目標であるラリージャパン参戦&完走を達成!
ASCII.jp読者のみなさん! ついに! ラリージャパンを完走しましたー! 長い間、応援して下さったみなさん、本当にありがとうございました。改めまして、ウェルパインモータースポーツのコ・ドライバー、梅本まどかです。
2022年 FIA世界ラリー選手権 第13戦「フォーラムエイト・ラリージャパン2022」のRC4クラスに、プジョー・208R2で参戦し、無事完走できました! この連載も、ラリージャパン参戦までの密着レポートとして始まったワケですが、ついに目標達成できました。

しかも、完走に加えてRC4クラス3位ということで、ラリージャパンのトロフィーもいただいちゃいましたよ。同じクラスは3台だけだったので、完走すれば必ず3位表彰台以上だったのですけど(笑)。ちなみに総合順位は27位でした。
ラリージャパンは2022年11月10~13日、豊田スタジアムを拠点に愛知・岐阜で開催されました。ウェルパインモータースポーツのチーム体制は全日本ラリーと大きく変わることなく、松井悠監督、ドライバーは村田康介選手、コ・ドライバーは私、梅本まどかです。メカニックには早水雄一郎さんと和田裕憲さん、そして全日本ラリー群馬から仲間に加わった現役レースクイーンでもある荏崎(えざき)ろあちゃん。そして、このチームになくてはならない、華を添えてくれている桐嶋しずくちゃんに加え、今回はEXEDY Racing Girlsの瀬谷ひかるちゃんが来てくれました!




これまでも、ラリージャパン現地でも、ほかにも色んな方がいろいろ準備をして下さって、さらにスポンサーさんはじめ多くの方のご支援のおかげで走り切ることができました! 今回は初めて個人スポンサーさんを募ったので、ラリーカーのルーフには応募してくださった個人スポンサーさんの特典である「お名前ステッカー」もたくさん貼って走りましたよ!
無事に走り終えて強く感じた事は、「今までの経験があってホントに良かったな」ということです。初のWRC、さらにサービスパークの豊田スタジアムに1週間以上通うという長いラリーウィークだったので、ラリーが始まる前は正直少し緊張していました。プジョー・208R2も、テストがあまりできないタイトなスケジュールで、「どんな感じだろう?」というマシンへの不安もありました。
考えるだけ胃が痛くなりそうな要素が満載だったのですが、私の周りにはいつものチームメンバーと、頼りになるベテランドライバーの村田選手がいる。これだけで全然安心感が違うんですよね!

何かあったらメカニックさんたちになんでも相談できて、「じゃあ、こうしてみるよ! わかった、やってみるね!」って応えてくれて、サービスパークに戻るとしずくちゃんが笑顔で「お疲れ様です」って癒してくれて、監督がちょっとそわそわしながら「どうだった?」と近づいてくる。
開催期間が長いおかげで準備の時間があった
私はラリージャパンのプロモーションイベントとして開催された「セントラルラリー」に2019年・2021年と参戦していたので、今回のラリージャパンで使用したSSのうち4本は少し知っている道だったことも安心に繋がりました。見たことのある道とない道では、イメージしやすさが違います。

「この道は前回こんな感じでした」など伝えることができたり、レッキの時もコ・ドライバー目線でノートに書いておきたいポイントがスラスラ書けたり。どのリエゾンがどの時間帯に渋滞しやすいなど、地元愛知だからこそわかる情報もあって、そこは私の強みでもありました。監督から誕生日プレゼントでいただいたコ・ドライバーウォッチもだいぶ使い慣れてきて、このラリージャパンでも大活躍。ほんの少しラクできたり、安心できたり。そういう細かな5年間の経験が積み重なっていたからこそ、しっかりやるべきことに集中できて、難しい初WRCを完走できたのだと思います。
また、不安だった1週間以上のラリーウィークは思いのほかメリットもあって、長期間だからこそしっかり準備する時間が取れました。たとえば、セントラルラリーはレッキが1日で本番が2日間なので、1日あたりのレッキの負担が大きいのです。朝早くから休憩する間も、トイレに行く余裕もないくらい忙しいスケジュールで進んでいきます。

一方、ラリージャパンはレッキが3日で、本番4日分。朝は早いですが、1日あたり4本程度のSSなので、だいたい15時にはサービスパークに戻ってペースノートをチェックする時間が取れました。
世界戦になるとやることも増えて大変さもアップ!
とは言え、ラリージャパンがすべてラクで楽しいだけだったわけではなく、大変だったことももちろんありました。私にとって一番大変だったのは、公式通知がすべて英語で書かれていること。こういうところは、やはり世界戦のWRCだと実感しますね。公式通知や、コミュニケーションと呼ばれるオフィシャルからのお知らせは、ラリー中も随時更新されていきます。ロードブックのコマ図や時間の変更なども当然含まれていて、これら見落とすと何かあった時に小さなミスでペナルティーを課せられてしまいます。


