ソン・イェジン パク・ヒスン イ・ソンミン  ヨム・ヘラン チャ・スンウォン
監督:パク・チャヌク
原作:ドナルド・E・ウェストレイク著『斧』(文春文庫)
日本語字幕:根本理恵
英題:NO OTHER CHOICE
提供:木下グループ
配給:キノフィルムズ
(C)2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED

連載情報

『宣誓』東日本大震災から15年、メディアが語らなかった真実

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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