勇気をあたえられる書物だ。生きて、仕事を続ける勇気。
助監督時代、子供たちが寒い海に入る映画を撮った。子供に温かいうどんを食わせてやりたい。だが冷えたら逆効果だ。だから出前の注文のタイミングを計って待機した。そんな心くばりが次第にスタッフや役者の信頼を得る。それが映画作りの原動力だという。
第一作『どついたるねん』でボクサーの赤井英和に汗が必要になった。何百人ものエキストラを待たせて赤井に腕立て伏せをさせた。そうして出た本物の汗があの映画の迫力を生んだ。監督も役者もいい根性だ。
代表作『顔』では主役・藤山直美の暗さに注目した。
【書き手】
中条 省平
学習院大学文学部教授。1981年学習院大学フランス文学科卒業。フランス政府給費留学生として、パリ大学に学ぶ。1987年パリ大学文学博士号取得。1988年東京大学大学院フランス文学専攻博士課程単位取得修了。1988年学習院大学フランス文学科専任講師着任。現在学習院大学フランス語圏文化学科教授。主な著書、『反‐近代文学史』『文章読本』(以上、中公文庫)『小説の解剖学』『小説家になる!』『クリント・イーストウッド』(以上、ちくま文庫)、『フランス映画史の誘惑』(集英社新書)ほか多数。翻訳:ジュネ『花のノートルダム』、ラディゲ『肉体の悪魔』、バタイユ『マダム・エドワルダ目玉の話』(以上、光文社古典新訳文庫)など。
【初出メディア】
朝日新聞 2005年10月9日
【書誌情報】
孤立、無援著者:阪本 順治
出版社:ぴあ
装丁:単行本(239ページ)
発売日:2005-08-01
ISBN-10:4835615573
ISBN-13:978-4835615578