レトロっぽいけどレトロじゃない!
YAMAHA「XSR900」は気持ちイイ3気筒モデル
ヤマハ「XSR900」は、兄弟モデル「MT-09」のネイキッドバージョンだ。ネイキッドとは、文字通り「裸」、つまりカウルを持たないスタンダードなフォルムのオートバイのこと。ヤマハではこれを「ヘリテイジモデル」と呼ぶ。


車名の通り、このモデルは900cc、正確には888ccモデルなのだが、日本のオートバイはこれまで、このクラスの排気量となると、ほぼ「並列4気筒エンジン」を採用してきた。しかし、2014年に発売されたMT-09は「並列3気筒」エンジンを採用した。並列3気筒エンジンは、かつてヤマハが1970年代に採用していたエンジン型式だが、40年も時を隔ててしまえば、その関係性はないに等しい。ヤマハはMT-09用に、まったく新しいエンジン型式を開発した、というわけだ。
この3気筒エンジンは、それまでの定番だった4気筒と比べて、パワーフィーリングでは滑らかさにこそ劣るのだが、力感やリアタイヤが路面をつかむトラクション性能に関しては長じている。実際に乗ってみても、スムーズに、シルキーに振動なく盛り上がるようなパワーフィーリングの4気筒と比べて、MT-09の3気筒は、どの回転域でもギュルギュルとエンジンがうなり、アクセルの開閉に俊敏なレスポンスがある印象だった。

このエンジンを新規で開発したのは、ヤマハにとってMT-09が大ヒットしたからだろう。“定番”とは言い換えれば「よくあるもの」であり、オートバイ乗りが重視しがちな「個性」と対極にいる。今ではエネルギッシュな3気筒といえば、ヤマハのお家芸になったほど。





最新の電子制御で武装した「XSR900」
初期モデルでは、幅広のハンドルバーと、前座りなライディングポジションのMT-09がややモタード的な性格を与えられていたのに対し、純然たるロードスポーツ的な味付けをされていたのがXSR900だった。
最新のXSR900は、従来型の845ccから888ccに排気量をアップし、電子制御メカを追加。
通常のライディングでありがたい電子制御は、シフトアップとシフトダウン両方に使用できる、クラッチ操作なしでシフトチェンジができる「クイックシフト」と、高速道路のクルージングなどに快適な、アクセル操作なしで一定速度をキープできる「クルーズコントロール」だろう。クイックシフトとクルーズコントロールは、一度使うとなくてはならない装備に感じられるほど快適な装備なのだ。

そのXSR900、相変わらずパワフルな出力を、かなりスムーズに制御した印象がある。スロットル微開からグンとトルクが出ていた従来モデルよりも、明らかにジェントルにジワッとトルクが出てくるようになり、低速や一般道のストップ&ゴーは、かなりイージーになった。
加速も変わらず強力! アイドリングすぐ上の2000rpmといった低回転域から力があって、5000~6000rpmあたりの常用回転域がスムーズで強い。アクセルの開閉に、ラグなくリアタイヤのグリップが直結しているようなフィーリングこそ、並列3気筒エンジンの特徴だ。
そのパワーをコントロールするハンドリングは、これも3気筒エンジンのスリムさを活かした俊敏なもので、寝かし込みも軽く、切り返しも安定感のある正確さがある。特に、前後サスペンションがよく動くことで、リズムよく連続したコーナーをクリアするのが楽しい。この時に生きてくるのが、クイックシフトだ。
この、120馬力もある力をコントローラブルと感じられることこそが、ヤマハがXSRを世に送り出した成果なのである。


1台であらゆるシーンが楽しめる「XSR900」
ノンカウルスタイルでありながら、高速道路の100~120km/hクルージングも快適。ここではクルーズコントロールが絶大な効果で、意外とホネが折れるアクセルを一定開度で開け続ける、という作業からライダーを解放してくれる。もちろん、クルージングスピードからの加速もイッキで、高速走行でピタリとした安定感があり、レーンチェンジの入力では、軽々としたフットワークを味わえるのだ。
MT-09発売から8年、ヤマハの並列3気筒エンジンモデルは、完全にその地位を確立したといっていい。現在は、所有する1台のオートバイで、どんな用途にも使いたい時代。XSR900は、一般道の渋滞路から、高速道路のクルージング、その先にあるワインディングも含めて、すべてのシチュエーションをすべて楽しめるオートバイなのだ。
取材協力:月刊オートバイ







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