■2018年は百合アニメが大豊作! ムーブメントを振り返る
なんだか知らんが最近、百合が熱いらしい。
「S-Fマガジン」の百合SF特集号がバカ売れして増刷に次ぐ増刷を重ねたと聞いたときは、何が起きたのかと思った。
実際、何が起きとるのだろうか。誰かこの現象を解説してほしい。

さておき、今回の原稿はアニメに関するものです。アニメでも盛り上がってるのですよ、百合。そんな話をしたい。
つうか、2018年は大豊作だった。
TVアニメだけを見ても、年明け早々に日本が誇る百合の専門誌「コミック百合姫」発のガチな百合アニメ『citrus』が放映され、年の最後は萌えの総本山「電撃大王」から飛び出したシュートな百合アニメ『やがて君になる』で幕を閉じるという、尋常ならざる事態。

あ、始まってる。百合アニメ、完全に始まってるわ。

「百合」を強く打ち出していないタイトルでも、『アイカツフレンズ』『キラッとプリ☆チャン』『ゲゲゲの鬼太郎(第6期)』『宇宙よりも遠い場所』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』『RELEASE THE SPYCE』『ゾンビランドサガ』『SSSS.GRIDMAN』などなど、百合回路を心に備えた者にとっては良質な燃料以外の何物でもないアニメが大量にあった。

念を押しますが、あくまでこのあたりのタイトルは「女の子がふたりキャッキャウフフしてたら、なんでも百合に見える」という不思議な心のレンズを持った人が見た場合にそう感じるというだけのことなんで、別に「百合」だと公式にうたっている作品ではありません。悪しからず。


あ、小品だけど『踏切時間』も良かったですね。ちなみに『スタァライト』では真矢クロ推し、『ゾンビランドサガ』では純愛推しです!(聞いてねえ)

映画まで広げれば、なんといっても『リズと青い鳥』。
観てない人、こんなコラム読んでる場合じゃない。いますぐなんらかの合法的手段で視聴すべき。「これが、ゆ、百合……」と魂で納得できる、超絶濃厚なアニメです。
これまた、別に公式には「百合」とかいってないですけど。


……ってな感じで、ざっくりと2018年の百合アニメムーブメントを極私的見地から振り返ってきたけれども、詳しい方は何か足りないと思ってますね? わかってる、わかってる。安心してくださいよ。

→次のページ:重要トピックは「年の差百合」

■重要トピックは「年の差百合」
2018年のアニメ百合を語るうえで最も重要なトピックは、「年の差百合」なのだ。

7月クールに放映された『ハッピーシュガーライフ』(高校1年生と8歳児のエクストリームにヤバいサスペンス百合)、10月クールに放映された『うちのメイドがウザすぎる!』(小学2年生に28歳が惜しみなく愛を注いでウザがられるデンジャラスな百合。最後は泣けた)という快作(怪作?)が2本も下半期のTVアニメから飛び出し、映画では『若おかみは小学生!』でグローリー・水領さまとおっこちゃんの心洗われるような関係性が描かれたわけである。

「年の差百合」の何がそんなにいいのだろう?
ちょっと考えてみるが、これまた、冒頭の問いと同じく、明確な答えは出ない。
そもそも「なぜ私たちは百合に心奪われるのか」という問いかけすら、難題なのである。

いわんや「年の差百合」をや。年上キャラの庇護欲に対して視聴者の中にシンクロするものがあるのかもしれないし、はたまた、ダメな自分を年下の少女になんらかの形で肯定してもらいたいのかもしれない。
昨今、コミック方面でブームだという「社会人百合」の、あくまで対等な中で描かれる関係性とは正反対のところにある、ある種の非対称的な関係性に、何かグッとくるものがあるのかもしれない。

ともあれ、このブームは現在進行形。2019年1月クールにも『私に天使が舞い降りた!』が放映中である。

これはダメな年上キャラひとりにマルチ幼女ヒロイン体制という、さらなる「年の差百合」の盛り上がりを感じさせる作品(実妹ヒロインのひなたちゃんが好きです)。

そんなブームの熱気に翻弄されながら、今後も「年の差百合」概念の探求を続けることとしたい。その中間報告として、今回は執筆させていただいた次第でございます。もっと見よう、語ろう、百合!!

[前田 久(まえだ・ひさし]
1982年生。ライター。通称「前Q」。
「電撃萌王」(KADOKAWA)でコラム「俺の萌えキャラ王国」連載中。NHK-FM「三森すずことアニソンパラダイス」レギュラー出演者。