『昭和の名騎手』(三賢社)著者:江面 弘也Amazon |honto |その他の書店
素人目にも分かるが、昭和の競馬のレベルは低く、騎乗技術もスマートさも劣っていた。だが、昭和の騎手たちは個性が強く、レースにはスリルがあり、驚きがあった。
1976年春の天皇賞を12番人気で逃げ切ったエリモジョージには「天才」福永洋一が騎乗して仰天させた。同期には悲願のダービー制覇でファンを泣かせた柴田政人や無敗の三冠馬シンボリルドルフと「馬優先主義」で知られる名手・岡部幸雄らがおり、「花の十五期生」として親しまれた。

彼らの師となる世代には「ミスター競馬」野平祐二がいた。競馬後進国でありながら、いち早く海外競馬に目を向け、愛馬スピードシンボリで欧米の大レースに挑戦した。

戦後にあって、空前の競馬ブームをおこしたのは地方出身の怪物ハイセイコーの人気だった。競馬を知らない老若男女をも巻きこみ、増沢末夫騎手が歌った「さらばハイセイコー」は45万枚の大ヒットになった。冠名「サクラ」の馬にピンクの勝負服が似合う小島太は、「酒とタバコと夜遊びは絶対やらない」と誓って騎手になったが全部守れなかったと苦笑する。でも、競馬への純真さは人一倍だったという。

【書き手】
本村 凌二
東京大学名誉教授。博士(文学)。1947年、熊本県生まれ。1973年一橋大学社会学部卒業、1980年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。
東京大学教養学部教授、同大学院総合文化研究科教授を経て、2014年4月~2018年3月まで早稲田大学国際教養学部特任教授。専門は古代ローマ史。『薄闇のローマ世界』でサントリー学芸賞、『馬の世界史』でJRA賞馬事文化賞、一連の業績にて地中海学会賞を受賞。著作に『多神教と一神教』『愛欲のローマ史』『はじめて読む人のローマ史1200年』『ローマ帝国 人物列伝』『競馬の世界史』『教養としての「世界史」の読み方』『英語で読む高校世界史』『裕次郎』『教養としての「ローマ史」の読み方』など多数。

【初出メディア】
毎日新聞 2020年7月4日

【書誌情報】
昭和の名騎手著者:江面 弘也
出版社:三賢社
装丁:単行本(ソフトカバー)(264ページ)
発売日:2020-04-27
ISBN-10:4908655162
ISBN-13:978-4908655166
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