読みにくい文章を書かないための実用書である。悪文の実例がたくさん出てくる。
悪文にはいくつかのパターンがある。たとえば、主格と述語の関係がわかりにくい文章。あるいは、語の修飾関係がわかりにくい文章。悪文を防ぐには、文章をできるだけ短くして、語と語の関係に注意を払う。語の選択も重要だ。法律の条文や機械の取扱説明書、クレジットカードの規約文などを書く人には、ぜひ本書を熟読していただきたい。きわめて実用的な本だ。
さて、若いころのぼくなら、「なるほどなあ」と感心し、さっそく実践しようと思っただろう。でも、現在のぼくは、悪文の実例をひとつひとつ読みながら「これはこれで、味があるなあ」と感じる。
【書き手】
永江 朗
フリーライター。1958(昭和33)年、北海道生れ。法政大学文学部哲学科卒業。西武百貨店系洋書店勤務の後、『宝島』『別冊宝島』の編集に携わる。1993(平成5)年頃よりライター業に専念。「哲学からアダルトビデオまで」を標榜し、コラム、書評、インタビューなど幅広い分野で活躍中。著書に『そうだ、京都に住もう。』『「本が売れない」というけれど』『茶室がほしい。』『いい家は「細部」で決まる』(共著)などがある。
【初出メディア】
毎日新聞 2024年12月7日
【書誌情報】
悪文の構造 ――機能的な文章とは著者:千早 耿一郎
出版社:筑摩書房
装丁:文庫(304ページ)
発売日:2024-10-11
ISBN-10:4480512632
ISBN-13:978-4480512635