突然ですが、オープンカーは人生を豊かにしてくれます。一度乗れば「こんなにもクルマは楽しいものなのか」と思うこと間違いナシ。
4人乗れてオープンにもなる贅沢感
「BMW M440i xDrive カブリオレ」
カーライフを豊かにするオープンカーですが、残念ながら日本では不人気のジャンル。国産車はマツダ・ロードスターとダイハツ・コペンとその派生車種、そしてレクサスのLC500コンバーチブルのみです。そのうち4人で乗れるのはレクサスのみで、お値段は1500万円~。

となると輸入車に目を向けるわけですが、最もお安いモデルはFIAT 500 TwinAir ドルチェヴィータ(325万円)。ただ、このモデルは振動が……。

次に目がいくのはMINI。こちらは389万円から始まりますが、より余裕のあるエンジンを、という話になるとCOOPER S(453万円)が現実的な選択肢となりそう。
オープンカー不人気の理由をASCII.jpに出演したことのある女性に尋ねたところ「髪が乱れる・日焼けする」(20代・女性)、「目立つ。チャラい」(20代・女性)というほかに「クルマとしての実用性が乏しい」(20代・女性)という話があがります。そこでMINIとFIAT500に話を戻すと、いずれも荷室が恐ろしく狭い。ついでに言えば後席も狭いのです。

そこで「4人乗れて荷物が乗るクルマは?」と探した結果が、今回のBMW M440i xDrive カブリオレというわけです。広報車の都合で最上位グレードの1000万円コースになってしまいましたが……。
最初見た時に衝撃を受けたフロントマスク(バーチカルキドニーグリル)のM440i xDrive CoupeをASCII.jpでご紹介したのは昨年5月のこと(これぞクーペのお手本「BMW M440i」は一騎当千の実力!)。さすがに見慣れてきたといいますか、「コレはコレでカッコイイ」とさえ思うようになりました。

この4シリーズカブリオレのラインアップは主に3種類。FRレイアウトで最高出力184PSの2リットル直列4気筒DOHCターボを心臓部に持つ「420i Cabriolet」と、インテリアやエクステリアなどに手を加えた「420i M Sports Cabriolet」。そしてAWDで最高出力387馬力の3リットル直6DOHCターボエンジンを搭載した「M440i xDrive Cabriolet」。420iとM440iの価格差はざっくり500万円です。





オープンカーだからって
荷物が載らないわけじゃない!
では実用面でチェックしていきましょう。まずは女子が気になるラゲッジから。幌の都合、リアのラゲッジドアは小さく入れづらいのですが、幌を上げていれば荷室容量はM440i xDrive クーペとあまり変わりありません。



機能面では左側面に工具、右側面に12Vアクセサリーソケットが用意されています。



幌を収納する場合は、幌収納用のボックス(ラゲッジルームセパレーター)を下げて、あらかじめある程度のスペースを設ける必要があります。幌収納用のボックスは布製で、中にパイプが通っている構造。ボックスを下げた状態で無理やり荷物を入れると壊れる可能性がありますので注意が必要です。高さとしては、一般的なスーツケースを寝かせて入れることが可能です。奥行きがありますので2つは入るでしょう。
風の巻き込みを防ぐか
実用性を取るかが悩みどころ







「幌を開けると風が巻き込んで、髪の毛がボサボサに……」を防ぐウィンドディフューザーがオプションで用意されています。お値段は4万8000円。取り付けそのものは比較的簡単なのですが、取り付けると後席に着座することは不可能になります。試しに付けた状態とつけない状態で高速道路を走行したところ、車内の音が大きく変わることがわかりました。その一方で「コレをラゲッジに置くと、結構場所を取るし、後席座れなくなる」というジレンマに。




