◇<1>『パンテオン 新たな古代ローマ宗教史』イェルク・リュプケ著(東京大学出版会)
◇<2>『ジョルジュ・サンドセレクション 別巻』持田明子、大野一道編(藤原書店)
◇<3>『ヨーロッパ史 拡大と統合の力学』大月康弘著(岩波書店)
<1>注目は「生きられた宗教」というテーマ。エリートや皇帝ではなく、ローマ市民・庶民が生活経験する宗教とはどうであったのか。
<2>19世紀フランスの作家。おびただしい書簡のために、その交友関係は華々しいばかりだ。なによりも愛の交流であり、「束縛されない愛」が大切であった。ドストエフスキーに愛読され、プルースト文学の始まりにもなったという。
<3>狭義のヨーロッパは西欧として理解されるが、著者は東欧にあったビザンツ社会の研究者。西欧近代社会への新たな視角があざやかになる。福田徳三、三浦新七、上原専禄、増田四郎にさかのぼる一橋学派のマクロ史学の伝統が目に浮かぶ。
『パンテオン: 新たな古代ローマ宗教史』(東京大学出版会)著者:イェルク・リュプケAmazon |honto |その他の書店


【書き手】
本村 凌二
東京大学名誉教授。博士(文学)。1947年、熊本県生まれ。
【初出メディア】
毎日新聞 2024年12月21日