星野奏さん(写真左)とaymさん、そして参戦車両のGRヤリスRS

 TGRラリーチャレンジ渋川伊香保大会にて、コ・ドライバーとして、ラリー競技デビューする星野奏さんこと、ほっしー先生。ついにデビューの日を迎えました。車検でドタバタだった先生。はたして本番を乗り切って、完走することはできるのでしょうか? そして売却が決まっているGRヤリスRSを無事無傷で戻すことができるでしょうか?


初めてのレッキはやっぱりドタバタ

ラリー初体験のレースクイーンがクルマを壊さず無事完走!【後編】
競技開始までのスケジュール
ラリー初体験のレースクイーンがクルマを壊さず無事完走!【後編】
レッキ受付で渡されたゼッケンをボンネットに貼るチームスタッフ
ラリー初体験のレースクイーンがクルマを壊さず無事完走!【後編】
チームスタッフの誘導に従ってバックをする

 レース日は朝から雨模様。TGRラリーチャレンジの朝は早く、チームは朝5時にホテルのロービーに集合して5時15分に会場入りしました。というのも、なんと朝6時に「ロードブック」、ボンネットに貼るゼッケンステッカー、そして「何やら」が配布される「レッキ受付」が開始されるから。しかもレッキが始まるのが朝6時! ほかの競技では考えられない時間です。


 レッキとはコース下見のこと。ラリーはSS(スペシャルステージ)と呼ばれるタイムアタック区間と、SSへ向かう一般道区間(リエゾン)に分かれており、その道順に走らなければなりません。ですが、いきなり指定された長距離のコースを走ることは難しいので下見をします。他カテゴリーでいうところの練習走行みたいなものですね。


ラリー初体験のレースクイーンがクルマを壊さず無事完走!【後編】
ロードブックと星野さん

 その際、ロードブックに書かれたリエゾンや、SSの順路を示した略式図(通称:コマ図)を見て走行すれば、正しく目的地に到着できる、というわけです。さらにロードブックには、アイテナリーというタイムコントロール(ラリー車両の通過を確認し、通過時間の記録を受ける場所)とSSの間の距離と所要時間が書かれており、ラリーの競技進行を分刻みで記した行程表も記されています。


 ドライバーは運転に集中する都合、この道順を正しく伝えるコ・ドライバーの役割はとても重要になります。道を間違えたり、時間に遅れても早く着いてもいけないわけで、ほっしー先生の責任は重大です。さらにほっしー先生には、SS区間での道の形状や路面状態などをドライバーがすべて言い表し、それをコ・ドライバーが聞いて書き記した「ペースノート」を作成する仕事もあります。


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レッキへ向かうaym/星野組
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レッキ中、誰もいなくなったチームテント

 車両にゼッケンを貼り、カバンにロードブックと「何やら」を詰め込んで、aym/星野組はレッキに出発。一方チームはというと、レッキ中は何もやることがなくなります。チームスタッフは朝食を兼ねた買い出しに行ってしまい、筆者はひとりお留守番となってしまいました。


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スマホで全車の位置が把握できる!

 お留守番の筆者。クルマも出ていき、スタッフも出ていってしまっては、やることは何一つありません。ですので、ほっしー先生が走行している場所をスマホで観察することにしました。ラリーはGPSを使ってリアルタイムで走行している場所がわかるシステムが用いられています。競技者はスマホに専用アプリをインストールして設定をするだけと簡単そのもの。というわけで、先生はどこを走っているのかな? とスマホを見るのですが、どこにも見当たりません……。


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大会本部テント
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GPSトラッキングの管理チームにあるモニター

 筆者はひとり迷子探しです。大会本部のGPSトラッキング管理者に「あの、うちの子、どこにいるかわかります?」と調べてもらうと、「そもそもの信号が来ていないので、スマホの電源が入っていないか、アプリを立ち上げていないようですね」とのこと。アプリはほっしー先生のスマホにインストールしていたので、ほっしー先生がスマホのアプリを立ち上げていないと断定。買い出しから戻ってきたチームスタッフも「ちゃんとレッキをしているか探したけれどいないんですよ」「あの2人、どこにいるんだ……大丈夫かなぁ」と不安な様子。


