今回は写真の隅にすらロードスターは出てまいりません。なぜなら車検整備に出したから。
あと2年は乗るぞ! おー!
3年前に新車を買った情報2021、私は四本淑三です。今回の話題の中心と致しますのは、ガソリンバーナー。コンパクトながら強い火力を持った、新富士バーナー「SOTO SOD-371 MUKAストープ」であります。

燃料はホワイトガソリンとレギュラーガソリン。製品名の「MUKA」の由来は、そうした液体燃料を「霧化」して燃やすから。ガスバーナーのような圧電着火装置はありませんから、別途チャッカマンのようなものが必要です。
つまり霧化したガソリンに、着火するわけですから、これぞまさしく、

ムカ着火ファイヤーーーーーー!!!!!!

何故アウトドア業界でそう呼ばれていないのか、私は不思議でなりません。これはもうツインバスのオケを背負った寺田恵子様に叫んでいただきたいくらいのものでありまして、ムカに着火するたび、私の脳内では、このような雄叫びがこだましているのであります。
最大火力は4000kcal。並みの家庭用ガスコンロを超える大火力。普段私が愛用している岩谷さんのマイクロキャンプストーブの倍。そんな火力を一体どこで使うのか。
バーナーを買い過ぎてしまった男
すべては前回から始まりました「アウトドアで手打ちそば」シリーズ(そう、シリーズです)のため。手打ちそばをゆでるには、大きな鍋、大量の湯、そば投入から瞬時に再沸騰させる強い火力が必要なのであります。

前回は弱い火力で済むよう、小分けでゆでる「わんこそば方式」を試しました。これはひとまずの成功を収めたものの、なんだかせわしない。では一人前のそば150gを、なるべく小分けにせずゆでられるバーナーはないのか。

そんな考えを巡らせているうちにバーナーは増えに増えて計8個。まだ増えそうな勢いですが、そのうちの一個がムカであります。

本体価格は1万7050円。必須となるガソリンボトルは別売り。私は一番小さい実容量280mlの「SOD-700-04」2640円を購入しまして、あわせて2万円ほどの出費に。旨いそばが食えると思えば安いもんだ。
無論、火力だけを取り上げれば、ムカを上回るガスバーナーもいくつかございます。ですがムカの良さは、やはり燃料がガソリンであること。
ガスは低温に弱い
CB(カセットボンベ)缶やOD(アウトドア)缶には液化したガスが入っていますが、沸点を下回ると気化しません。おまけに燃焼のため気化させると、気化熱で液化ガス自身の温度がグッと落ちて、気化を妨げるから困ったものです。

CB缶、OD缶に使われるガスは、ノルマルブタン、イソブタン、プロパンの3種類。沸点はそれぞれマイナス0.5℃、マイナス11.7℃、マイナス42.1℃。
このうち氷点下でも安定して使えるのは、先に述べた事情でプロパンだけ。3本298円で売られているノルマルブタン100%のCB缶は、気温が10℃を下回るともういけません。
だったら全部プロパンにすればいいじゃないかと思うのですが、プロパンは蒸気圧が高いので薄っぺらなスチール缶では持たない。そこで低温対応のガス缶は、3種のガスを混合することで、想定する温度帯への対応をはかっているのであります。
私が入手した中で、もっとも低温に強そうなのはEPIgas(イーピーアイガス)の「EXPEDITION」。これでマイナス20℃まで対応できるとメーカーは言っております。冬山に登るならこれしかないというものですが、内容量190gで実売553円。安いCB缶は250gで100円しませんから、まあ高い。
ですがこのEPIgasの製品、メーカーがSNSで明かしたところによれば、成分はイソブタンとプロパンで混合比率は6:4とのこと。国内で入手できる最もプロパン比率の高いOD缶です。それでもイソブタンの沸点を下回ると、気化するのはプロパンだけ。イソブタンは燃えずに残ってしまうのであります。
そこで最近はOD缶を倒立させ、気化させず液化した状態でバーナーまで送る「液出し」タイプのバーナーもあります。つまりガス缶を液体燃料と見做しているわけですが、だったら最初から液体燃料でいいのでは。
ガソリンは安くて入手性が良い
なにしろガソリンはマイナス40℃でも燃えます。気化熱の影響は問題にならず、蒸気圧も低いですから薄っぺらなスチール缶でも保管できます。そして安い。
レギュラーガソリンは原油価格の高騰と政府の無策といるだけムダな野党のおかげでバカ高く、さっさとガソリン税どうにかせいやコラ!トリガー条項どうしたんやワレ!元売りに補助金突っ込んでどないすんじゃボケ!
という感じですが、それでもガス缶に比べたらまだ安い。