コ・ドライバーは、これらを常にしっかりチェックしておくことが重要なお仕事なのです。全日本ラリーであれば通知をONにしておけば、その日本語ページを開いてすぐ理解し、修正し、その後の行動に取り入れられますが、実は私は英語が大の苦手。パッと見るだけではなんだかわかりません。
なので、翻訳をかけてからチェックするというワンクッションおかなければならないのは、かなりの手間でした。いつもより対応は遅れてしまいますが、監督からスマホを使った便利な翻訳方法を教えてもらっていた(私はデジタル関係も少し苦手)ので、こちらもなんとか対処ができました。でも海外ラリーだとこれが当たり前。
まさかの車検落ちでヒヤリ……
開始前から波乱が待っていた
またチームとして、今回の最初の難関と言われていたのは公式車検です。
WRCとなればチェック基準が厳しく、ちょっとのことでも「ダメ」と言われてしまうそうで、これはラリージャパンにエントリーが決まったときから松井監督が1番気にしていたポイント。正直なところ、公式車検時の私はペースノート修正に忙しかったので、メカニックさんたちがどれを何して下さったのかはすべてを把握していませんが、各チームすんなり車検が終わらずに、かなりタイムスケジュールが遅れていることは気づきましたし、それだけ厳しくチェックされているんだな~と感じました。
自分たちの車両の公式車検は、担当のメカニックさんたちが車検場まで車両を運んでくれて、すべてオマカセしていたのですが、なかなかサービステントに戻ってこないため、少し心配しました。実際、私たちの車両は1回目の車検には合格できず、メカニックさんがなんとかオフィシャルから指示された場所を修正し、翌日のシェイクダウン前に再車検に持っていき、無事合格をもらえました。
こういうところを見ると、やはりラリージャパンが誰でも簡単に参戦できるものではないな、と実感します。国際競技運転者ライセンス、FIAの規則に合わせた車両、国際ラリーのノウハウがあって、さらに1週間以上のラリー期間を帯同してくれるメカニックやスタッフ……。こうした体制を用意することがとても難しいのです。ラリージャパンを今回参戦したことで、改めてシーズンを戦うWRCのワークスチームやWRC2のセミワークスチームのスゴさを感じました。

まさにお祭りのセレモニアルスタート!
そして、世界選手権らしさを感じたのはセレモニアルスタートです。お客さんの多さは、これまで参戦したラリーとは全然違います! セレモニアルスタートは豊田スタジアム内で行なわれ、太鼓の演奏から始まり鎧武者の合戦ショーなどは日本らしさ満載でした。セレモニアルゲートでもモータースポーツ実況でおなじみのピエール北川さんや、水村リアさんからのインタビューがあり、その後、クルー両名で太鼓を一緒に叩く演出があり、日本のWRCなんだなと改めて実感されられました。

私と村田選手のときは、個人的には良い音が鳴ったように思ったのですが、現場に来場していた皆さんにはどう聞こえてたかな!? 私たちはゼッケンが46だったので、1号車のスタートから1時間以上後だったので、どう叩こうか考える時間がたくさんあって、何度もイメトレしていたのです。海外から参戦しているチームにも、日本を楽しんでもらえてたらいいなと思えた瞬間でした。


豊田スタジアム内にもたくさんの観客が集まっていましたが、スタートしてリエゾンを走りはじめると、信号や広い空きスペース、一軒家からも多くの人々が手を振ってくださっていました。また、地域それぞれに幟旗や横断幕を飾ってある場所もあり、ラリージャパンを地域が盛り上げて下さっていることが伝わってきて感慨深いものがありました。



ラリーは地元地域の協力なしでは開催できないもの、ということはラリーを初めてからすぐに感じていたので、ラリージャパンがここまで受け入れられているとは思っておらず、胸がギュッと締め付けられました。ホントにホントにうれしかったですし、ラリージャパンを参戦している選手という目線で見られたことを幸せに感じました。

ほかにも、いろいろと伝えたい事が多過ぎてさらに長くなりそうなので、3回にわけてお届けしたいと思います。次回はリタイアしそうになった事や、悔しかったことについて書こうかな。お楽しみに(*´-`)ノ

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