後席はコンパクトカー程度の足元の広さは得られています。これはM440iクーペも同じで、オープンモデルだからといって狭くなっているということはありません。





ルーフの開閉はもちろん電動。30秒くらいで開閉は完了します。これはほかのクルマと同様。ただ、収納時の美しさはさすがBMWといったところ。


オープンカーというと、屋根が幌だから炎天下ではエアコンが効きづらい、走行ノイズが車内に盛大に入るのでは? と思われることでしょう。M440iに関して言えば、そのようなことはありませんでした。というのも幌がとても肉厚だから。ですので、閉めればノーマルのM440iとそれほど変わらない快適性が得られます。
オープンカーだけど車中泊できる! そうBMWならね

さて、2座オープンカーにできなくて4座オープンカーにできること。それは車中泊です。2座オープンカーでも寝られることは寝られるのですが、背もたれを完全に倒した方が寝やすいのは誰が考えても明らかです。

ですが、ここからが問題です。いざ寝ようとエンジンをオフにして、クルマの中からロックをかけても、室内のイルミネーションやナビ画面、メーター画面が消えないのです。これはBMWなりの親切機能なのですが「このまま電気がついた状態で寝たら、朝にはバッテリーが上がってしまう」と心配になります。「これはどうやったら消えるんだろう?」と考えても、消える気配がありません。

心配になりながら待つこと約5分後。まずナビやメーター関連が消灯します。ですがイルミネーションは消えません。室内はちょっと怪しい雰囲気に。

それから約3分後にイルミネーションが消灯。完全に暗くなりました。

もちろんドアを開けるとすべてがやり直しになります。ちなみに寝心地はBMWということで快適。シート幅が広いこともあってか、翌朝、体がバキバキになることはありませんでした。


一夜明けて、窓は結露で真っ白に。車中泊した場所は山の中で、夏なのに肌寒さを覚えるほど。さらに雨が降るという結露にとって好都合の状況。ですが結露するということは、車内の断熱効果が高いことの証左ということで、内気循環での冷房+デフロスターをガン回しして取り除きました。
性能をひけらかさないが
走りの良さがにじみ出ている

M440iはBMWの至宝、シルキーシックス(直6エンジン)を搭載しています。言うまでもなく素晴らしいわけで、それは以前試乗した時にも感じたこと。ですがオープンカーというフォーマットに載せることで、さらに感動的な自動車体験へと誘います。

シルキーシックスの息吹を感じながら山道をまったりと登坂すると「このクルマ、ホントに素晴らしいな」と感動しきり。シルキーシックスは、400PSをひけらかす走りではなく、こうした走りにこそふさわしいのではと思った次第。クーペは積極的にスポーツモードにして楽しむことを正義であると思っていたのですが、カブリオレではスタンダードこそベストだと感じた次第。


運転していて感じるのは、視界の広さです。近年の日本車で見かけるルームミラーとナビの間が狭くないということが、これほどまでに運転を気持ちよくさせるとは! ルームミラーついでにいえば、幌を閉じた状態の視界も普通車並みで不満はありませんでした。


気になる燃費ですが、高速道路でリッター15kmを上回りました。街乗りでは7km前後といったところ。ガソリンはもちろんハイオクです。3リットル直6ターボというパッケージからは想像できる燃費でしょう。すこぶる良いわけではありませんが、悪いわけでもないのです。

高速道路でいえば、運転支援も優秀。イマドキ当たり前の機能ではありますが、それでもメーカーによって完成度にバラツキはあります。その中においてBMWは輸入車ではかなり進んでいる印象です。渋滞時のハンズオフにも対応しているようなのですが、残念なことに渋滞に遭遇することがなく試せませんでした。ですが、過去3シリーズで試したことがあり、これはスゴいと感心したことを覚えています。

もともとグランツーリングは、貴族が行く先々で教養を身につける大旅行という意だったとか。となると家族全員が土地の空気に触れながら快適に移動できるM440i カブリオレは、まさに現在のグランツーリングカーではないでしょうか。ルーフ付きのクーペモデル、M440i グランツーリングの存在を知りながらも、こちらこそグランツーリングの名に相応しい、そんな気がしました。
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