『新訳 ハムレット 増補改訂版』(KADOKAWA)著者:シェイクスピアAmazon |honto |その他の書店
この新訳の特徴は、(1)韻文劇であることを重視して、原文のリズム(韻律)とライム(押韻)を日本語で再現している。たとえば第一幕第二場の終わり、ハムレットの台詞、「悪事は必ず露見する」と「天知る、地知る、人は知る」の脚韻のように。
脚韻箇所は記号で示される。(2)野村萬斎のプロデュース。劇場の芸術監督として、俳優として、演出家として、そして狂言師として、野村が河合に新訳および改訂を依頼し、訳文にも意見を反映させている。つまり、演じること、声に出して読む(あるいは聴く)ことを前提にしている。

『ハムレット』の翻訳といえば、注目はTo be,or not to beをどう訳すか。訳者あとがきには、1874年チャールズ・ワーグマン(疑問符付き)の「アリマス、アリマセン、アレワナンデスカ」から2020年の西ヶ廣渉の「このまま生きるか、それとも死ぬか、それが疑問だ」まで、50もの訳例が並べられている。河合は「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」とした。

本文を通読後、本文下の詳細な脚注や訳者あとがき、野村の後口上を読むと、面白さがさらに深まる。さあ、声に出して読もう。

【書き手】
永江 朗
フリーライター。1958(昭和33)年、北海道生れ。法政大学文学部哲学科卒業。
西武百貨店系洋書店勤務の後、『宝島』『別冊宝島』の編集に携わる。1993(平成5)年頃よりライター業に専念。「哲学からアダルトビデオまで」を標榜し、コラム、書評、インタビューなど幅広い分野で活躍中。著書に『そうだ、京都に住もう。』『「本が売れない」というけれど』『茶室がほしい。』『いい家は「細部」で決まる』(共著)などがある。

【初出メディア】
毎日新聞 2024年11月2日

【書誌情報】
新訳 ハムレット 増補改訂版著者:シェイクスピア
翻訳:河合 祥一郎
出版社:KADOKAWA
装丁:文庫(256ページ)
発売日:2024-09-24
ISBN-10:4041149924
ISBN-13:978-4041149928
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