7月25日、『超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN- Blu-ray Box』が発売された。1992年『超時空要塞マクロス』から10年の節目に誕生したマクロスシリーズ初のOVAシリーズだ。

本作は、『超時空要塞マクロス』から歌を中心にしたストーリーづくり、恋愛ドラマなどを受け継ぎ、その後のマクロスシリーズの方向性を決めた重要な位置にある作品でもある。Blu-rayリリースを機に、今一度『マクロスII』を振り返ってみたい。
今回、作品の関係者としてビックウエストの平井伸一プロデューサー、制作当時のバンダイビジュアルの高梨実プロデューサーにお話を伺った。いまなぜ『マクロスII』なのか、マクロスシリーズにおけるその位置づけは?

超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN- Blu-ray Box』特設サイト
https://www.bandaivisual.co.jp/macrossII/

■ 綺麗に終わった『超時空要塞マクロス』後の『マクロスII』

―『マクロスII』の企画の始まりからお聞きかせください。『超時空要塞マクロス』開始から10年の節目にリリースされました。メモリアルイヤーではありますが、改めてやるとなるとかなりの力仕事だったと思います。何故、『マクロスII』をやろうという話になったのですか?
また、あれだけ大ヒットした『マクロス』があれば、リン・ミンメイと未沙と輝のその後を描くことも出来たと思います。それをいっきに80年後に飛ばしました。素晴らしいアイディアですが、同時にかなり挑戦的です。

高梨実氏(以下高梨)
個人的な感想も含まれますが、『超時空要塞マクロス』は、最初の作品で閉じているんです。ドラマが完結していて続いていないんです。
よく考えると三角関係的なものは、基本的に決着がついているんです。
ドラマの主軸になっているミンメイと輝と未沙、輝が未沙と一緒になることによってふたりは幸せになりましたし、ミンメイはべつのところに行く。終わっているんですね。でも、残りのキャラクターたちは実はほとんど背景を描いていないので、ドラマがつくれないんです。
これは河森(正治)さんの特徴だと思います。物事を綺麗に終わらせるんです。しかも、あの完成度をもう一回つくるのはかなり大変です。

―確かに綺麗な終わりでした。

高梨
ドラマ的に3人のその後を描くとなると、『マクロスプラス』的なやり方になります。つまり、過去、幼なじみだった3人が再会して……という。『マクロスプラス』は、あの時代のトレンディドラマ的な流れで作ってみようと、ああなっています。

―その綺麗に終わった物語を受ける方法としての80年後ですか?

高梨
「続編は作れないかな」と言うときに、じゃあ一気に変えるということも含めて80年飛ばしちゃおうということでした。

高梨実氏
――もうひとつ面白いなと思ったのはのちのマクロスシリーズにも続きますが、“歌”と“三角関係”と“バルキリー”という三題噺です。
これで『マクロス』を成り立たせます。厳密に言うと『マクロスII』は三角関係になっておらず、ひとりの男の子とふたりの女の子という組み合わせですが。「これが『マクロス』だよね」とみんな思う原型は、『マクロスII』で出来たのかなと思えます。

高梨 
いろいろ分析して、そこが残ったんです。特に宇宙船と三角関係でした。実はバルキリーはあくまでアクションのための兵器ですので、絶対になければいけない要素ではないんです。非常にすごい仕組みのロボットで、切り離せないように見えますが実はそうじゃない。
そうすると3つ、“歌”と“宇宙船”と“三角関係”ということになります。三角関係はちょっと作り切れなかったのですけど、それが『マクロス』としての作品を成立させる最低条件だろうと思ってやりました。僕もマクロスファンで、同人誌もやっていたくらいですし(笑)。何が『マクロス』なんだろうな? とちょっと考えていた節はあります。

■ 『マクロスII』と『超時空要塞マクロス』は、歴史的につながっている

―このインタビューを読む方には『マクロスII』を知らない方もおられると思いますので、『マクロスII』を歴史的、時系列で並べたときにどういう作品かここで説明していただけたらなと思います。


平井伸一氏(以下平井)
最初の『超時空要塞マクロス』の時代設定は2009年、2010年の話ですよね。ミンメイが旅立ったのが2012年と言われています。『マクロスII』はそこから何十年も飛んで、2090年のお話になっています。
でも、劇中にマクロス艦は街のモニュメントになって出てくる。そういう形でつながっている世界観です。

高梨 
『マクロス』というからには、マクロスを出すべきだろうということで出しました。基本的には背景ではありますが。

平井 
僕が聞くのもと思いますが、マクロスが街のモニュメントになっているのは何か理由があるんですか?

