12月14日に公開となる映画『ドラゴンボール超 ブロリー』。
『ドラゴンボール』シリーズの劇場版20作目となる本作だが、悟空に対する悪役がいなくては、この偉業も達成されなかったハズ。

ということで、フリーザ役の中尾隆聖さん、ブロリー役の島田敏さん、パラガス役の宝亀克寿さんに、映画の見どころや自身が演じたキャラクター像について伺った。

ワールドプレミアを直前に控えた中でのインタビューだったこともあり、すでに完成した映画を見たうえでのインタビューということでそれぞれが想う深い話が続出した、“悪の華”たちの声に耳を傾けてみよう。

ドラゴンボール超 ブロリー』

2018年12月14日全国ロードショー

■敵役キャスト、それぞれの参加の想いは?

――映画に出演されたご感想はいかがでしょう? 特に中尾さんはTV版『ドラゴンボール超』からの続投となりました。

中尾隆聖(以下、中尾)
フリーザを生き返らせていただいて、ありがたい限りですね。また悪いことができるぞと(ニヤリ)。ブロリー自体はそんなに悪くないんだよね? フリーザが悟空たちにけしかけている。


宝亀克寿(以下、宝亀)
パラガスの遺伝子が優秀だったばかりに、すばらしい息子が産まれてね。ことの始まりはそこからですから。
本来だったら喜ぶべきことなんですけど、物語の中では不幸の始まりになってしまう。ある意味ギリシア悲劇のようなね。

島田敏(以下、島田)
眼の前の敵を倒すという、戦闘民族であるサイヤ人の性(さが)ですかね。

左から中尾さん、島田さん、宝亀さん

――島田さんは、久々のブロリー役はいかがでしたか? 今回は、鳥山明先生の脚本によるブロリーということで、違った点もあったかと。


島田
今までわからなかったところにフォーカスを当てていただいてますよね。ブロリー、悟空、フリーザ、ベジータそれぞれの幼少期からを紡いでいく展開が面白い。
これまでのブロリーは戦闘シーンが多く、ものすごいパワフルというイメージだったんですけど、今回は青年期になるまで人と会話することもないといった生い立ちを含めて、実はピュアで内向的な部分があることが描かれています。
それでいて戦闘民族サイヤ人として激しい二面性が出てきたのかなと。

――宝亀さんは、『ドラゴンボール』シリーズに初参加となります。

宝亀
『ドラゴンボール』という国民的な大人気アニメで、まさか僕なんかに声がかかるなんてね、光栄以外のなにものでもなく、とっても嬉しかったですね。

で、内容を聞いたら敏(びん)ちゃんのお父さん役だっていうから、オドロキと同時に大変なショックでした(笑)。

脚本を読むとね、非常に屈折した父親となってしまうのだけど、その裏にはベジータ王に対する復讐心だったり、辺境の惑星に飛ばされた息子を追いかける親の愛情だったりと、いろんな想いが詰まっている。
悲しいと共に、単純に憎むべき男ではないと感じます。

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■キャスト陣もびっくり! 野沢雅子さんはリアル悟空?

――惑星に取り残されてからの数年間があえて描かれていないところも、またドラマを感じさせます。本作はサブタイトルにあるように、ブロリーがもうひとりの主役とも言える存在です。

島田
バトルシーンでは、戦闘民族ですから眼の前の敵に対して、真摯に・熱く・楽しく戦うという信条があると思うんです。
ただ今回は、ひとたびバトルが終わっても、次、また次が出てきたか! という展開。
役柄的には、疲れることを知らないかのようなサイヤ人冥利に尽きますよね。でも、演(や)る側としては、それはもうしんどくて(苦笑)。

(一同笑)

島田
バトルの展開が、ものすごく速いんですよね。殴ったと思ったら即殴られての連続ですから。
リハーサルではゆっくりとチェックをするのですが、いざ本番となって台本を見ながらパッと顔を上げると、すでに2ページ分くらい先にすすんでいる(笑)。


しかも台本が3冊ありまして、背表紙の高さが40mmもあるんですよ。なので、攻めるときのセリフは赤鉛筆、やられるときは青鉛筆で囲っていたんだけど、それでも追いていかれるくらい。

――先日、野沢雅子さんに伺ったところ、「私、収録で疲れたことがないの」とおっしゃっていて、リアル悟空だって思わされました。

島田
戦闘シーンはテンションを上げて挑みますから、終わったあとは頭がガンガンしてくるんです。普段は痛みが引くまで休憩を取るのですが、最後の収録日にはそれを待っている時間がなくて次から次へと収録が進んでいったんですね。

それで収録を終えて机に寄りかかって息を整えていたら、野沢さんがケロッとした顔で「敏、元気か~!」なんて話しかけてくるんです。
まさしくレジェンドですよ。

中尾
すごいなあ~。

宝亀
収録後からは「目指せ、野沢雅子!」になりましたね。普段からも動きが若々しい!