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レッキから戻ってくる参加車両

 続々と戻ってきた参加車両。ですが2人は待てど暮らせど戻ってきません。チーム内に「渋川市内で迷子になっているのでは?」と不穏な空気が流れてきます。そして8時30分頃、2人はレッキから戻ってきました。


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レッキから戻ってきたaym/星野組

 レッキが終わり戻ってきたほっしー先生。早速チームスタッフから「スマホのアプリを立ち上げてください」と怒られてしまいました。とりあえず事故なく無事に戻れて一安心です。


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大会委員長から注意を受ける、コ・ドライバーのほっしー先生

 ですが、トラブルは続きます。戻ってきたクルマの前にいた筆者に、大会委員長を名乗る方が「この車両の選手にお話しがあるのですが」と尋ねてきたではありませんか! ほっしー先生が対応すると「コースオープン時間のタイムオーバーです」と衝撃の通告が! 「え? どういうことですか?」と、ほっしー先生。


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レッキ受付では、ゼッケンとロードブックのほか、Recceカードが渡されます
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大会委員長に言われて、改めてRecceカードをチェックするほっしー先生
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Recceカードには、SSのコースオープン時間が書かれており、その時間内に通過しなければならない

 実は、ほっしー先生がカバンに詰め込んだ「何やら」はそのRecceカードで、そこには「石原 AM6:10~AM6:50」とコースオープンの時間が……。つまり石原SSのポイントを時間外走行して注意を受けたというわけです。


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大会委員長から注意を受けた後の2人

 どうやら、2人は最初の道を間違えたらしく、その結果、石原SSをタイムオーバーしてしまったのです。もはや言い逃れができない先生に待っているのは、偉い人からの説法でした。


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アクションカムの動画を確認するチームスタッフ
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ほかの人の走行動画を観る2人
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ほっしー先生が作成したペースノート
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車内でペースノートを作成する2人

 騒動が終り、ようやくペースノートの修整に取り掛かるほっしー先生。実はマシンにはアクションカムを取り付けており、SS区間の走行動画を見ながら修整します。一回走っただけでは正確な状況はわからないですからね。ですが、正しく動画が撮れていないことが判明。結局、メカニックの方が他のチームの動画をお借りしてきて、それを見ながら修整をするという運びとなりました。そして周りの音が気になるのか、二人はクルマの中に閉じこもってペースノートを作成し始めたのでした……。


トヨタの社長も参戦!
いよいよラリー本番!

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小渕優子衆議院議員

 9時になると、ドライバーズミーティングというか開会式がスタート。小渕優子衆議院議員を筆頭に、群馬県知事、渋川市長といった偉い人が「地元云々、低炭素化社会云々、コロナ云々」というありがたい説法が延々と続きます。「地方の大会なのに、市長はわかるけれど、知事や国会議員がいるのは何故?」という疑問を抱く筆者。それは……


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モリゾウ選手こと、トヨタ自動車の豊田章男社長が選手代表のスピーチ
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スピーチを聞くほっしー先生とaymさん

 モリゾウ選手こと、トヨタ自動車の豊田章男社長が参加されているから! そしてモリゾウ選手が、選手代表としてスピーチ開始。最後にオフィシャルによる集合写真を撮影が行なわれ、30分ほどの開会式というか、ドライバーズミーティングが終了しました。


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参加者全員で集合写真

 2人は再びペースノート作りのために、パソコンを持ってaymさんと車内へ。スタートのギリギリまで車内にヒキコモリました。今回参加する車両は87台。ラリーは一斉スタートではなく、1分間隔でスタートしていきます。ですので先生は最初のクルマが走り始めてから約90分後ということに。それまでチームも筆者も、完全にやることがなく、雑談タイムに。


 すると、いい匂いが漂ってきたので、お隣のチームに伺ってみると料理を自炊するチームを発見。ガパオライスを作っているようで、実に美味しそう! この日は7月にもかかわらず雨ということもあり、少し肌寒さを感じた次第。ですので温かい食事は、きっとスタッフにとってはありがたいでしょう。


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スタートする参戦車両
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モリゾウ選手もスタート!

