■代理人カードとは?
代理人カードとは、口座名義人本人に代わって、家族などがATMで預金の引き出しや振り込みなどの取引を行えるキャッシュカードです。金融機関によっては「家族カード」と呼ばれることもあります。
本人が高齢になり、外出しづらいときや、日常の資金管理を家族が手伝いたいときに便利な仕組みです。
▼代理人カードの申し込み方法代理人カードは、多くの銀行や信用金庫で取り扱いがあります。ただし、ネット銀行では取り扱っていないことが多く、例えば楽天銀行や住信SBIネット銀行では対応していません。
申し込みには、金融機関ごとの条件や必要書類があります。以下に主なポイントをまとめます。
▼代理人になれる人の例(銀行によって異なります)・三菱UFJ銀行:口座名義人と生計を一にする親族1名(原則成人、16歳以上も可)
・みずほ銀行:配偶者や2親等以内の親族、または同居している成年の親族など
・イオン銀行:原則2親等以内の推定相続人やパートナーなど
※「生計を一にする親族」や「2親等以内の家族」などが一般的な条件ですが、詳しくは各金融機関の規定を確認しましょう。
▼申し込みに必要なもの(一例)・本人名義の通帳またはキャッシュカード
・お届け印
・本人の本人確認書類(原本)
・代理人の顔写真付き本人確認書類(運転免許証など)
・本人と代理人の関係が分かる書類(住民票など)
申し込みは、本人と代理人が一緒に銀行の窓口へ来店する必要があります。
通常、代理人カードの発行は無料ですが、一部の銀行では発行手数料(例:1100円税込)がかかることもあります。
代理人カードの取り扱いや申し込み条件、必要書類は金融機関ごとに異なります。
■代理人カードを利用するメリット
代理人カードを利用するメリットは以下の3つが挙げられます。
▼預金管理がしやすくなる病気や加齢で外出が難しい親でも、本人に代わってATMで入出金・振り込みができます。生活費や医療費の支払いが滞らず、安心して日常を支えられます。
▼手続きが簡単&コストが低い銀行窓口で本人と代理人が一緒に手続きするだけで、無料または1000円程度で手に入ります。成年後見制度のような裁判所を介する手続きは不要で、気軽に始められます。
▼暗証番号の再設定や確認がしやすい親が暗証番号を忘れても代理人カードで出金できます。暗証番号は別途設定できることが多く、緊急時の困り事にすぐ対応できます。
■代理人カードを使うデメリット
代理人カードを利用する際の注意点は以下の5つが挙げられます。
▼ATM入出金・振り込みしかできない代理人カードはあくまでキャッシュカードの代替で、ATMや振り込みだけが可能です。クレジット・デビットカード機能や定期預金の解約、窓口手続きには使えません。なお、イオン銀行では、定期預金、積立式定期預金の取引などそれ以外の手続きも可能です。
▼取引の制限や上限がある一部銀行では、代理人の1日当たりの引き出し上限が10万~20万円に制限されています。また、窓口手続きができないため、大きな出費には対応できません。
▼認知症など判断能力低下時に口座が凍結される銀行が本人の判断能力の低下を把握した場合(例:認知症の診断が確認されるなど)、口座が凍結され、代理人カードも使用できなくなる可能性があります。
▼家族間でのトラブルの可能性代理人は預金履歴や残高が丸分かりになり、使途や金額を巡り、他の家族と認識のずれが生じることもあるため、事前に話し合いをしておくことが望ましいです。
▼各銀行で個別の手続きが必要複数の金融機関で口座を持っている場合、それぞれの銀行で別々に申請と書類準備が必要となるため、手間がかかります。
■まとめ
代理人カードは、外出が難しい高齢の親の代わりにATMでの入出金や振り込みを家族が行える便利な仕組みです。裁判所の手続きが不要で比較的手軽に使える一方で、取引の制限や認知症発覚後の利用停止リスクもあります。利用前にメリット・デメリットを理解し、他の制度との違いも含めて検討することが大切です。
文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)
会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。3匹の保護猫と暮らす。All About おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド。