内に内に入っていく思考を理解できるように
――『渡くんの××が崩壊寸前』という作品の印象を教えてください。
オーディションの際に作品の資料をいただいたのですが、キャラクターの設定や、ラブコメという物語のイメージとは違った印象を受けるタイトルに衝撃を受けました。物語としては、思春期の高校生ならではの視点で進んでいくところが魅力的で、いろいろな楽しみ方ができるなと感じました。
――伊駒さんが声を担当している、石原紫への印象は?
まず、かわいい!もし同じクラスに紫ちゃんのような子がいたらあこがれのあまり、話しかけられなかったんじゃないかと思えるくらいに魅力的な女の子で、まさにクラスのマドンナというイメージです。それでいて、思ったよりも複雑な感情を抱えているところも印象的でした。
――紫は、わりと自己完結をしてしまうタイプの子ですよね。
自分のなかで世界を作り上げてしまうタイプなんですよね。たとえば、紫ちゃんが考える「素敵な彼女」は、ものわかりがよくてお料理上手、彼氏に対して穏やかであり、彼氏の言うことに「うん」とうなずかなければならない……みたいな感じで「こうでなければならない」と思ってしまっている。だからこそ、藤岡先輩につきまとわれたときに、「嫌です」と突き返せなかったんだと思います。
――そんな紫にとって、思いをストレートに表現する紗月との出会いは、衝撃的だったんでしょうね。
未知との遭遇に近い感じでしょうね。
――紗月と出会っていなければ、第4話でビキニは選ばなかったかもしれませんね。
そうかもしれないですよね!紫ちゃんはスタイルが抜群なので、それを生かした水着でかわいいです!もしビーチで見かけたら思わず見つめてしまうのではないかと思います。ただ、そんなふうに人を引きつける魅力にあふれているからこそ、周りからは「恐れ多くて話しかけづらい」とも思われちゃうんでしょうね。
――紫の役作りで大切にしましたか?
紫ちゃんのことを見ていると、「もう少し、こうしたらもっと幸せになれるかもしれないのに」というもどかしさを感じることもあります。でも彼女なりにがんばって人と向き合っているので、プラスな面とマイナスな面、両方をお芝居でも表現できたらと思っていました。また、これまでは素直に感情を表現するキャラクターを演じさせていただく機会が多かったこともあり、紫ちゃんの内に内に考えていく思考を理解できているのか不安がありました。そこで、心理学や恋愛指南の書籍を購入しました。たとえば、好きな人から返信が来なくてモヤモヤするときに、どんな心の動きがあるのかみたいなことを紐解きながら、人間の思考について考えて紫ちゃんと向き合いました。
――考え込むタイプではありますが、そこまで深刻にならないような声の出し方などは考えましたか?
演じ方については、最初のアフレコのときに、スタッフさんにキャラ感をチェックしていただきました。そこで、ほんわりとしていて穏やかであり、大事に育てられているところがにじみ出るようなイメージをすり合わせていきました。結果、ほかのキャラクターとも違った感じのタイプになったのではないかなと感じています。
――内向的に考えるタイプの紫が第6話で直人に告白したときには、かなりがんばった印象でした。
彼女のなかで「告白とはこういうもの」と想像している形がもしかしたらあったのかもしれません。そして、焦りもあったと思います。だからこそ、自分から行動することができた。積極的に動く姿からは、ふだんの考え込むところとのギャップが見えて、とてもかわいく感じました。ただ、渡くんが断るとは思わなかったので、そこは衝撃的でした。
――「石原さんの気持ちに応えられる自信がない」というのは、紫からしてみるともどかしい言葉ですよね。
渡くんは、やさしさのレベルが高すぎて、このやさしさの持つ意味が恋なのか尊敬なのかあこがれなのかが見えにくいんですよね。だからこそ、見ていて「あれ?」と思ってしまうところがあるのだと思います。それでも、渡くんはちゃんと人と向き合い、温もりのある行動を取れるタイプですし、そういうところは魅力的だと思います。
――恋のお相手として、伊駒さんは渡をどう見ていますか?
相手と向き合う覚悟を決めたときに、すごくカッコよくなる印象です。物語冒頭の渡くんと、後半、人とちゃんと覚悟を持って向き合おうとする渡くんは、だいぶ違う印象なんです。
――先ほど、紫にわからない部分が多いと話していましたが、紫とご自身とで共通点はなさそうですか?
自分から人を誘うところは似ています。だからこそ、積極的に行動する姿を見ると、「わかるー!」という気持ちになるんです(笑)。私はあまり考え込むタイプではないので、紫ちゃんに出会えたことで、世界がひろがったように思っています。
――では、紫の考え方や行動にあこがれを持つ部分はありますか?
目の前の問題に、ちゃんとまっすぐ対処しようとする一生懸命さにはあこがれます。どうしたら渡くんが自分のことをもっと好きになってくれるかとか、苦しい状況をどうしたら打破できるのかとか、ちゃんと考えて行動しようとするんです。とても素敵だなと思います。
――恋のライバルとなりそうなキャラクターとして、紗月に加え、第8話では梅澤真輝奈が登場しました。2人に対してはどんな印象がありますか?
