明治時代の“東亰”にタイムスリップしたヒロインが、明治の偉人たちと出会い心の距離を縮めていく物語『明治東亰恋伽』。
ゲームからはじまり「めいこい」という愛称で親しまれている同シリーズは、2019年1月から3月にかけてTVアニメシリーズが放送され、この4月からは実写ドラマ版も放送中だ。


そんなTVアニメで、ヒロイン・綾月芽衣を演じたのが諸星すみれ
今回は、同作に深く携わった彼女にインタビューし、役作りや作品の印象、思い出のシーンなど、いろいろと語ってもらった。
[取材・構成=松本まゆげ/撮影=小原聡太]

■大事だったのは新鮮なリアクション
――まずは、TVアニメ『明治東亰恋伽』に参加することになったときの心境から伺いたいです。2015、2016年に2部作で公開された劇場版にも参加されていますね。

諸星
はい、また演じられるとなったときはやっぱり嬉しかったです。
でも、劇場版からだいぶ時間が経っていたので、もう一度劇場版を見直してTVアニメの収録に臨みました。


TVアニメは手軽に観られるぶん、大勢の人たちに受け入れてもらえるだろうかと不安はありました。緊張もしていましたけど、一生懸命やろうという気持ちでした。

――役作りはどのようにされましたか?

諸星
実は、劇場版のときとTVアニメ版とでお芝居がちょっと違うんです。
劇場版は「カッコいいキャラクターたちを観るために来ている方が多いから、媚びたニュアンスは嫌がられてしまう。感情を抑えめで」という演出で、普段よりもおさえてお芝居をしていました。

だから、TVアニメでも劇場版の時と同じ気持ちでやるんだろうなって思っていたんですけど……。


――TVアニメでは、感情豊かな芽衣ちゃんが観られました。

諸星
そうなんです。劇場版で「ヒロインに好感が持てた」という感想をいただいていたので、「そのままいけば大丈夫!」と思っていたんですが、そうじゃなかったんですよね。

最初(第1話、明治へ行く前)は居場所がなくて一人で生きていた芽衣ちゃんは抑え気味だったんですけど、明治にタイムスリップして(森)鴎外さんたちに出会って明るく変わっていきました。
なのでその変化を、背伸びすることなく自然体なお芝居をしようかなと思いました。

――等身大で演じられるのは大きいですね。
先ほどの「媚びない」のように、女性向けアニメのヒロインとなると特有の難しさがあるのかと思っていました。

諸星
もちろん無いわけではないですけど、「女性向けだから」と逆にいろいろ考えすぎず、今までの考えを取っ払ってお芝居優先で素直に演じようと思いました。

固定観念を持たないようにして、素直にセリフを聴いて感じたことをセリフで返すというような。
そうすると生っぽくなって、観ている方に自然に受け入れてもらえるようになると思ったので。

――すごく丁寧に向き合っていますね。そうして、そこに監督たちのディレクションが加わるかと思いますが、どのようなディレクションがありましたか?

諸星
実はあまり無かったんですが、明治に行ってすぐくらいのシーンのときは「もっと新鮮なリアクションが欲しい」「観たものに対してもっと素直な気持ちで」とディレクションを受けました。


私としても、その頃はまだ感情をおさえる意識があったのでどうしてもセリフに乗っていなかったんですよね。
そこで、変に考えすぎることないんだと気付かされて、素直にお芝居できるようになりました。

――新鮮なリアクションというと、お金の価値がわからないから「牛鍋○個分」で数えるところは印象的でした。

諸星
そう、まさにそういうところで求められたものでした。明治の町並みを見たときや、偉人たちに出会ったときもそうでしたね。

――自分自身にも置き換えられるところは、リアクションに落とし込みやすそうですね。
明治の町並みとなると難しいですが……。

諸星
はい。修学旅行で博物館明治村に行ったことがあるんですけど、全然時間がなくてサササッと観ただけなんですよ。
そのあとに行ったリトルワールドは余裕があったのに、明治村では、ご飯も食べられなくて。「せめて写真だけ!」と思って撮りました(笑)。

だから想像に頼ることになりましたけど、偉人に関しては学校で本当の顔を勉強していましたから、「こんなにカッコよくなったの……!?」って素直に感情を表せたかと思います(笑)。

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■芽衣と似ているところは「殻にこもるところ」
――Blu-rayとDVDが発売されたタイミングということで、振り返りも。ずばり、忘れられないシーンは?

諸星
鴎外さんが『舞姫』を書けなくてなってしまって、落ち込んでしまうシーンがあるんですけど、そこで鴎外さんに芽衣ちゃんがかける「書けます!」という言葉がすごく好きなんです。
でも、受け取り方によってはすごく無責任になるんですよね。

――「何も知らないで!」となりそうですね。

諸星
だけど、ずっと鴎外さんを観てきて落ち込んでいるところもひっくるめて「好き」という想いがあったからこそ出る言葉だし、成立する言葉だと思いました。
長い時間をともにして、お互いを思いやっているからこそ出る発言だと。

しかも、「書けなかったら温泉に行こう」と言うじゃないですか。
そんな芽衣の純粋さや可愛らしさも好き。なんていい子なんだろうって思いました。

――諸星さんにも、芽衣ちゃんと似た雰囲気を感じますよ。ご自身で似ているなと思ったところはありますか?

