東急目黒線を中心に活躍している3000系はデビューから20年以上経過。外観および内装のリニューアルを行うこととなり、このほど最初の編成がお披露目された。


東急のこれまでの車両とは異なり、東急らしくない斬新な外観の車両をご紹介しよう。

■3000系が走る路線
3000系は、東急の旧・目蒲線(目黒駅~蒲田駅)が運転経路を変更し、目黒線(目黒駅~田園調布駅~多摩川駅~日吉駅)および東急多摩川線(多摩川駅~蒲田駅)に分離されたのに合わせ、2000年からの地下鉄との直通運転用として1999年に製造された。

以後、目黒線を中心に、乗り入れ先の東京メトロ南北線・埼玉高速鉄道、都営三田線、2023年からは東急新横浜線とその先の相鉄線へと運用範囲を広げている。

しかし、デビュー後、20年が経過したため、リニューアルを行うこととした。

■お披露目のセレモニー
外観のみならず車内のインテリアも更新。ただし機器類の変更は行っていない。3000系は8両編成が13本あり、その全ての車両をリニューアルする予定だ。

このほど最初の1編成のリニューアルが完成し、10月2日からの運転開始を前に、元住吉検車区で報道陣にお披露目された。

まずは、車庫内でお披露目のセレモニー。これまでの塗装の車両が印刷された幕が下ろされ新塗装のリニューアル車両が目の前に登場するという演出のもと公開された。

この外観デザインは東急の社内で公募された中から選ばれたものだ。考案した社員である嵯峨野正人さんに表彰状が贈呈され、社員は感想などのコメントを発表した。


■3000系リニューアル車両の外観
その後、リニューアル車両は元住吉検車区内の別の場所(屋外)に移動。従来塗装の3000系と並んで留置され、撮影会が行われた。

東急の電車といえば、長らく銀色の車体に赤のラインというイメージがあったので、前面の窓下が水色に塗られた車両は、東急らしくない雰囲気だ。

もっとも、水色は目黒線のラインカラーなので、奇抜な配色というわけではない。

水色は側面では運転台ドア辺りで車体上に移り、ドアや窓上にラインとして延びている。近年はホームドア設置のため、窓下にラインを配置しても目に留まらない。そのため、新型車両のラインはみな、このデザインだ。

■車内は2020系を踏襲
車内に入ると、東急田園都市線を走る2020系など最近の車両のものを踏襲する床の板張り風デザインが目に留まる。温かみを帯びた寛げる雰囲気ということで好評のようだ。それにマッチする緑の濃淡のシートも落ち着く。

これまで、車椅子スペースは8両編成中2カ所だったが、リニューアル車両は各車両に最低1カ所は設置されている。同じ路線を走る他形式の車両と合わせるため車椅子スペースは2号車と7号車のみだが、そのほかの車両にはフリースペースが最低1カ所は増設された。


乗客への案内のため名称は異なるものの実質的には同じもので、車椅子やベビーカー置き場として重宝するであろう。また、これまで手すりは1段のみだったが、2段取り付けられ、使い勝手がよくなっている。

今後、リニューアル車両は少しずつ増え、5年ほどかけて全13編成が更新される見込みだ。

取材協力=東急電鉄この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
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