「危ないからダメ!」「ちゃんとしなさい!」子どものためを思って親や学校が浴びせる「禁止のシャワー」は、子どもの未来にどう影響するのだろう。

実業家・堀江貴文氏の著書『バカ親につけるクスリ』では、子どもをダメにするこれまでの“当たり前”を根底から覆す「ネオ教育論」を展開。


本書から一部抜粋し、親や学校による「禁止」がいかにして子どもの好奇心を奪い、凡庸な人材を育て上げてしまう「安い教育手法」と言える理由について紹介する。

■「禁止」のシャワーが子どもから奪うもの
どうして人は、成長するにつれ「没頭する力」の存在を忘れてしまうのか?

そのきっかけを作るのは親だ。部屋や服を汚したり、遊びに夢中になったりといった幼児の行動を、親は1日中制止し続ける。

もちろん、子ども自身に危険が及ぶような行為は止めるべきだ。しかしほとんどの親は、ちょっとした幼児の行動にも、その延長線上である程度大きくなった子どもの行動にも、「これをしちゃいけません」「あれをしちゃいけません」という禁止のシャワーを浴びせかける。

大半の子どもがこの時点で、「そうか、自分がやりたいことをやり続けるのは、悪いことなんだ」と思い込むようになってしまう。

そして学校だ。学校とは、親から子どもへの「禁止シャワー」を引き継ぎ、さらに強化する場となっている。

■学校にはびこる「禁止令」という名の集団教育
刑法から信号機まで、社会に存在するルールの多くが「禁止令」という形で存在している。そしてご存じのように、学校には数多くの校則があり、明文化されていない「常識」というルールが存在する。

たとえば登校の際、「学校が認めた制服しか着てはいけない」という禁止令だ。上履きの存在だって「土足で校舎に入ってはいけない」という禁止令だし、「アルバイトをしてはいけない」とか「学校にスマホを持ち込んではいけない」とか、さまざまな禁止令が存在する。


小・中学校では「給食を残してはいけない」「廊下を走ってはならない」「先生とすれ違うときは挨拶をしなければならない」など、人権侵害スレスレの禁止令もたくさんある。

「子ども時代の禁止令の影響が残っているんだろう」と感じる大人も、ちょくちょく目にする。

家を出るべき時間が迫っているのに、靴紐をモタモタと結んで、途中で紐がちょっと緩んだことが気になってはごちゃごちゃとやり直し、なかなか履き終わらない人。

他に急ぐべき用事があるのに、服をきちっと畳まなければ気が済まなくて、無駄に時間がかかってしまう人。こうした人は、ひとつひとつの動作にいちいち時間がかかっている。

元々要領が悪いからこそ、親が「失敗を減らせるように」と、禁止令を交えながら一生懸命しつけたのだろう。

「靴紐が緩んでいてはダメ。履くときにしっかりと確認しながら結びなさい」「服をぐちゃぐちゃに置いてはダメ。きちんと畳みなさい」などと何度も言われ、ちゃんとしないと怒られるから、親の言葉が染みついてしまった。

そのため失敗は減るものの、全体的に動作が遅くなる。そういう「要領の悪い人」は、実社会には案外たくさんいる。

■禁止ルールを増やすのは低コスト教育だ
あれをしてはダメ、これをしてはダメ、と禁止のルールを増やしていくことは、非常にコストの安い教育手法だ。
親や教師たちは難しいことを考えず、ただ禁止の枠からはみ出した者を叩いておけばいい。もっとも最近は、体罰に厳しい目が向けられているので、物理的に叩くというより、言葉で厳しく「叩く」ようになってきている。

禁止のルールを十分に身につけた子どもたちは、晴れて常識人として、そして凡庸なジェネラリストとして、社会に出ていくことになる。没頭力を失って。

バカ親、バカ教師、世間のバカな大人たち。これらの人々は、子どもや若者の「没頭」を極端に嫌う。「没頭」とは欲望の解放であり、欲望はコントロールできない、という理屈からではないだろうか?

いかにして子どもたちの欲望をコントロールし、カドの取れた人材を育てていくか。そして、いかに凡庸なジェネラリストとして磨き上げるか。それだけを彼らは考えている。

バカ親やバカ教師が、家庭や学校という集団教育の場で、没頭を否定し、天才を否定し、常識を植えつけていくのである。

禁止という低コストな集団教育は、没頭できず、自分の好奇心がどこにあるのかもわからず、我慢が大好きな労働者を育てるためには、実に効果的なのである。

▼堀江 貴文(ほりえ たかふみ)プロフィール1972年福岡県生まれ。
91年東京大学入学、のち中退。96年、有限会社オン・ザ・エッヂ設立。02年、旧ライブドアから営業権を取得。04年、社名を株式会社ライブドアに変更し、代表取締役SEOとなる。06年1月、証券取引法違反で逮捕。11年4月懲役2年6ヶ月の実刑判決が確定。13年3月に仮出所。著書に『拝金』ほか多数。
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