ちなみに私は煤の出るレギュラーガソリンはメンテが面倒なので、普段は1L1000円もするホワイトガソリンを使うことにしました。それでもプロパンを目一杯充填したOD缶より安い。
もひとつガソリンの優位性は、国を問わずどこでも買えること。
だから長旅をする人、海外へ出掛ける人には、燃料が現地調達できるガソリンバーナーの人気が高い。バイクのツーリングにも、リザーブにもなるし、荷物も減らせるのでガソリンバーナーは合理的です。
このようにメリットはたくさんあるのにガソリンバーナーは一般には流行りません。
ガソリンは怖いし儀式がややこしい
まず扱いを誤ると炎上します。
それで危険なのはガスも同じですが、爆発的な事故に直結するガスに対し、ガソリンの事故はスマホで収められる程度の速度で進行します。おかげで炎上動画としてかえって世間に広まりがち。
扱いを誤る理由は、着火から消火までの儀式が多いこと。
最初の儀式は燃料の調達から。ホワイトガソリンならホームセンターやアウトドア専門店で買えば済みますが、レギュラーガソリンを買うには、まず携行缶が必要です。法規上、ガスバーナーのボトルには直接入れてもらえません。また携行缶にはセルフで給油できません。

こうして買ってきたガソリンを燃料ボトルに移したら、ポンピングが必要です。ガスのように勝手に気化しませんから、タンクに与圧するわけです。

このポンピングが疲れる。シュコシュコと60回、70回、80回。山を登って疲れて補給という場面だったら、あ、もういい、次からガスにするわ。そう思うこともあるでしょう。
プレヒートとはなんじゃらほい

与圧で押し出されたガソリンは、この「ジェネレーター」と呼ばれる真鍮のパイプを通ります。ここを温める儀式を「プレヒート」と呼びます。そうすることでガソリンを気化させるわけです。
伝統的なガソリンバーナーは、炎口の下に皿のようなものがあり、そこにガソリンをたらして燃やします。
ムカは「プレヒート不要」をうたっていますが、バーナーに燃料をたらす儀式がないだけで、温めるべきジェネレーターは存在し、実際にはプレヒートに相当するステップも存在します。

着火直後はガソリンがオレンジの火柱となって炎上します。

そして各部が温まると、吸気口から吸い込んだ空気で混合気となり、青い炎として安定した燃焼が始まります。
カッコ良いムカの操作系

こうした着火、プレヒート、火力調整、消火に至るまでのプロセスを、燃料ボトル側のダイヤルひとつで操作します。回転するだけでなく、押して停止、引いて稼働という、上下の操作も受け付けます。
ローレット加工された金属製のダイヤルはカメラの操作系のようで、一連の動作が集約されていてカッコいい。裏返せば、ここに表現されている操作の意味を理解していないと使ってはいけないものでもあります。

まずダイヤルを押し込んだ状態で「Stop」にあることを確認。ここからポンピングを開始。内圧が上がってくるとインジケーターが押し出されて、赤いラインが見えてきます。

ダイアルを引き上げ「Start」に回すと、霧化したガソリンがバーナーヘッドから「シュー」と音を立てて出てくる。これに着火してプレヒートが済んだらダイヤルを「Run」に送ります。この時、プレヒートで大量の空気を消費しタンクの内圧が落ちているので、再びポンピング。そして火力を調整します。
消火は「Air」まで送ります。これはボトル内の空気だけを送るモードです。これでパイプに残ったガソリンを燃やし尽し、火が消えたら「Stop」へ送ってダイアルを押し下げておしまい。
着火から消火までちょうど一回転という、輪廻のようなインターフェイス。そしてダイヤルがどのモードにあっても、ダイヤルを押し下げると燃料の供給が止まって消火します。
分かりやすいとは思うのですが、これもステップを飛ばしてしまうと台無し。たとえばダイアルが上がった状態でRunに入れると、液体のままの燃料が吸気口から流れ出てしまい、そこに着火すると炎上です。
まず説明書をよく読んで、慌てずに使いましょう。
最後に偏愛は勝つ
そしてガソリンバーナーには定期的なメンテナンスが必要です。
ポンピング用シリンダーパッキンへのシリコングリス塗布。使っているうちに煤けてくるバーナーヘッドの清掃。使用した燃料が20Lを超えたら、ジェネレーターの交換。可動式ホースジョイントには燃料漏れのリスクもある。
旧いクルマと同じやんけ!
そう思える人にはたまらん道具です。燃焼プロセスがキャブの働きを連想させるあたりも、実にクルマっぽい。もし世界が原子力と再エネに支配されたとしても、温存しておいた液体燃料とガソリンバーナーで、かつて地上に存在した内燃機関への愛を確かめられるかも知れません。
では今回のまとめです。

ムカ!

着火!

ファイヤー!
ごきげんよう!
そばの話はまた!