■Q. 出産費用無償化のデメリットは? 反対する声があるのが不思議です
Q. 「今28歳なのですが、30歳までに妊娠・出産したいと考えています。分娩費用にも保険が適用され、実質負担がなくなるというニュースを見ました。


この施策には大賛成ですし、少子化が問題になっているなかで歓迎されるニュースだと思います。反対の声もあるそうですが、何かデメリットはあるのでしょうか? わが家は大賛成です」


■A. 保険適用による分娩費用無償化には、医療の質低下や地域格差などの懸念があります
分娩費用の無償化は、妊娠・出産時の経済的負担を和らげてくれますので、少子化対策として期待されています。特に自己負担が大きい地域では、家計面での恩恵は大きいでしょう。

しかし、すでに出産育児一時金や自治体独自の助成で負担がほぼゼロになっている地域もあり、効果は地域によって異なります。

「保険適用による無償化」と聞くと、公平な制度に感じられるかもしれませんが、個室料や特別食など保険外費用は残る可能性があります。そのため、「完全無料」とは限りません。

また、保険診療は最低限必要な医療の範囲で価格が決まるため、現在の自費診療だからこそ提供できている手厚いケアは今後難しくなる恐れがあります。これにより、日本の産科医療が持つ高い安全性が損なわれる懸念もあります。

さらに、地域や物価の差が料金に反映されなくなることで、採算が取れない産科が経営難に陥り、閉院や集約化が進むことも心配されています。

こうした背景から、医療従事者の多くは保険適用による無償化に慎重です。全国一律ではなく、自治体が地域の状況に応じて助成を上乗せする方式の方が、医療の質を守りながら負担軽減を実現できる現実的な方法といえるかもしれません。

▼清水 なほみプロフィール女性医療ネットワーク発起人・NPO法人ティーンズサポート理事長。
日本産婦人科学会専門医で、現在はポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長。女性医療の先駆者の下、最先端の性差医療を学び、「全ての女性に美と健康を!」をコンセプトに現場診療にあたる。ネット・雑誌・書籍等の媒体を通し幅広く健康啓発を行っている。
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