 会場では、スタート位置では選手紹介と共に1台づつ、ゆったりと走り始めていきます。自分たちのチームだけでなく、ほかのチームにも声援を送る姿が目立ちました。そして会場で気づいたのは、レーシングスーツを着た女性参加者の多いこと。旦那さんがドライバーでコ・ドライバーが女性と思いきや、エントリーリストを見ると女性ドライバーの名が結構多い! モータースポーツを楽しむ女性、素晴らしいですね!


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TEAM NENCのレースクイーン、有栖未桜さん

 モータースポーツの女性といえばレースクイーンさん。TGRラリーチャレンジのようなラリーでレースクイーンは来ないだろうと思いきや、ウェルパイン・モータースポーツのお友達チーム「TEAM NENC」さんにレースクイーンさんがいらっしゃるではありませんか! (前日から存じておりました)。雨も小康状態になったので、お待たせいたしました。お待たせしすぎたかもしれません。TEAM NENCのオフィシャルカメラマンさんと共に、有栖未桜さん撮影会を開催です!


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有栖未桜さん

 黙々と撮っても面白くないので、「それでは、今から目の前にいらしゃるスレンダーでボーイッシュなお嬢様と熱いファイトをして、奇跡の瞬間をみなさまにお届けしたいと思います。そう、ナイスですねぇ。素晴らしいじゃありませんか。エクセレント! パーフェクトッ!」などと某監督の真似をしていたら……


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笑いが止まらず、顔を隠す有栖未桜さん

 有栖未桜さんの笑いが止まらなくなってしまい撮影終了。キリッとしたお顔立ちも素敵ですが、笑顔はもっと素敵なのでありました。ちなみに有栖未桜さんは、撤収の際も、積極的に重たい荷物を運んでいらっしゃいました。実に働き者な女の子です。


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撤収で20kgのウェイトを運ぶ有栖未桜さん
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スタートするGRヤリスRS

 最初にスタートした選手が戻り始めてきた頃、ほっしー先生のスタートの順番がやってきました。朝から降る雨は小康状態ですが、やや霧が出てきている様子。メカニックさんの指示に従ってGRヤリスRSはサービスアウトします。最終出走者と思っていたら、急遽出走順が変更になったマシンがいたため、最後からひとつ前の走行順になりました。


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Rally Streamで全体表示した渋川伊香保のコース図

 走行が始まると、チーム関係者はスマートフォンに表示されるピンの位置でaym/ほっしー先生組の位置を確認し続けます。午前中に道を間違えたSS1に到着したピンを見るや、松井監督の口からは「道を間違えなくてよかった」と、思わず安堵の声が漏れ出します。


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スマホの画面でSSを走る様子を確認
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SSを走るGRヤリス(撮影:真壁強)

 そしてSSがスタート。スマホのトラッキングを見ながら、ただひたすらゴールしてくれることを祈るのみ。


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そしてSS1のゴールに到着

 無事SS1のタイムコントロール(TC)に到着。ここでも思わず安堵の声が。そして次のSSへ向けてリエゾン区間へ向かうGRヤリスRSのピンを追い続けます。


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SSを走るGRヤリスRS(撮影:真壁強)

 そしてSS2。このステージだけYoutubeの中継が行われているので、チームスタッフは動画中継を見つめます。



 ゆっくりゆっくり走るGRヤリスRS。とりあえず傷はなさそう。ですが、後続車に追いつかれてしまいました。


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午前中のセッションを終えて戻ってきたGRヤリスRS
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チェックポイント待ちの間、事情を聞くチーム監督
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最後のチェックポイントでタイムを申告

 こうしてSS2を完走し、渋川スカイランドパークに戻って、午前中のセッションを終えました。サービスに入る前のTCで待機している間、監督は大会本部に行き、走行順を変えてもらえないかと打診しますが、残念ながら却下されました。


午後のセッションでは霧が濃くなり……
それでも無事にゴールまでたどり着いた!

