著者は気鋭の宇宙論学者(コスモロジスト)。なぜ宇宙はこんなふうか、銀河はどうできたか、コンピュータでシミュレーションして研究。
最初は天気予報。大気を箱に区切ってデータを貼り付け、ぐるぐる計算すると明日の天気がわかる。
同じことを宇宙でやってみる。用意する箱は二百億個、データは百兆ビットだ。それを計算して観測結果と照合する。銀河の渦巻きがばらけないのは中心にブラックホールがあるからだとか、銀河の集まる場所が偏っているのは星間ガスに濃淡があるせいだとか、わかってくる。
最新成果の紹介に加え、大勢の学者が宇宙の常識に挑戦してきた苦闘のあとを、歴史物語のように追体験できるのも本書の醍醐味である。
宇宙の謎はまだ多い。計算によると、目に視える星よりダークマターやダークエネルギーのほうがずっと量が多い。でもその正体は不明だ。重力の理論も未完成だし、ブラックホールの特異点の扱いもやっかいである。
【書き手】
橋爪 大三郎
社会学者。1948年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。執筆活動を経て、1989年より東工大に勤務。現在、東京工業大学名誉教授。著書に『仏教の言説戦略』(勁草書房)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)、『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『社会の不思議』(朝日出版社)など多数。近著に『裁判員の教科書』(ミネルヴァ書房)、『はじめての言語ゲーム』(講談社)がある。
【初出メディア】
毎日新聞 2024年11月30日
【書誌情報】
THE UNIVERSE IN A BOX 箱の中の宇宙 あたらしい宇宙138億年の歴史著者:アンドリュー・ポンチェン
翻訳:竹内 薫
出版社:ダイヤモンド社
装丁:単行本(416ページ)
発売日:2024-07-17
ISBN-10:4478112487
ISBN-13:978-4478112489