◇<1>デイビッド・モントゴメリー、アン・ビクレー著『土と脂 微生物が回すフードシステム』(築地書館)
◇<2>方波見康雄著『医療とは何か 音・科学そして他者性』(藤原書店)
◇<3>大野一道著『<決定版>ミシュレ入門 愛/宗教/歴史』(藤原書店)
生きものとしての人間を大切にしない社会へと更に歩を進めた一年だった。まだ遅くない。
<1>土壌、生きもの、人間の関わりを知る科学を通して健康に生きるための食、更には農業のありようを探り、生きた土の重要性に気づく。二十一世紀の農業とそれに基づく暮らしを示す。
<2>町医者を自負する97歳の著者は、医療とは病を患う人のいのちの声を聞くことだという。病への不安と恐れ、家族への責任などに悩む人間の声だ。まさに生きる存在としての人間を見ている。
<3>「ルネサンス」を、自然な生き方をしていた時代への回帰としたミシュレ。洋の東西を問わず、万物と人間とが生命体として一つという考えが基本であることを示す。彼の目は、子ども、女性、若者に向く。
『土と脂: 微生物が回すフードシステム』(築地書館)著者:デイビッド・モントゴメリー,アン・ビクレーAmazon |honto |その他の書店


【書き手】
中村 桂子
1936年東京生れ。JT生命誌研究館館長。生命誌という新しい知を提唱。
【初出メディア】
毎日新聞 2024年12月14日