「女が家に来て、何もしないのは失礼だ」とか「女の家に行って、何もしないのは失礼だ」という言葉があります。誰がそんなことを言い出したのか、まったく、私は今、憤慨しています。
そもそも家はセックスするところじゃねーぞ!たしかに街でナンパされて、「ちょっとうちにおいでよ。すぐそこだから」でついていって、セックスされちゃった。「そんなはずじゃなかった」じゃ通用しないですよね。これは危機感がなさすぎるとは思います。合コンして2人っきりになって、「このあとうちにこない?」で付いていったらセックス。まあこれも自然かもしれません。
しかし、しかしですよ。その日初めて会って、「そういう前提」になることを承知で家に入れば、そういうことになるかもしれませんが、世の中そうじゃないことも多くないですか?学生時代は、男友達の家でゲームをして一緒に授業をさぼったり、逆に帰れなくなった男友達をじぶんの家に泊めてあげたりしたこともあったけれど、なーんにもなかった。「だって友達でしょ? 私のことそういう目じゃ見れないでしょ?」が当然のようにまかり通っていた。あれから何年経ったのでしょうか。かつてそんな関係だった友達から、最近になって「終電なくなった。お前の家に泊まりたい」という連絡が入りました。
久しぶりでしたが、私の彼のイメージは当時から変わっていないので「いーよー」と言って、招き入れました。私が「モンハンでもやる? 持ってるんでしょ?」なんて呑気なことを言っていると、なぜだか変な雰囲気に。なぜ今更!? なぜこのタイミング!?こうなりゃゲームどころではなく、リアルファイトですよ。「なんでそんななったお前はー!」 >>「なんでそんななったお前はー!」と叫びながら、私はNintendo3DSを彼に叩き付けて回避。「家に入れたお前が悪いんだろ」と言われることは分かっていたので、警察には通報できない。家に入れた時点で「やられてOK」っていう世間の認識。
でも、そうじゃないことの方が多かった私は、混乱していたのです。相手もそこまでして私とヤリたかったわけではなかったらしく、DS攻撃に戦意喪失し、「はいはい」と言いながらおとなしく眠ったわけですが、正直いつ襲われるかと思うと、とてもじゃないけれど眠れなかった。明け方そいつは、「男を部屋に入れるってことはそういうことなんだよ」とかほざいて去っていきましたが、そんなこと言ったらあんた、私たちのかつての友情はどうなってしまったわけよ。「女が家に来て何もしないのは失礼だ」という誰かの入れ知恵を、真に受けたのか!? 頼む! 一緒にスマッシュブラザーズやった日のことを思い出してくれ!また、こんなこともあった。これはまた別の友達の話だが、それこそ高校時代からの旧友で、最近一緒に飲んだときも、誰がどう見ても色っぽい展開にはならなかった。だから、「このあとサッカー見ようぜ!」、「いーねー」なんて言って、ノコノコとそいつの家についていったところ玄関入った瞬間に、唇を押し付けられそうになったのだ。
幸いにもそこが玄関だったから、ヤツのその汚い顔を神回避したあと脱兎のごとく扉をあけて逃げ出したのだけれど、マンションを出たあとも 「あー驚いた」としか言えなかった。別に卑下しているわけでも、謙遜しているわけでもなく、彼らはふだんは、本当に私のことなんか女としては見ていないはずなのだ。でも、家という密室空間に入ってきた時点で、わたしたち女は「ヤッていい存在」に降格する。友情なんて思っていたのは私だけだ。なんて哀れ。「ヤッてよさそうだからヤルか」 私だってイラっとくるし、あんたたちにだって、そこまでヤリたくもない女とセックスすることにプライドはないのか、と言いたい。
別に今さらヤられなかったからといって、「私、オンナとしての魅力がないのかしら」なんて心配しないからさ、そういうのはやめてくれ。おたがい結婚相手がいなくて独身のままジジイババアになったときは、「結婚してもいいかもね」なんて話す仲だった気もするが、どんなババアになっても私は、そんなあんたらとは結婚せんでええわい、と思うのです。Photo By maksim_serikow