『短歌を楽しむ基礎知識』(KADOKAWA)著者:上野 誠Amazon |
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その他の書店短歌が空前のブームになっている。その原因の一つに情報技術の進歩が挙げられる。
短歌といえば、かつては師を探し、歌詠みのコツを身に着け芸を磨くのが王道であった。近年、ネット空間は作品発信のハードルを一気に低くした。もはや上手下手を気にすることはない。歌を詠みたくなれば、誰でも三十一文字にすることがでる。不特定多数向けに発信された短歌は見知らぬ者に読まれ、あわよくばコメントや感想が返ってくることもある。顔が見えないゆえの気軽さもあって、技巧云々よりも、やさしい言葉で率直な感情表出に関心が向けられている。
このように、ひと昔前に比べて短歌をめぐる状況は大きく変容した。「伝統」にばかり目を向けるのではなく、現在の情報を伝えようとしたところに本書の斬新さがある。
ネット空間の事情はいうまでもなく、新聞や雑誌に投稿された短歌の変化、選歌の舞台裏、教科書に採用された短歌、結社の歩みと現状、歌会の進め方、歌集の出版など、およそ現代の短歌をめぐるあらゆる場面について詳細な紹介が行われている。短歌のことに興味がなくても面白く読める一冊だ。
【書き手】
張 競
1953年、中国上海生まれ。明治大学国際日本学部教授。
上海の華東師範大学を卒業、同大学助手を経て、日本留学。東京大学大学院総合文化研究科比較文化博士課程修了。國學院大学助教授、明治大学法学部教授、ハーバード大学客員研究員などを経て現職。著書は『恋の中国文明史』(ちくま学芸文庫/第45回読売文学賞)、『近代中国と「恋愛」の発見』(岩波書店/一九九五年度サントリー学芸賞)、『中華料理の文化史』(ちくま新書)、『美女とは何か 日中美人の文化史』(角川ソフィア文庫)、『中国人の胃袋』(バジリコ)、『「情」の文化史 中国人のメンタリティー』(角川選書)、『海を越える日本文学』(ちくまプリマー新書)、『張競の日本文学診断』(五柳書院、2013)、『夢想と身体の人間博物誌: 綺想と現実の東洋』(青土社、2014)『詩文往還 戦後作家の中国体験』(日本経済新聞出版社、2014)、『時代の憂鬱 魂の幸福-文化批評というまなざし』(明石書店、2015)など多数。
【初出メディア】
毎日新聞 2024年9月7日
【書誌情報】
短歌を楽しむ基礎知識著者:上野 誠
出版社:KADOKAWA
装丁:単行本(282ページ)
発売日:2024-05-29
ISBN-10:4047037257
ISBN-13:978-4047037250