(一同笑い)

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■悪役を演じるうえの心得

――悪役を演じるに当たっての心構えってあるのでしょうか?

中尾
フリーザはもう、悪の権化みたいに言われてますからね。でも、悪役って演じるのが楽しいんですよ。
収録スタジオで野沢さんから「ホントにフリーザは嫌いっ!」って言われるくらいで、それは自分の中では最高の褒め言葉だと思っています。

やはり悪役は嫌われてナンボなので。嫌われ方と一口に言っても“いい嫌われ方”ができれば最高ですね。

――今回の映画ではフリーザの幼少期も描かれます。

中尾
フリーザだけではなくて、悟空、ベジータ、ブロリーと、それぞれの時間軸と関係性が描かれていきます。それがうまく交わり合っているのが面白いですね。

――パラガスは、その関係性をつなぐ“かすがい”のような立ち位置です。

宝亀
演じていて、親子の関係性を考えましたね。子どもが非常に高い能力を持っていたとして、うまく育て上げて立派な人物になってくれればいいんだけど、力があったばかりに親の方がよくないことを企んでしまって、どツボにハマっていく。そういう悲しさを感じていました。

電撃が流れる首輪を着けてまでブロリーを制御する姿を見ると、復讐のために徹底して利用しつくそうとも思える。
でも、もしかしたら心の中では泣きながらスイッチをオンにしていたのかな、という思いもありましたね。

島田
ブロリーにしても、もしかしたら戦っているうちに悲しい気持ちが目覚めているではないかと感じました。
眼の前の敵を倒そうという戦闘民族の本能みたいなものはあったと思うんですけど、あれだけ激しい戦いが続くと「戦うってことは何なのだろう」という気持ちが目覚めてきてもおかしくないだろうと。
そういった感情が、今後のブロリーの命題になっていくのではないかという気すらします。

――フリーザもブロリーも、今後も悟空のライバルとしての存在感をさらに増す可能性がありそうですよね。その一方で、ドラゴンボールらしいコメディ色あふれるシーンも用意されています。

中尾
フリーザのドラゴンボールへの願いが「そんなことかよ!」ってツッコミを入れたくなりますよね。第二形態のままでいいじゃないかって。なんなら私自身も、その願いを叶えてほしい(笑)。
シリアスな中にもクスッと笑えるシーンがポンポンと入ってくるのが、鳥山先生の世界観ですよね。後半にもフリーザが“割を食う”シーンがあるのですが、そこは見てのお楽しみということで。

島田
容器に入った液体の飲み方がわからなくて開けてもらうシーンは、楽しくもあり物悲しくもあります。しかもゴクゴクと飲み干して「うまい、これはなんだ?」と聞いたら、実は水だった。
それってブロリーがそれまで生き抜いてきた過酷な環境には、水という存在がなかったということですよね。きっと自分で倒した、怪物たちの肉や体液を口にして生き延びていたんでしょう。翻って、地球には水が豊富に溢れていて本当にありがたいなと。

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■戦闘シーンのすごさ、そしてドラゴンボール愛を感じてほしい

――ところで、これからワールドプレミアでレッドカーペットの上を歩かれるお気持ちはいかがでしょう。

島田
リハーサルで見たのですが、オープニングの映像と音楽が素晴らしいんですよ。

(一同頷く)

宝亀
格闘技選手権みたいな感じだよね。

――MCが太田真一郎さん、入場コールがレニー・ハートさんですので、まさにそんな雰囲気です。では最後に、劇場公開を楽しみにしている皆さんに向けて、ひとことお願いします。

宝亀
戦闘シーンのすごさ、特に野沢雅子さん演じる悟空の“生きるエネルギー”をものすごく感じました。そのあたりをしっかり見ていただければと思います。

中尾
迫力あるバトルシーンもそうですし、音楽もそうですし、私たちの声もそうですけど、スタッフがみんな一丸になって作り上げた作品です。
ドラゴンボールを見て育った世代のスタッフからも、作品に携わる喜びや嬉しさをお聞きしたので、その想いがスクリーンから溢れ出てくる様子を、映画館の大きな画面で観ていただきたいなと思います。

島田
今日お話したような、登場人物たちの人間模様がうまく紡がれたドラマになっています。ストーリーはもちろん、作画の素晴らしさ、音楽と三拍子そろっているので、ぜひ劇場でご覧いただければと思います。

――ありがとうございました。