2018年7月の発売から3年が経つのに、いまだ納期1年ともいわれているスズキの軽自動車「ジムニー」と、その普通車モデルである「ジムニーシエラ」。納期遅延の理由は、唯一無二の存在であること、そして何より高評価を得ているからにほかなりません。
ジムニーとジムニーシエラ
ジムニーが誕生したのは1970年のこと。軽自動車初の本格四輪オフローダーとして産声をあげました。軽量な車体にラダーフレーム、パートタイム4WD、リジッドアクスル式サスペンションといった本格装備を備えることで、純粋な悪路の踏破性能ではトップクラスの性能を獲得。それゆえ単なる趣味のクルマ、レジャービーグルだけでなく、過酷な地域でのパトロールカーや郵便集配車としても活躍しています。45年という長い歴史を有しながら、モデルチェンジはわずか3回とモデルライフが長いのも特徴です。



続いて、ジムニーと今回ご紹介するジムニーシエラの違いから。簡単に言えば「ジムニーは軽自動車、ジムニーシエラは普通車」、つまりエンジンと全長と全幅が異なります。外観上の違いとして、オーバーフェンダーの存在。これはスズキの四輪駆動車としては初めて4サイクルエンジンを搭載したジムニー8(1997年)からの伝統。ちなみにジムニーシエラという名前は1993年からで、シエラはオーストラリア向けのジムニーにつけられていた名前を、サブブランド名にしたとのことです。


エンジンはK15B型と呼ばれる1460cc 水冷4サイクル直列4気筒DOHC。










どこかジープを彷彿させるエクステリアに、ゆみちぃ部長はツボをグリグリと押された様子。「いいですね。カッコイイですし、ちょっと愛嬌がありますね」とニコニコです。横を見ると「2枚ドアなんですね。後席に乗る時は前列を倒さないといけないのかな」とチェックしていきます。
荷室はそんなに広くない
フルフラットは可能だが車中泊は厳しい






気になる荷室ですが、後席の背もたれを立てた状態では、正直言ってかなり狭いという印象。背もたれを倒すと350リットルほどのフルフラットな空間が得られます。ちなみに350リットルは、トヨタの「ヤリスクロス」やHondaの「VEZEL」より少し広い程度、日産「キックス e-POWER」とほぼ同等といったところ。フルフラットなので車中泊できそうと思いきや、この状態では無理。
ラゲッジスペースで注目すべき点はアクセサリーソケットを用意していること。キャンプに行く際、家庭用コンセントが使えるタイプの充電式電源を用意する方は多いかと思います。その際、運転席側から延々と充電ケーブルを伸ばさなくて済むのはうれしいところです。




4人乗りのジムニーシエラ。さっそく後席をチェックしてみましょう。ですが小柄なゆみちぃ部長をもってしても「ちょっと狭いですね」とのこと。前席を普通に座った状態で、4座のスポーツカーのように助手席の背もたれが後席シートにピタリとくっつく状況とまではいかないものの、男性が普通に座るのはちょっと困難。前席を相当前にもっていけば足元は快適なのですが、それは現実的ではないでしょう。乗降も含めて乗用するには難しいように感じました。


室内は質実剛健そのもの。いわゆる高級感というものとは縁遠いのですが、逆にそれが好印象。
















運転席も基本的には必要なものしかないという割り切りっぷり。昨年9月に一部仕様変更をしたのですが、その内容は「スズキセーフティーサポート」装着車のみに装備していたオートライトシステムを、非装着車にも採用したほか、4段AT車に停車時アイドリングストップシステムを装備したということのみ。

運転席に座ったゆみちぃ部長は「視界は高めで広い感じがします」ということで、運転しやすそうという印象を抱いた様子。一方、サイドブレーキがレバー式なので、電子サイドに慣れた身にはちょっと辛いかも。
背の高さと軽さゆえ横風に弱いが
世界観にハマったら抜け出せない

海沿いの一般道で、風が強い道中で試乗したところ、車体の軽さと重心の高さと相まって、ちょっと怖い思いをしたゆみちぃ部長。「うわっ、わわっ」と思わず声が漏れてしまいます。その中でも頑張りました。「エンジンは滑らかですけれど、音は大きめですかね。あと結構踏まないと加速しない感じがします」というわけで、ちょっとアンダーパワーを訴えるゆみちぃ部長。

「足はちょっと硬いかなぁ。速度を上げるとイイ感じですが、街乗りでは結構ゆっさゆっさとボディーが揺れる感じがします」ということで、ラダーフレーム特有の乗り心地が支配的。その中で高速走行にも対応できるというあたりは、恐らくヨーロッパにも輸出しているクルマゆえなのかも。とりあえず乗り心地を期待するなら、ほかのクルマを選んだ方がよいかもしれません。

「でも、なんか憎めないというんですかね。これはコレでイイと思っちゃうんですよね。内装だって他のクルマの方が使い勝手がいいですし高級感があります。

「でも納期1年とかかかるんですよね? 欲しいと思った時に手に入らないのはちょっと嫌ですね。そういう性分というのもありますけれど、趣味性が高いですから、なおさらそう感じちゃいます」。スズキ側も生産計画を見直すなど対応していますが、それでも人気が高い上に半導体不足などもあって、生産は追い付かないようです。

長期にわたり納期待ちの状態が続いているというのは、それだけ一般にも認知され、理解されてきたということ。ゆみちぃ部長も、触れてみて「待たなければいいかも」と心が動いたように、触れたらコレはコレでアリかも、と思ってしまう魅力に溢れているのです。日本語には昔からいい言葉があるじゃないですか。「果報は寝て待て」と。ラーメンだって並んで食べた方が美味しいじゃないですか。待つのもまた楽しみなんですよと、S660で9ヵ月納車待ちをした経験のある部員Kは思ったのでした。

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寺坂ユミ(てらさかゆみ)プロフィール

1月29日愛知県名古屋市生まれ。