11月12~13日の2日間、2022年D1グランプリシリーズの第8戦と最終戦が福島県・エビスサーキット西コースで開催されました。
ついに2022年の最終戦!
舞台は新しくなった福島・エビスサーキット





戦いの舞台は、エビスサーキット西コースの山側「バンクコース」。令和3年2月13日に発生した「福島県沖地震」で大規模な土砂崩れをした西コースを、義援金・寄付金で修復。さらに土砂崩れした箇所にバンクを新設しました。コースは正周りで、バックストレッチからスタート。バンクに向かって上り坂基調で、ドリフトしながら駆け上がります。そしてバンクの頂点を通過すると一転、下り勾配。ヘアピンの先でゴールするというもの。
本来のコースとバンク部分では路面の舗装が違うほか、バンクの頂点にゾーン設定があるため、そこに寄せることに多くの選手が難儀。

Team TOYO TIRES Driftの#66 藤野選手によると「(ドリフトしながらバンクまでの坂を登るには)パワーが足りない。先が見えない状態でコンクリートの壁に突っ込んでいくような感覚」とのこと。

一方、チームメイトで#88の川畑選手は、水曜日からマイカーを持ち込んで練習。「だんだん楽しくなってきました」と、バンクについては好印象。藤野選手も「慣れてきたら楽しいかな」と笑顔を見せました。
第7戦終了時点でのシリーズランキングに目を向けると、トップは#70横井選手(D-MAX)に川畑選手と#99中村直樹選手(TMAR × TEAM紫)が追いかける展開。いずれもチャンピオン経験者です。



横井選手と川畑選手のポイント差はわずか4点で、川畑選手に大きな期待とプレッシャーがのしかかります。さらに川畑選手は単走シリーズチャンピオンがかかっており、かなりピリピリムード。藤野選手もチームシリーズランキングに貢献するという点で、声をかけづらい空気が漂っていました。


【第8戦単走】川畑選手3位、藤野選手も5位で上位通過!
秋晴れのエビスサーキット。山々は赤く色づき始めていました。

川畑選手はグループAからの出走。1本目、140.92km/hと高い速度で最初のコーナーをいい角度で侵入すると、一気に切り返してバンクを駆け上がります。ですが勢い余ってウォールギリギリのラインを通ってしまい、コースアウト減点。結果94.3に終わります。


後がなくなった2本目。今度は132.26km/hと少し速度を落としての確実な走りに変更。バンクを上手くコントロールし、97.8とAグループトップの点数をたたき出します。

藤野選手はCグループから。1本目、134.74km/hからアタック。やや置きにいった走りで、97.6と川畑選手に続いて全体2番目をマーク。


続く2本目。
【第8戦追走】藤野選手準優勝!
川畑選手は、まさかのベスト16敗退

川畑選手のベスト16戦は横井選手のチームメイトで単走11位の#46末永正雄選手。

川畑選手先行の1本目、単走と同様のダイナミックな走りで逃げますが、それに対してピタリと追いつく末永選手。川畑選手96点に対して、末永選手は98点に後追いポイント9.5の107.5と大量リードを築きます。

追い込まれた川畑選手。後追いで末永選手以上に近い走りをみせます。明らかに後追いポイントで稼ぐという作戦です。ですが、バンクの入り口で末永選手のリアバンパーと接触。末永選手のバンパーは外れてしまうのですが、そのまま追撃の手は緩めず。

藤野選手のベスト16戦の対戦相手は新人の#98ヴィトー博貴(TEAM紫 TOPTUL × VALINO TIRE)選手です。

藤野選手先行1本目、逃げる藤野選手に対してヴィトー選手はバンクの出口でミス。そして追いつくことができず。藤野選手97点の走りに対して、ヴィトー選手は91点に後追いポイント0.5、そしてミスの減点10で81点に。

大量リードで迎えた藤野選手後追いの2本目。藤野選手は終始様子をみる走り。ヴィトー選手は96点の走りにゾーン減点3の93点に対し、藤野選手は96点の走りに後追いポイント1の97点で勝利。

