2017年「このマンガがすごい!」1位(オンナ編)を獲得した岩本ナオの名作コミック『金の国 水の国』が待望の劇場アニメ化、 1月27日(金)より全国劇場公開される。
多くの人々を温かな気持ちにさせた、優しさに満ちた物語の世界が見事にアニメ作品として結実しており、原作ファンならずとも必見の1作となっている。


本作の素晴らしい数多くの見どころから、ここでは物語の魅力をさらに引き立てた美術に注目。渡邉こと乃監督も「美術はかなり細かいので、ぜひ劇場のスクリーンで観てほしいですね」と語るなど、その出来栄えに大きな自信を伺わせている。

>>>目を奪われる風景の原点を初公開!『金の国 水の国』美術ボード&場面カットを見る(写真20点)

100年に渡って国交を断絶している二つの国があった。誰からも相手にされないおっとりした<金の国>の第93王女・サーラ、そして貧しいが家族思いである<水の国>の建築士・ナランバヤルは、それぞれ国の思惑に巻き込まれたことから ”偽りの夫婦” を演じることになる。
敵国同士の身でありながら惹かれ合う二人、そしてナランバヤルのある決意が二つの国の運命を大きく揺るがせていくことに……。

本作の絵コンテ・演出を担当した浅香守生は、「漫画によっては一コマの中に背景も無かったりするカットっていっぱいあると思うんですけど、キャラの芝居も含めて、画面の中にどれだけの情報量を入れるかがアニメ化する上で大切だと思います」と語る。
つまり美術は文字通りの「背景」の役割だけではなく、キャラクターや世界観の設定を支える重要なパーツであるということだ。

繁栄に浴する一方で水不足にあえぐ商業国家<金の国>、豊かな自然を擁しながら国力の衰えが顕著な<水の国>――本作に登場する二つの国は、それぞれ独特の建築や文化を見せるなど、まさに本作の裏の主役ともいえる存在感を観客に見せつける。
また明るく活気のある金の国の風景はサーラの心の輝きを、静寂と涼しさを感じさせる水の国の風景は聡明で思慮深いナランバヤルのイメージを強く印象付ける役割も果たしている。
『金の国 水の国』スタッフがこだわる豪華絢爛&自然豊かな美術の世界
▲繁栄を極めた<金の国>の風景は、夕日に照らされてまさに黄金の様に輝く。

『金の国 水の国』スタッフがこだわる豪華絢爛&自然豊かな美術の世界
▲豊かな水と自然に癒される<水の国>の風景

美術監督を務めたのは、『劇場版BLEACH The DiamondDust Rebellion もう一つの氷輪丸』(2007)、『劇場版 NARUTO 疾風伝 ザ・ロストタワー』(2010)、TVアニメ『からくりサーカス』(2018~2019)などを手がけた清水友幸。
各国のモデルとしたのは、イスラム文化やブータン文化。
清水ほかスタッフ一同は様々な資料を読み込み、作品に落とし込んでいく作業が進められた。

(C)岩本ナオ/小学館 (C)2023「金の国 水の国」製作委員会

今回、特に清水が重視したのが原作の世界観。単純に写実的な美術でまとめると重たいイメージを与えがちなため、デジタルに加えて手描きの素材も加えることで、原作の雰囲気に合った柔らかい美術を目指したという。
手描きの背景は水彩画のような風合いにこだわり、ポスターカラーを透明な水彩画風に重ね塗りする手法で作業がすすめられ、トータルで約70枚を作成。1枚描くのに2~3日の時間がかけられ、絨毯の一枚一枚、食器棚の食器や空中庭園の構造なども丁寧に仕上げられている。
「モザイク美術などはCGも考えましたが、岩本先生の魅力を出せる作風ということで、手描きにこだわりました」(渡邉監督)
『金の国 水の国』スタッフがこだわる豪華絢爛&自然豊かな美術の世界
▲<金の国>王女の部屋 美術ボード

『金の国 水の国』スタッフがこだわる豪華絢爛&自然豊かな美術の世界
▲本編の場面カットより。
王宮の床面のモザイク美術にも注目だ。

完成した映画はどこもお気に入りシーンばかり、と清水は語る。
「自然が映る森のシーンや生活感のある<水の国>の村の絵が、僕にとって好きな部類の絵ですので楽しかったですね。勿論<金の国>の方も、とても細かい描写が出来て良かったと思っています」
『金の国 水の国』スタッフがこだわる豪華絢爛&自然豊かな美術の世界
▲<水の国>国境近くの森 美術ボード
『金の国 水の国』スタッフがこだわる豪華絢爛&自然豊かな美術の世界
▲<水の国>ナランバヤルの家の前の道 美術ボード

渡邉監督は「観た後に周りにある色んな愛に気付いてもらえたら最高だな、と思います。多幸感があって、観た方も優しい気持ちになれる満足感の高い作品になっています」と、公開を待ち望むファンにメッセージを送る。本作を観終えた後、あなたもきっと金の国・水の国を訪れてみたいという気持ちになるはずだ。


(C)岩本ナオ/小学館 (C)2023「金の国 水の国」製作委員会