「妄想を趣味にしていたら、誰もがうらやむ彼氏ができた」
そんなうまい話、この世にあるわけありません。
もしあるのなら、妄想ばかりしている私は、とっくに油田を持つ石油王と結婚しているはずです。
最近話題になっている『きょうは会社休みます。』(藤村真理/集英社)という漫画も、彼氏ナシ歴&処女歴33年のOLが、21歳のイケメン大学生とつきあうことになり、続いてクールなやり手CEOにまで言い寄られる……という内容でした。
大人の黒い事情なんて全く絡んできませんし、「そろそろ壺を買わされるのでは……」と濁った目で読み進めても、主人公の女性はどんどん綺麗に、幸せになるばかりです。
今回ご紹介したい『高台家の人々』<1~2巻>(森本梢子/集英社)という漫画も、負けず劣らずの少女漫画で、「妄想を趣味にしている29歳の地味OLが、同じ会社のエリート社員から言い寄られ、つきあう話」でした。
ですが、少し変わっているのが、主人公と付き合っている「高台家(こうだいけ)」の長男は人の心が読めるテレパス能力を持っている、ということです。エリートのイケメンとつきあえるのは嬉しいですが、心を読まれては、困ることも多そう……。
妄想女子×テレパス一家のラブロマンスは一体どんなものなのでしょうか?
※森本梢子『高台家の人々』1~2巻(集英社)2013年
決め手は「優しさ」?この物語の主人公は、平野木絵(ひらのきえ)、29歳。地味なOLだったのですが、同じ会社のエリート社員・高台光正(こうだいみつまさ)から言い寄られ、人生が一変します。
彼女は嫌なことがあった時、それが怒りや憎しみになる前にかなりバカバカしい笑い話に心の中で変換するのですが、その妄想がとても面白いのです。
妄想の中でランプの精を登場させたり、自分の墓を建てたり、「別れることになったら遅咲きの平泳ぎのメダリストを目指そう」と計画したり、最終的に落ち込みが最上級に達すると、半分魚に(人魚姫に)なることもありました。
心が読めてしまう光正や、彼の兄弟たちは、彼女のそんな妄想の面白さや優しさに惹かれていたように思います。
どうやら「普通の妄想ガール」では、木絵に太刀打ちすることは難しそうです。私はしょっちゅう妄想しますが、こんなに可愛くてユニークな妄想はしないし、邪悪なことも考えるので、イケメンエリートにひかれて終わりだろうなあ、と思いました。
やはり決め手は「優しさ」なのでしょうか。少しだけ、チクリと心が痛む少女漫画でもありました。
Image photo by Pinterest & Photo by e-hon『高台家の人々』(1巻)