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午後のセッションまで休憩をする2人
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水とマイクロファイバータオルで車体に付いた汚れを落とします
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ホイールの取り付けトルクを確認するチームスタッフ

 午後のセッションまでの間、2人はSNSをしたり、ご飯を食べたり。いっぽうメカさんは車両の清掃にとりかかります。他のチームはサスペンションの調整などをしているのですが、当チームは空気圧のチェックとホイールの増し締めのみ。


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午後のセッションへ向かうGRヤリスRS。これがラストランになります!
ラリー初体験のレースクイーンがクルマを壊さず無事完走!【後編】
真剣なまなざしの二人

 そうこうして、午後のセッションが順次スタートしていきます。結局走行順の入れ替えはなく、大会側はSS走行時にaym選手たちがスタート後、通常1分後にスタートするところ、3分差でスタートすることとなりました。


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濃霧の中、SSをアタックするGRヤリスRS(撮影:真壁強)
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タイトなコーナーも無事クリアするGRヤリスRS(撮影:真壁強)
ラリー初体験のレースクイーンがクルマを壊さず無事完走!【後編】
濃霧の中に消えていくGRヤリスRS(撮影:真壁強)

 より霧が濃くなり、前がほとんど見えないようなコンディションの中、傷を絶対につけてはいけないGRヤリスRSを運転するaym選手と、その運転をサポートするほっしー先生。さすがに本日3回目となる同じ道。間違えずにSS3にたどり着き、そしてSS4を走行します。その様子をご覧ください。



 実況も「aym最後まで走ってくれよ。この直線滑りやすいんだ、無理するな、無理するな。ここは安全でいこうな。よし、よし」と、ほかの選手とは明らかに違うノリの実況。とにかく無事に完走できることが何より大切です。後続とは3分の差があるので、気はラクでした。


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午後のセッションを終えて戻ってきた2人

 こうして無事に戻ってきた両選手。監督は張っていた気がすべて抜けたように、ホッとした表情を浮かべ、そしてドッと疲れが出た様子。なにより、マシンは無事に戻ってきたことが何より。事故がないことは、何より大切なことです。


ラリー初体験のレースクイーンがクルマを壊さず無事完走!【後編】
aym選手、星野選手とGRヤリスRS

 両選手に初参戦の感想を伺ってみました。aymさんは「ラリーというと、カッコいいクルマでカッコよく走るというイメージがあったんですけれども、それだけじゃなくて準備だったり、コ・ドライバーと作り上げるレッキやノートだったりとか、チーム全体のチームプレーで成り立っているスポーツなんだなと改めて思いました。そして安全性について考えられた緻密なルールがあることを再確認しました」とのこと。


 今回、ラリー初参戦となったほっしー先生は「速く走ることも大事なんだけれども、それ以前に時間の管理とかルールを知っていないと、ちょっとしたことでも減点になったりとか。走るだけじゃダメなスポーツなんだなと思いました。今回コ・ドライバーとして参加しましたが、ドライバーもやってみたいですね」とステップアップを目指している様子。一方、両方体験したaymさんは「どっちも違う面白さがありますね。サポートする側と、それを信じて走る側というのがあって、でもできるならドライバーをやってみたいですね」だそうだ。


 そして、ほっしー先生は「自分たちも失敗したし、勉強途中だけれども、新しい人がラリーを知ってやりたいと思うには、私たちのような存在も必要かなと。頑張ればできるよ、と伝えていきたいですね」というと、aymさんは「素晴らしいクルマをご用意して頂いて、スーツも用意してもらえて、こんなに貴重な環境で体験できて、本当にありがたいなと思いました。ありがとうございました」とチームに謝辞を述べていました。


