2025年8月、韓国のスターバックスが新たな利用ガイドラインを導入し話題となった。複数人で利用できる席の独り占め禁止や、デスクトップパソコン、プリンター、マルチタップ、パーテーションの持ち込み禁止、長時間席を離れる際は所持品を持っていくことを促す内容だ。


■スタバが新ガイドラインを導入したワケ
スタバも規制に乗り出した。「複数人席を独り占め」「店内にプリンターを持ち込む」韓国カフェの迷惑客
荷物を置いて何時間も席を外したり、大型デスクトップの持ち込みをするという迷惑行為をいかに止めさせるか。カフェ経営者らは苦慮している ※画像:amanaimages

これはカゴン族(카공족)対策のために打ち出されたもの。カゴン族とは、カフェ(카페)+勉強(공부/コンブ)の最初の1文字を取って作られた造語で、要はカフェで勉強する人たちのことを指す。

彼らにとって最も居心地のよい場所はつい最近までスターバックスだった。勉強や作業のために長時間滞在しやすい雰囲気があり、長居しても注意されることはなかったからだ。

ただ、カフェで勉強したり、パソコンを使ったりしてはいけないというわけではない。そもそも韓国のカフェは、日本以上に宿題や読書、勉強をする利用客を比較的寛容に受け入れてきた。早くからWi-Fiを完備し、各席にコンセントを設けるカフェが多かった。今では、座席に充電スペースが設置されたカフェも珍しくない。

そんな快適な空間だからこそ、利用者のモラルも求められる。1人につき1品の注文はもちろん、滞在時間相応の注文、長過ぎる滞在は控えるなど、ほとんどの人は“常識”的に利用しているが、問題は行き過ぎた利用をする一部の客だ。

カフェに自宅で使うような大型デスクトップパソコンやプリンターを持参したり、1人で何席分も占有したりする利用客を問題視する声は、ここ数年ネットやメディアで取り上げられてきた。

今回スターバックスが新しいガイドラインを発表したことを受け、ネット上ではさまざまな意見が飛び交っている。
カゴン族対策として、店側がコンセント数を減らすことや、利用時間の制限を設けることなどを提案する声があるほか、一部の非常識な利用者に限った話であり、そういった客には店側が都度注意すべき、という意見などさまざまだ。

■勉強をするための専門カフェもあるけれど
ちなみに韓国には、勉強をするための専門のカフェが多く存在する。スタディーカフェ、読書室などと呼ばれており、利用料を支払って入場する仕組み。基本的に2時間で3000~4000ウォン(318円~425円)、金額は上がるものの延長利用も可能だ。

24時間営業が多いため、丸1日滞在することもできる。コピー機やプリンターのほか、はさみ、のり、クリップといった文房具類、コーヒー、ティーバッグやちょっとしたお菓子も用意されている。

こんな条件のいい勉強空間が至る所にありながらも、スターバックスなどのカフェを好む人が多いのは、やはり解放感があり、居心地がいいからだろう。スタディーカフェに音楽は流れていないし、雑談することもできない。勉強机がずらりと並び、どちらかというと図書館に似た雰囲気だからだ。

■カゴン族への対策として「ハンバーガー」を販売?
スターバックスは常識を逸脱した一部のカゴン族を規制する動きに出たが、逆にカゴン族による売り上げを重視しつつ、対策に乗り出したカフェブランドは増加傾向にあるという。

例えばデザートカフェとして有名な韓国のカフェブランド、トゥーサムプレイス(A TWOSOME PLACE)。主流メニューはケーキだが、8月に入りオリジナルバーガーの販売を開始して話題になった。


勉強目的で長時間滞在する顧客に、飲み物やケーキだけでなく、食事も店内で済ませてもらおうという狙いがあるようだ。カフェ利用に関するある調査では、マナーが悪いカゴン族の特徴として、“長時間席を不在にする”が1位に挙がっていたが、食事などを理由に席を外す顧客対策にもつながるのかもしれない。

さらに、勉強専用のスペースをあえて設けることで、勉強目的の客とそうでない客の空間をそれぞれ確保する試みも行っている。だからといって、大型パソコンやプリンターを持ち込んでいいことにはならない。

カフェ側の工夫や努力で非常識な客を減らすことができればよいが、やはり根本的なところで問われるのは利用客のモラルなのだろう。

▼松田 カノンプロフィール在韓18年目、現地のリアルな情報をもとに韓国文化や観光に関する取材・執筆、コンテンツ監修など幅広くこなす。著書に『ソウルまるごとお土産ガイド(産業編集センター)』などがある。All About 韓国ガイド。
編集部おすすめ