高梨 
使えないものになっているけど、すごく大切なものだからモニュメントとして取っておくだろうと考えました。80年経ってもきっと残して、置いてあるはずです。

―マクロスの歴史の流れでは、『マクロス』があって最後の『マクロスII』まで、そして『マクロス7』、『マクロスプラス』、『マクロスゼロ』、『マクロスF』とありますが、今後、この間をさらに埋めたり、『マクロスII』の2が出たりというのはありますか?

高梨 
うーん。『マクロスII』を作り直したいという気持ちはあります。これは僕が思っていた、というくらいですけどね(笑)。


―そうした希望はあるみたいな。

高梨 
そう、希望はあります(笑)。

平井伸一氏
―平井さんはいま『マクロスII』を振り返って、マクロスシリーズのなかでの作品の意味づけは、どう考えられていますか?

平井
『マクロスII』のBlu-ray Boxを発売するなかで、公式宣言的に表明しています。是非、公式サイトで読んで欲しいです。

―「『マクロスII』は黒歴史でない」が話題を呼びました。

平井 
高梨さんも携わっていただいた『マクロスプラス』、『マクロス7』、『マクロスゼロ』を経て、長く続くマクロスシリーズを振り返ってみると、『マクロスII』は非常に大きなターニングポイントであります。
さっきのお話も出たように、『マクロスII』で初めて『マクロス』というものが、三角関係などの三大要素があることが明確になった。さらに『超時空要塞マクロス』じゃない世界も描くことが出来る、ということを示した記念碑的な作品だなと思います。これはファンの皆さんも思ってくださっているはずです。

高梨 
『マクロスII』があったからこそ次のシリーズが続いている。これは間違いないです。

■ 黒歴史でない『マクロスII』

―今回だされた黒歴史という表現、『マクロス7』や『マクロスプラス』、『マクロスゼロ』、『マクロスF』どれも名作ですが、その間でエアポケットにハマってしまった感があります。
一方で、発売当時はヒット作だった記憶があります。

高梨 
かなりヒットしました。それにOVAのやり方がいろんなこと分からなかった時代ですから、いろいろチャレンジをすることが出来ました。

―主人公のヒビキがパイロットじゃないというのも面白いですね。

高梨 
『マクロス』というのは主人公がパイロットじゃないといけないというのは、僕としてはそうではない。組み立て方、キャラ配置の仕方次第です。

平井 
『マクロスII』がエポックメイキングなところは、主人公がバルキリー乗りじゃなくてもいいということをやってのけたことです。そのあとテストパイロットだったり、戦わないパイロットだったり、新米パイロットだったり、シチュエーションが拡げられることが出来たのは、『マクロスII』のパイロットじゃない主人公というのがあったからこそだと思います。

高梨 
そうですね。すごく苦しんで模索した結果です。大好きな作品だけど、どう作ったらいいだろうと、脚本の富田(祐弘)さんに頼ったり、キャラクターの美樹本(晴彦)さんに頼ったりしていました。
好きなだけに自分の手でなかなか上手く再現できない。
そういう苦しさがありました。

平井 
今回、ブックレットの取材で当時のスタッフの皆様のお話を伺うことができて、スタッフの皆さんは、本当に真剣に取り組んでおられていると感じました。富田さんも美樹本さんも、いかに最初の『マクロス』から変えようかと悩まれて作り出していると思います。

―本作はビジュアルも素晴らしいのですが、『マクロス』も務められた美樹本さんをここでキャラクターデザインで再び持ってこられたのはなぜですか?

高梨 
美樹本さんのキャラクターと河森さんのバルキリーのデザインはどうしても外せなかった。継続性を考えると美樹本さんだったと思っています。

後編に続く (7月29日アップ予定) 

『超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN- Blu-ray Box』特設サイト
https://www.bandaivisual.co.jp/macrossII/

『超時空要塞マクロスII』
13,800 円(税抜)
毎回封入特典: 特製ブックレット(108P)
毎回映像特典: ノンテロップOP&ED、#6 ノンテロップED、Blu-ray Box PV・CM
毎回音声特典 : 新規オーディオコメンタリー 、BD-Audio「イシュタルからの伝言」他
仕様 : 美樹本晴彦描き下ろし収納BOX 、大張正己描き下ろしインナージャケット
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