ミャンマーで軍事クーデターが発生してから4年近くになる。
本書はクーデターの背景や、軍の暴虐、そして抵抗を続ける人びとを描いた大判のドキュメンタリー漫画。脚本はミャンマー情勢に詳しいフランス人が、作画は香港国家安全維持法の成立を受けて台湾に移住した香港出身者が、翻訳はミャンマー出身の京都精華大学特任准教授が担当している。迫力のある絵と簡潔な文章で、ミャンマーの現在がリアルに伝わってくる。
驚いたことがひとつ。ミャンマーでは民主派のアウンサンスーチー政権下でも少数民族ロヒンギャへの迫害が続いていた。だが、クーデターと弾圧の中、一部のビルマ民族は考えを変えたという。あるビルマ民族青年は「自分が人種差別をしていることに気づいたんだ」と語る。
残念ながら、日本をはじめ国際社会の関心は、時が経つにつれて低くなっている。だが、忘れてはいけない、地獄のような圧政は現在進行形であることを。ミャンマーの人びとのために何ができるかを考えたい。
【書き手】
永江 朗
フリーライター。
【初出メディア】
毎日新聞 2025年1月11日
【書誌情報】
2月1日早朝、ミャンマー最後の戦争が始まった。著者:フレデリック・ドゥボミ(脚本)、ラウ・クォンシン(作画)
翻訳:ナンミャケーカイン
出版社:寿郎社
装丁:大型本(116ページ)
発売日:2024-10-17
ISBN-10:4909281630
ISBN-13:978-4909281630