日仏合作の劇場アニメーション『化け猫あんずちゃん』の山下敦弘監督&久野遥子監督、近藤慶一プロデューサーが、”AnimeJapan 2024” の「クリエイションステージ」でトークセッションを実施。3月23日(土)に開催されたイベントの公式レポートをご紹介!

>>>映画『化け猫あんずちゃん』ティザービジュアルを見る(写真4点)

『化け猫あんずちゃん』は、カルト的人気を誇るいましろたかしのコミックを原作にしたアニメーション映画。
お寺の和尚さんに育てられ、長生きをしていたらいつの間にか言葉もしゃべれるようになっていたという化け猫・あんずちゃん(現在37歳)。和尚さんから孫娘かりんのお世話を頼まれ、しぶしぶ面倒をみることになるのだが……。

『リンダリンダリンダ』(2005年)や大ヒット公開中『カラオケ行こ!』などで映画ファンから絶大な支持を集める山下敦弘と、『花とアリス殺人事件』(2015年)にロトスコープディレクターとして参加した気鋭のクリエイター・久野遥子が、それぞれ実写とアニメーションの監督としてタッグを組んで本作を制作。
実写映像を作画のベースとする「ロトスコープ」を採用した本作は、まず山下監督を中心に実写として撮影。その映像をもとに久野監督が生き生きとしたアニメーション映像を作り上げた。
制作は『クレヨンしんちゃん』や『ドラえもん』、映画『窓ぎわのトットちゃん』などを手がけたシンエイ動画と、2023年カンヌ国際映画祭で短編パルムドールを受賞した『24(原題)』など世界が注目するスタジオであるフランスのMIYUプロダクションが担当、長編の日仏共同アニメーションとして今夏劇場公開されることになる。


トークセッションには山下監督と久野監督、近藤慶一プロデューサーの3人が登壇。元々原作マンガのファンだったという久野監督は「世の中の塩辛い部分を描いている一方で、弱さそのものは認めて愛おしく思っているような漫画で、そういった塩辛さと優しさが両方ある漫画は珍しいなと思いました」と原作の魅力についてコメント。
同じく原作者であるいましろたかしさんの大ファンで、同氏の描いた『ハードコア』という作品を実写化したこともあるという山下監督は「一番映像化しやすい作品だなと思い、ずっと映画化したいなと思っていました」と、当時の胸の内を明かした。

実写パートの撮影ついて山下監督は「お芝居をアニメっぽくしようとかは考えていなかったので、通常の実写映画の撮影と基本は変わりませんでした」と解説。そうして出来上がった実写映像をアニメーション化するにあたって、久野監督は実写を単純に絵にするとリアルになりすぎてアニメの熱量が下がってしまわないように「実写と絵のテンションを同じようにすることを一番大事にしました」と作業のポイントを語った。

実写撮影での動きと声については、化け猫あんずちゃんを数々の話題作に出演し活躍を続ける俳優・森山未來、かりんを『一秒先の彼』で山下監督作品に参加したことのある五藤希愛が演じる。

両監督は、共に森山を大絶賛。「原作にはない猫的な動きを森山くんだったら色々相談できるかなと思っていました」(山下監督)、「猫みたいな動き、足で耳を掻く動きとかも実際にやってくださいました」(久野監督)と、期待以上の演技に満足した様子だった。

今作が日仏合作になった経緯については、フランスのMIYUプロダクションから久野監督へ作品作りのオファーがあり、そこで久野監督が『化け猫あんずちゃん』を作りたいと逆プレゼンをしたことが始まりだったそうで、「せっかく一緒に作品を作るのならちゃんと大事な部分を担ってもらおう」と、色彩周りや背景をフランス側が担当することになったことを近藤プロデューサーが説明した。
MIYUプロダクションが作ったカラーボードを見た久野監督は、「絵画的なバランスや、柔らかい感じ、印象派的な光の感じがとてもあんずちゃんの世界にあっていたと思います」「日本の風景でありながらフランスのスタッフにしか出せない世界で、見るたびに楽しくてしょうがなかったです」とその印象を語った。

トークセッションの最後には「久野節、山下節が炸裂している映画ということが伝わったかなと思います。7月の公開を楽しみにしていただければと思います」(近藤プロデューサー)、「アニメの監督をするのは初めてで、参加させてもらえてとても良かったと思っているのと、すごい作品ができちゃったなと思っています。
一本の映画としての強度がすごく強い作品だと感じているので、大きいスクリーンで観ていただきたいです」(山下監督)、「普通にアニメを作っていると、どうしても一人の頭の中で考えただけのことに頼らないといけないことがあるのですが、今回は役者さんの息使いがあって、山下さんがそれを撮影し、それが絵になって、そういう多層的というかいろんな色が混ざっていて、本当に見たことが作品になっていると思います」(久野監督)と、本作の魅力をそれぞれの言葉でアピールして、イベントは幕を閉じた。

(C)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会