老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。
そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は、年金を繰り上げ受給し、2カ所でパートしている人からの質問です。

■Q:年金を繰り上げて62歳から受給。2カ所でパート勤務し年収130万円ですが、年金は減らされますか?
「年金を繰り上げて62歳から受給しています。現在は2カ所でパート勤務をしており、年収は約130万円です。この場合、年金は減額されますか?」(匿名希望)

■A:2カ所のパート先で厚生年金に加入しているのであれば、合算した給与収入(総報酬月額相当額)と基本月額(老齢厚生年金の報酬比例部分の月額)の合計額に応じて、老齢厚生年金が支給停止される可能性があります
60歳以上の人が厚生年金に加入しながら、老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金も含む)を受け取る場合、基本月額(老齢厚生年金の報酬比例部分の月額)とおおよその給与収入(総報酬月額相当額)の合計金額が支給停止基準額51万円(令和7年度)を超えると、老齢厚生年金の一部もしくは全額が支給停止されます。これを在職老齢年金制度といいます。

■在職老齢年金で調整される年金の計算式(調整された後に受け取れる年金額)
●基本月額と総報酬月額相当額との合計が51万円以下:全額支給されます
●基本月額と総報酬月額相当額との合計が51万円を超える場合:
基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-51万円)÷2

相談者が年金を繰り上げ受給しながら、2カ所のパート先で厚生年金に加入して給与収入を得ているのであれば、その2カ所の給与収入の合計金額が在職老齢年金制度の対象になります。

相談者の年収130万円がパート先2カ所の合計額だとすると、月額およそ10万8333円になりますので、年金の基本月額(老齢厚生年金の報酬比例部分の月額)が40万1667円(51万円-10万8333円)を超えなければ年金が減らされることにはなりません。パート先で厚生年金に加入していない場合は在職老齢年金制度の対象にならず老齢厚生年金は減額されません。

また老齢基礎年金は、在職老齢年金制度の対象にはなりませんので、減らされることはありません。

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)
都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。
相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。
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