諸星
じ、自分の殻にこもりがちなところ……(笑)。

――以前の芽衣ちゃんですね。意外です。

諸星
あそこまでではないですけど、わりとシャットアウトしてしまうことがあるので。

それに、そういう時期があったからこそ芽衣ちゃんの成長が嬉しいです。
芽衣ちゃんにはみんなの輪に入るキッカケを作ってくれた同級生がいましたけど、私もああいう瞬間に殻を破らなきゃなって思いました(笑)。

■次の機会があったら「また芽衣ちゃんを演じたい」
――アフレコ現場で印象に残っていることも聞きたいです。

諸星
ガヤがすごく楽しかったです。全部収録が終わったあとにガヤを録るんですけど、明治だからガヤも外来語をなるべく使っちゃいけないんです。
そのときは、外来語使っちゃいけないゲームをやっている感覚でした(笑)。

――楽しそうです(笑)。

諸星
フミさん役のささきのぞみさんと「そのお着物すごくキレイですね」「うちのおばあちゃんが着物教室をやっていて……」と言ったりして。
あとはハトがたくさん出てくるシーンがあって、先輩たちが「クルックークルックー」と言っていたのは印象深いです(笑)。

――それに、食べ物のシーンも今作の特長ですよね。諸星さんはお肉が好きだと聞きましたが。

諸星
なので、TVアニメに出てきた食べ物でいうとやっぱり牛鍋が一番ですね! おいしそうでした~。
たまごにつけて、持ち上げたときの輝きが印象に残っています。

そもそも芽衣ちゃんが食べてるシーンがすごく好きです。ときどきデフォルメされているキャラクターで食べていてすごく可愛いです。
饅頭茶漬けを食べている(菱田)春草と芽衣ちゃんの顔も丸っこくて可愛かったです。

――あとは、ゲストキャラクターも2話以降各話に登場していました。印象に残っているキャラはいますか?

諸星
そうですねえ……岡倉天心さんですかね。

――第9話で鴎外を訪ねてきた、鴎外の飲み友達ですね。

諸星
そうです。あの、嵐のように来て嵐のように去っていく感じがすごく記憶に残っています(笑)。
芽衣ちゃんも負けじと「鴎外さんは執筆中なので!」って立ち向かっていきましたよね。あのシーンもすごく好き。芽衣ちゃんが勇ましくて感動しました。

――そんな岡倉天心含め、男性キャラクターが多く登場していました。TVアニメでは鴎外との絆を深めましたが、鴎外以外で諸星さんご自身の心に刺さったキャラクターはいますか?

諸星
みんな素敵というのは大前提として、春草は切なかったですね……。
初期からずっと見守ってくれている存在でしたけど、鴎外さんのところに行きなよって最後に言うじゃないですか。
その「行きなよ」がすごくグッときました。

芽衣ちゃんは「はい」って返しその場を去るんですけど、その「はい」にどこまで気持ちを乗せられるか個人的にもすごく考えました。
芽衣ちゃんにとっても私にとっても、すごく大切な存在です。

――ともあれ、今度は春草との恋が描かれるかもしれないと考えると、この先の展開にも期待が持てそうですよね。

諸星
そうなったら、もちろんまた芽衣ちゃんを演じたいです。今回のTVアニメで完全燃焼しましたし、「駆け抜けたな!」って思うんですけど、また演じられる機会をいただけるならやってみたい。劇場版でも、TVアニメでも。

【パッケージ情報】
●Blu-ray BOX上巻
好評発売中!収録内容 1~6話
価格 18,000円(税抜)
特典映像
・音声 ■キャストオーディオコメンタリー
第1話:浪川大輔(森鴎外役)、KENN(菱田春草役)、大地丙太郎(監督)
第4話:浪川大輔(森鴎外役)、KENN(菱田春草役)
第5話:鳥海浩輔(川上音二郎役)、岡本信彦(泉鏡花役)
■ノンクレジットOP
■アニメ「明治東亰恋伽」番組宣伝15秒CM
■アニメ「明治東亰恋伽」PV 第1弾、第2弾
■アプリ「明治東亰恋伽~ハヰカラデヱト~」特別CM #1~#6
初回生産
封入特典 キャストイベント「ハイカラ浪漫劇場~Honeymoon~」先行抽選応募券(昼の部)
封入特典 複製アフレコ完成台本(第6話)
仕様 キャラクターデザイン・山中純子描き下ろしデジパック

●Blu-ray BOX下巻
発売日 2019年5月29日(水)
収録内容 7~12話
価格 18,000円(税抜)
特典映像 ■キャストオーディオコメンタリー
第8話:福山潤(藤田五郎役)、立花慎之介(小泉八雲役)
第10話:諸星すみれ(綾月芽衣役)、浪川大輔(森鴎外役)
第12話:諸星すみれ(綾月芽衣役)、森川智之(チャーリー役)
■アプリ「明治東亰恋伽~ハヰカラデヱト~」特別CM #7~#12
初回生産
封入特典 キャストイベント「ハイカラ浪漫劇場~Honeymoon~」先行抽選応募券(夜の部)
封入特典 複製アフレコ完成台本
仕様 キャラクターデザイン・山中純子描き下ろしデジパック