ベスト8戦に進出した藤野選手の対戦相手は、TEAM MORIの#52北岡選手。藤野選手後追いの1本目、イイ走りを見せる北岡選手に対して、終始ピタリと寄せる藤野選手。

入れ替えての2本目。藤野選手はさきほどと同じ97点の走り。藤野選手以上に寄せる北岡選手ですが戻りがあって94点に後追いポイント9.5。藤野選手、ベスト4へ進出です。

準決勝の対戦相手は、この日の単走1位であるTMARの#87齋藤太吾選手。藤野選手後追いの1本目、圧倒的な速さで逃げる斎藤選手のGRスープラに対し、寄せきれない藤野選手。ですが斎藤選手の点数は低く95。藤野選手は96点に後追いポイント4.5。

入れ替えての2本目。斎藤選手は1コーナーから脅威の寄せをみせます。藤野選手はバンクから先で一気に逃げに出て斎藤選手を寄せ付けず。

決勝の相手は、ベスト16で川畑選手を破った末永正雄選手。決勝1本目は藤野選手先行。逃げる藤野選手に対し、波に乗る末永選手は一定距離で同じラインを通ります。藤野選手97点に対して、末永選手も97点の走りに後追いポイント3点。

入れ替えての2本目。末永選手はゾーンを外すミスをしながら逃げ、藤野選手は終始追い回す展開。末永選手98点の走りにゾーン減点2、藤野選手は95点の走りに後追いポイント4.5。結果、同点となり今シーズン初の決勝再戦となりました。

再走の1本目、先行する藤野選手に対して、今度は常に近い位置にいる末永選手。藤野選手97点に対して、末永選手97点に後追いポイント7.5。

入れ替えての2本目。さらに近い位置で攻め立てる藤野選手。末永選手98点にゾーン減点2、藤野選手95点に後追いポイント7.5。結果、1ポイント差で末永正雄選手が5年ぶりの勝利。藤野選手は破れ2位となりました。




【最終戦単走】川畑選手2位で単走シリーズチャンピオン獲得
藤野選手8位で追走進出
翌日に行なわれた最終戦。秋晴れの温かさから一転、朝から身震いするほどの冷えこんだ強い風が会場に吹きます。天気予報によると午後3時頃から雨の予報ということもあってか、西の空には低い雲の姿が見え隠れし、路面温度は上がらず。その中、藤野選手はAグループ、川畑選手はCグループからの出走となりました。そのCグループには、チャンピオンシップ争いをしている横井選手がいて、ポイント差は10点。

まずは藤野選手の1本目。130.78km/hからの侵入でしたが、いまいち決まらず、そのままバンクに挑むもゾーン2不通過。結果、93.2で失敗。

後がなくなった2本目。車速を137.23km/hにあげ最初のゾーン1をギリギリのラインで通過。バンク頂点のゾーン2をアウトの壁ギリギリのラインで駆け抜けて、点数を稼ぎ97.4を記録。追走進出圏内に入れます。


単走シリーズチャンピオンがかかった川畑選手の1本目。前走で横井選手が失敗しているためか、プレッシャーをかけるべく思いっきり攻めた走りをみせます。ゾーン1は最高の状態で入ったのですが、バンクのゾーン2でアウトに膨らみリアバンパーを壁にヒットさせて失敗。


後がなくなった2本目。1本目同様の侵入速度137.41㎞/hでゾーン1を綺麗に通過。そのままバンクを駆け上がると、再び壁ギリギリでゾーン2を抜けて一気にフィニッシュラインへ。得点も高く98.7で、横井選手を上回りました。
結果、川畑選手は2位、藤野選手は8位で追走トーナメント進出が決定。あわせて川畑選手の単走シリーズチャンピオンが決定しました。
【最終戦追走】川畑選手6位、藤野選手11位でチャンピオン獲得ならず
大会は途中で終了


