この新訳の特徴は、(1)韻文劇であることを重視して、原文のリズム(韻律)とライム(押韻)を日本語で再現している。たとえば第一幕第二場の終わり、ハムレットの台詞、「悪事は必ず露見する」と「天知る、地知る、人は知る」の脚韻のように。
『ハムレット』の翻訳といえば、注目はTo be,or not to beをどう訳すか。訳者あとがきには、1874年チャールズ・ワーグマン(疑問符付き)の「アリマス、アリマセン、アレワナンデスカ」から2020年の西ヶ廣渉の「このまま生きるか、それとも死ぬか、それが疑問だ」まで、50もの訳例が並べられている。河合は「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」とした。
本文を通読後、本文下の詳細な脚注や訳者あとがき、野村の後口上を読むと、面白さがさらに深まる。さあ、声に出して読もう。
【書き手】
永江 朗
フリーライター。1958(昭和33)年、北海道生れ。法政大学文学部哲学科卒業。
【初出メディア】
毎日新聞 2024年11月2日
【書誌情報】
新訳 ハムレット 増補改訂版著者:シェイクスピア
翻訳:河合 祥一郎
出版社:KADOKAWA
装丁:文庫(256ページ)
発売日:2024-09-24
ISBN-10:4041149924
ISBN-13:978-4041149928