1月26日(金)からの映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』公開に合わせて、1~2月のBS12トゥエルビ「日曜アニメ劇場」では7週連続で『機動戦士ガンダムSEED』および『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』のスペシャルエディション7作品が放送される。
1月14日(日)に放送されるのは、シリーズの出発点となるスペシャルエディション第1作『機動戦士ガンダムSEED スペシャルエディション 虚空の戦場』。
2023年に劇場上映されたHDリマスター版での放送となる。

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2002年10月から放送が開始された『機動戦士ガンダムSEED』は、21世紀に入って初のガンダムシリーズとなる。
シリーズ前作として1999~2000年に放送された『∀ガンダム』は、『ガンダム』の産みの親である富野由悠季自身が総監督を務め、それまでのシリーズを「黒歴史」という概念で包括することで「20世紀の『ガンダム』」にひとつの区切りを付けた形となった(現在使われている「黒歴史」という言葉は本作に由来している)。
それを踏まえて『ガンダムSEED』では21世紀の『ガンダム』、すなわち「新時代の『ガンダム』のスタンダード」が目指されることになった。そこから考えれば「SEED=種子」というタイトルには、「ここから新しいガンダムを芽生えさせ、育てていく」という意志も込められていたのかもしれない。

また「宇宙世紀」の物語を描かないガンダムのタイトルに「機動戦士」が冠されたのも本作が初となる。
ここからも、シリーズ再出発としての本作に寄せられた期待の大きさが感じ取れるだろう。本作はその期待に応え、当時のアニメファンに熱狂的に受け入れられて「21世紀のガンダム」の扉を確かに開いてみせたのだ。

◆モビルスーツ同士の戦闘で激突する感情◆
遺伝子調整が行われ強靱な肉体と明晰な頭脳を持つ「コーディネイター(ザフト軍)」と普通の人類「ナチュラル(地球連合)」の対立を背景にして、本作のストーリーは展開されていく。
ザフト軍と地球連合の武力衝突が始まってから11カ月後。中立コロニー〈ヘリオポリス〉に住むコーディネイターの少年キラ・ヤマトは、地球連合が開発した5体のガンダムの奪取を目論むザフト軍の襲撃に巻き込まれる。その戦火の中で、キラはザフトの軍人となったかつての親友アスラン・ザラと運命的な再会を果たすことになる。

ストライクガンダムに搭乗して窮地を脱したキラは、成り行きから親友たちと共に地球連合軍の新造戦艦アークエンジェルに乗船することに。こうしてキラとアスランは、互いに望まぬまま敵同士として戦場で相まみえることとなる――。

キラとアスラン、そして彼らを取り巻く人物たちとの関係性から生まれる感情の衝突をモビルスーツ戦――とりわけガンダム同士のバトル――の形で表現することで、激しいドラマ展開とカタルシスを生み出していく。

(C)創通・サンライズ

◆オマージュに満ちた展開から浮かび上がる「21世紀のガンダム」の本質◆
スペシャルエディション第1作である『虚空の戦場』はTVシリーズの序盤となる第1話から第21話までの内容を再構成しているが、特に本作の新しい要素を確認しやすいパートとなっている。
というのも、「コロニーで戦闘に巻き込まれて、ガンダムに乗ることになる主人公」「新造戦艦での逃避行」「否応なく戦闘に参加することになる民間人」「月近郊の基地への逃亡」「大気圏突入中の敵の襲撃」というストーリー展開から、第1作『機動戦士ガンダム』への目線を感じられるからだ。
そこからは偉大なファーストガンダムへの熱いオマージュであると同時に、「人種間に生み出される断絶と差別」「友が敵になり立ちふさがる戦場」といった新たな挑戦の意志が浮かび上がってくる。


その意味では、本作の終盤でキラが出会うことになる「敵」――アンドリュー・バルドフェルドの存在も興味深いはずだ。
地球に降りたアークエンジェルに襲いかかるバルドフェルドは ”砂漠の虎” の異名を持つエースパイロットであり、プロフェッショナルな軍人だ。彼との出会いと交流はキラに大きな影響を与えることになり、明らかにランバ・ラルを意識した存在であることが理解できる。
しかし当然ながらランバ・ラルと異なる面も数多く持っており、そこから生まれる感情やドラマもまた違う意味を持ってくる。

その違いを意識して本作を鑑賞すれば、『ガンダムSEED』が目指した「21世紀のガンダム」の本質がいかなるものか、見えてくるのかもしれない。

(C)創通・サンライズ