チャンピオン争いがかかった午後。ベスト16での藤野選手の対戦相手は横井選手、そして川畑選手は#51岩井 照宜選手です。

藤野選手と横井選手の1本目。「川畑君のサポートをするという意識よりも、ドリフトを楽しみますよ」と言って出ていった藤野選手先行の1本目。綺麗な走りの藤野選手に対して、安心して飛び込んでいく横井選手といった様子。藤野選手97点に対して、横井選手96、後追いポイント5.5。その差4.5ですから十分ひっくりかえせる差です。

藤野選手後追いの2本目。危なさを感じるほどの近い距離を詰める藤野選手。ですが、バンクの出口でアンダーステアが。横井選手98点の走りに、藤野選手97点の走りに後追いポイント7。ですがドリフトの戻りの減点5が引かれて99点。逆転ならずで11位で大会を終えました。

自力で上がっていくしかない川畑選手。川畑選手先行1本目。ゾーン1でコースアウトしてしまうものの、圧倒的な速度で岩井選手を思いっきり引き離します。川畑選手97点の走りにコースアウト減点2の95点。岩井選手は88点の走りに、追走になっていないという2点減点の86点。

入れ替えての2本目。岩井選手と少し距離を離しての走りで安全策。そして岩井選手はバンクの出口でいきなりスピン。真後ろにいた川畑選手は難なく避けて、川畑選手のベスト8進出が決定。

川畑選手ベスト8戦の対戦相手はヴィトー博貴選手。先に横井選手がベスト4進出を決めているだけに、ここは勝ち上がりたいところです。川畑選手先行の1本目、バンクの出口で川畑選手がミス。それが後追いのヴィトー選手の走路妨害という判定となり、川畑選手58点に減点20の38点。ヴィトー選手56点に後追いポイント3点の59点。大きな差がついてしまいました。

川畑選手後追いの2本目。最後まで諦めず、終始ポイントを稼いでいきます。ですが、ヴィトー選手に大きなミスはなく。ヴィトー選手97点の走りに、川畑選手95点nに後追いポイント9。21点差をひっくるかえすことはできず、川畑選手の6位が決定。この瞬間、横井選手のシリーズチャンピオンが決まりました。

大会はその後、ベスト4戦の第1試合で、クラッシュしたクルマの部品が客席に入り込み、その部品で観客の1人が怪我をしたため、安全な大会運営ができないことを理由として中止に。単走順位から末永選手の2連勝で幕を閉じました。
【年間ランキング】川畑選手2位、藤野選手6位。チームは2位


大会はその後、年間表彰へ。川畑選手は単走チャンピオンとドライバーズランキング2位を獲得。昨年からランキングの順位を大きく上げました。

藤野選手は、単走ランキング5位、シリーズランキング6位を獲得しました。

チームランキングは2位。ニューマシンでありながら堂々たる成績といえるでしょう。振り返ってみると、第2戦・第3戦の奥伊吹大会での低迷が大きかったように思いますが、シーズン中盤から新タイヤR888RDを投入するなど、対策がとられて復調していきました。来年は同じマシンで戦う予定ですので、さらなる期待がもてそうです。
ドライバー2人が今年を振り返る
大会終了後、両選手に話を伺いました。

川畑選手「チャンピオンシップ争いをしていることもあって事前にマイカーを持ってきて走らせていたんですけれど、練習走行をかなり走れたので、それがよかったですね。初めてのサーキットレイアウトでセットアップは迷うかなと思ったんですけれど、そこの迷いはあまりなかったですね。クルマの方は仕上がっている感じがあったので、あとはレイアウトに合わせて運転するだけで、そこまで苦労はしなかったですね」
「最終戦は、練習から全然調子がよかったので、1位を狙いに行ったんですけれど、ちょっとやりすぎてしまい失敗して。2本目でちょっと無難に走る形になったのですが、それでもプレッシャーの中で走りきれたのが良かったかなと思います。シリーズ単走チャンピオンが取れたので、そういった部分のメンタルの強さと、GR86の素性のよさがみせれたのかなと思います。追走は、気負っていたというか、もうちょっと力んじゃったんでしょうね。スピードが速かったというよりかは、クルマを上手く向きを変えるのがちょっと遅かったかなという失敗で流されてしまいました」
「シーズンを通して2勝していたらチャンピオンを取る確率はすごく上がるんですけれど、取りこぼしが多かったかなと。ベスト16でのミスが大きかったなぁという感じですね。今年はドリフトをいっぱい楽しみたいというのがありました。その中でチャンピオン争いという緊張感を最後に味わえたし、D1をしたなぁという感じでした」