まず、真輝奈ちゃんはかわいいです!感情がまっすぐに出る子なので、見ていて笑顔になれますし、アフレコ現場でもその存在に救われています。紗月ちゃんは、見えない部分がすごく大きかったのですが、物語が後半になっていくと何を考えているのかもわかってくる。最後まで見守りたくなるキャラクターになりました。
――物語は第8話まで進んでいますが、印象的だったエピソードは?
第3話のお粥です(笑)。アニメでお粥がどう表現されるのかを楽しみにしていたんです。SNSで原作の鳴見なる先生も「デス粥」とポストしていらして、まさにその名のとおりだなと感じました。第3話につながる第2話は、とくに紫ちゃんの衝撃的な面が見えるんですよね。渡くんが体調を崩して寝込んでいるときに、急にお粥を作りにいく。その行動からも、紫ちゃんの思考回路が見えるような気がして印象に残っています。
――紫のなかでは「同級生が寝込んだら、お粥を持って看病に行く」という物語ができあがっていそうですよね。
ふつうだったら、まず連絡を入れて、「ほしいものある?」とか聞くところですよね(笑)。そのやりとりを飛ばして行動するところもすごいですし、それを受け入れてくれる渡くんもすごい。あのエピソードでは渡くんが、紫ちゃんをほかの友達とは違った存在として見てくれていることがわかったような気がします。
――アフレコ現場で思い出深かった出来事はありますか?
高校生が主人公のお話なので、アフレコ現場にも学校のような温かさがありました。重いストーリーもありますが、そんななかで渡くんの妹の鈴白ちゃんと、スケキヨが癒しだったんです。
――さらにひと波乱ありそうですが、今後の見どころを教えてください。
恋愛的な面でも人間的な面でも、みんながどんな成長をしていくのかが見どころになると思います。誰と誰がくっつくのか、クラスメイトの徳井くんが何やら匂わせているのはなんなのか。ひとりひとりに気になるポイントがあると思いますので、ぜひ最後まで見守ってほしいです。また、紫ちゃんのお声を担当させていただいている身としては、今後紫ちゃんが渡くんや紗月ちゃんとどう関わっていくのかにも注目していただきたいです。
MegamiにQuestion
Q.自分のチャームポイント
A.元気なところ
これまでデフォルトで元気に生きてきたので、どうしたら大人の女性になれるのかを考えています。違うお仕事をしている友達に会うと、社会人としてシャキッとしているんですよね。私ももう少しがんばって成長したいと思いますが、元気さも忘れずにいたいです。
Q.自分のニックネーム
A.ごまちゃん
学生時代、授業中に先生から突然「ごまちゃん」と名付けられました。
Q.自分の声の特徴
A.まっすぐ
親や友達から、「どこにいても聞こえる声」と言ってもらえます。どんなに混んでいる場所でも、私が声を出すと必ず聞こえるらしいので、そこはいいところだなと感じています。
Q.自分の性格
A.ポジティブ
落ち込むことはありますが、美味しいものを食べて寝たら、次に起きたときには目の前のことに向き合えるメンタルを取り戻しています。この性格だからこそ、悔しいことや悩みを引きずりすぎずにすんでいるので、このままでいたいなと思います。
Q.美味しいものといって思いつくのは?
A.お肉です!
とくに好きな部位はタンとカルビですが、ほかの部位も全部好きです(笑)。基本的に、焼き肉に行けば元気になれます!
Q.いま、ハマっているものは?
A.散歩
歩いている時間がすごく好きで、1日1時間半くらいは歩いています。私はディズニーが好きで、ディズニーリゾートの外周もよく歩いているんです。何も考えず、街の音を聞いたり、吹く風を感じたりしながら歩くのが楽しく、自分にとって大切な時間になっています。渡くんのアフレコ現場で、徳井くん役の中島ヨシキさんから、朝にスクワットをしたあとに30分くらい歩くといいとうかがってから、それを続けています。
Q.最近、崩壊寸前になったことはある?
A.パソコンのデータが崩壊寸前になりました!
長年使っていたパソコンが、突然動かなくなってしまったんです。時々持ち歩いてもいたので、暑さにやられたのかなと思うのですが……。ちょうど、書き物のお仕事をしていたところだったので焦りましたが、バックアップを取っておいたのでデータは崩壊せずにすみました。その後、パソコンは無事に買い換えました!
Q.本作のキャッチフレーズ
A.ラブコメだけど、ラブコメだけじゃない
恋愛的な物語として、誰と誰がくっつくのかにも注目して楽しんでいただきたいですし、人間ドラマとして、みんなが成長していく姿も見てほしいです。
Profile
いごま・ゆりえ/2月24日生まれ。東京都出身。81プロデュース所属。
主な出演作は、『【推しの子】』星野ルビー役、『ツインズひなひま』ひなな役など。
作品Information
毎週金曜日深夜1時よりTOKYO MXほかにて放送中
https://watarikunxx-anime.com/
両親を亡くし、妹と一緒に叔母の家で暮らす高校生の渡直人。妹最優先の生活をしていた直人だが、幼なじみの館花紗月が現れてから状況は一変。クラスの行事に参加できたり、想いを寄せる石原紫といい関係になったりしていくが……。
(C)鳴見なる・講談社/渡くんの××が崩壊寸前製作委員会
●取材・文/野下奈生(アイプランニング)