『ジュゴンの帰る海』(ハモニカブックス)著者:浦島 悦子,なかち しずかAmazon |honto |その他の書店
「ザン(ジュゴン)は神さまのおつかいだよ。大切に仲よくすれば、私たちを守ってくれる」。
沖縄生まれの女の子マカトにおばぁが教えてくれます。両親はパラオに出稼ぎに行き、マカトは漁師のおじぃとおばぁに育てられているのです。おじぃの舟から親子のザンを見て羨ましく思いながら。そのうち戦争が始まり、父さんは兵隊に行き、母さんの乗った船は沈められます。アメリカ軍が上陸し、山にこもった人々が次々と死にます。海に落とされた爆弾でザンも死にます。でもマカトは夜の海で、大きくなった子どものザンに出会えたのです。

敗戦後、村人たちは助け合って暮らしを取りもどし、マカトも結婚します。戦争は終わったけれど、村の海を埋め立てて米軍基地がつくられています。ザンの絶滅を心配しているところへ、あのザンが姿を見せます。「ザンは神さまのおつかいだよ。大切に仲よくすれば、私たちを守ってくれる」。
おばぁになったマカトが孫たちにこう語るのです。

サンゴ礁にジュゴンが泳ぐ海は私たちを守る存在なのに、なぜまたもそれを壊すのか。夏休みの子どもと考えたいことです。

【書き手】
中村 桂子
1936年東京生れ。JT生命誌研究館館長。生命誌という新しい知を提唱。東京大学理学部、同大学院生物化学博士課程修了。

【初出メディア】
毎日新聞 2021年8月7日

【書誌情報】
ジュゴンの帰る海著者:浦島 悦子,なかち しずか
出版社:ハモニカブックス
装丁:単行本(40ページ)
発売日:2021-07-16
ISBN-10:4907349203
ISBN-13:978-4907349202
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