藤野選手「バンクは走ってくるうちに楽しくなってきました。最初はやっぱり初めてなので、どう走っていったらいいかわからないじゃないですか。楽しみではあったんですけれど、思ったより登れないというのがありましたね。あとは壁が近い。思いっきりいって、本当に止まるの? みたいな感じでいく。その辺はちょっと躊躇したところもあったので。でも慣れてくるとちょっと楽しかったです」
「今日は逆に、自分がシリーズに絡んでなかったのですが、でも横井君は絡んでいて。向こうは向こうなりのプレッシャーがあるとは思いますし、こっちはなかったので、逆に楽しんでやるつもりだったんですけれど、失敗しましたね。どうしてもバンクを上がって戻ってくると、自分は内側になるので、その辺のクルマの位置関係を合わせてあげないといけないのです」
「GR86というクルマそのものは、すごくいいクルマですし、本当に少しづつ煮詰まってきているので、クルマの戦闘力はあると思います。あとは自分の歯車とクルマの歯車がかみ合えば、ですね。今シーズンは自分の中で、いい結果ではなかったんですけれど、来年はもっといい走りを見せられていけるように、皆様にお返しできるようにしたいです」
【大会の様子】Team TOYO TIRES Drift GALSの2人が卒業


3年間、Team TOYO TIRES Driftを盛り上げていたレースクイーンの名コンビ、安西さんと山本さんが卒業を発表しました。癒し系の山本さんと、しっかり者の安西さんという対照的なお二方で、チームはもちろん、YouTubeの中継も盛り上げてきました。


そんなお2人がオススメするTeam TOYO TIRES DriftグッズはNEW ERAのニットキャップ。寒い日にちょっと被る時にちょうどよいですね。

今大会ではピットウォークはなかったものの、グリッドウォークを実施。ですが会場がバンク路面だったこともあり、選手もお客様も立つだけで結構大変な様子でした。ファン対応の時間が長いのもD1の魅力。今年後半からトレーディングカードを配布が始まり、選手の前には長蛇の列ができました。
【来シーズン暫定カレンダー発表】全10戦開催
待望の「お台場」が復活!
大会終了後、2023年の暫定スケジュールが発表されました。
RD.1&2 5月13~14日奥伊吹モーターパーク(滋賀県)RD.3&4 6月24~25日筑波サーキット(予定、茨城県)RD.5&6 8月26~27日エビスサーキット(福島県)RD.7&8 10月28~29日オートポリス(大分県)RD.9&10 11月11~12日お台場 NOP地区(東京都)
待望のお台場が復活する予定! 都内で唯一のモータースポーツイベントになりますので、ぜひチェックしてください! そのほか、2回のエキシビジョン大会も開催が決定しています。
Kick Off Drift 1月14~15日幕張メッセ(千葉県)RD.0 D1 Festival 4月23日富士スピードウェイ(静岡県)
こちらは、東京オートサロンとモーターファンフェスタのイベント中に実施する予定とのこと。生のドリフトをぜひ体験してください!

今年ニューマシンを投入したTeam TOYO TIRES Drift。シーズン中盤では低迷する時もありましたが、マシンの熟成も進み、シーズン後半では上位の成績を納めるようになりました。チームはすでにチャンピオン奪還に向けて動き出している様子。来年もTeam TOYO TIRES Driftから目が離せそうにありません!

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