ラリー初体験のレースクイーンがクルマを壊さず無事完走!【後編】
GRヤリスRSとチームテント

 そんな2人を支えたチーム監督の松井 悠氏。今回の参戦意図や二日間の総評を頂きました。


 「うちはラリーに興味がある女子をラリー界に引き込むみたいなことをやっているんですけれども、チームとして自分が気にしているのは、モータースポーツというのは常にリスクがあるということ。ですから、SOSの出し方や救助など、安全性に関わるルールは重点的に教えるようにしています。ラリーというのはエントラントが競っているけれども、協力しなければならない場面も非常に多いんですね。今回は練習する時間が想像以上になくて、ぶっつけ本番でやっていることは多く、その分不安だったのですが、まずは無事に戻ってこれてよかったです。ただただ安堵感でいっぱいです。今日は色々なことがありましたけれど、全部ありがちな話ですよね。いつもは、ドライバー、コ・ドライバーのいずれかをベテランとする組み合わせにしています。ですが、今回は初心者×初心者だったので、もっとトラブルが起きるかなと思っていました。最初から全部できるとは思っていないですし、クルマを壊さず、途中で失格にならず、完走できたというのはラリーの工程を学ぶ上でよかったなと思います」と、2人の健闘を称えました。


 そして、ほっしー先生のドライバー起用に対しては「状況が許せば、星野さんをドライバーに起用しての参戦はやぶさかではないですね。ただ、あのクルマは売却してしまいますし、残るクルマが4駆ターボになるので、それをいきなり初心者が運転するのはリスクがあるのでできないですけれど(笑)。来年以降、たとえばヤリスを入れてマシンを作るなど、色々な条件がかみ合えばいいんじゃないですかね。今後、ラリーのお仕事を手伝ってくれるという話になった時に、やってもらう立場としたら、よりラリーが好きだったらうれしいというか。実際にやってみて自分に合う合わないがあるでしょうし。ドライバーをやってみたいというポジティブな話が出たのは今回やってよかったですね」


 松井監督によると、全日本選手権もTGRラリーチャレンジも、日数に違いはあるが、工程としては変わらないとのこと。逆に1日で行なうTGRの方がドタバタになりがちなのだそうだ。「TGRラリーチャレンジは一番ハードルが低いラリーです。もちろんクルマを用意して、安全装備などはキチンとするなどで、初期費用はかかります。今回からヤリスカップカーが参戦していましたね。ただそのままじゃ出られないので、コ・ドライバーのシートやハーネス、消火器などの安全装備を追加で取り付ける必要はありますけれど」。


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ヤリスカップカー仕様

 普段乗っているヤリスで、時にはサーキット走行、時にはラリーを楽しめるって、凄いことではないでしょうか? ちなみにトヨタでは、ロールゲージや専用サスペンションなどが最初から取り付けられているYaris Cup Carも販売しています。気になる値段は217万1100円(6MT)、238万100円(CVT)とのこと。もちろん車検を通すことができて、街乗りできます。高いクルマを買うより、このヤリスを買って年に数回、レースに挑戦してみるというのも楽しいレジャーの一つかも。今回のTGRラリーチャレンジを見て、そんなことを思ってしまいました。なお、このヤリスカップカーですが、エアコンはついているものの、ディスプレーオーディオは省略されています。


ラリー初体験のレースクイーンがクルマを壊さず無事完走!【後編】
今大会のリザルト。aym/星野組はオープンクラス参加のため、順位はつきません
ラリー初体験のレースクイーンがクルマを壊さず無事完走!【後編】
雨の中、走り切った2人

 こうしてほっしー先生のラリーチャレンジは終了しました。オープンクラスなので、順位はありません。でも楽しそうな笑顔は誰よりも輝いていました。


ラリー初体験のレースクイーンがクルマを壊さず無事完走!【後編】
午後のスタートを待つGRヤリスRS

 初心者講習もありますし、何より運営スタッフの誰もが優しい印象を受けたTGRラリーチャレンジ。ラリーは敷居が高いスポーツに思えますが、そんなことは決してないといえるでしょう。86やヤリスに乗っていらっしゃる方、ぜひ挑戦してみては?


ラリー初体験のレースクイーンがクルマを壊さず無事完走!【後編】
濃霧の中、SSをアタックするGRヤリスRS(撮影:真壁強)

 そして最後に、このGRヤリスRS。現在、現車の次のオーナーを探しています……だったのですが、状況が変わって松井監督はやっぱり手放さずにウェルパイン・モータースポーツのデモカーとして手元に置いておくようです(笑)。これでラリーデビューしたい初心者も安心ですね!


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