4月14~16日の3日間、幕張メッセにて自動車イベント「AUTOMOBILE COUNCIL 2023」(オートモビル カウンシル)が開催されました。過去最大規模で開催された、自動車の過去から現在、未来をつなぐこのイベントをレポートします。
走る宝石をその場で買える!
新車だけでなくヘリテージカーも多数

8回目を迎えたオートモビル カウンシル。従来はヘリテージカーの展示即売会という印象が強いイベントでしたが、今年はテーマを「Classic Meets Modern and Future」と改めて、ヘリテージカーの展示・販売だけでなく、新型車の展示、さらに2輪・3輪もカテゴリーに加え、ライブなど「クルマを超えてクルマを楽しむ」イベントに様変わりしました。その結果、出展は日本車メーカー・インポーターが9社。ヘリテージカー販売店は過去最多出展の42社と、その他、2輪・3輪、マルシェなど、過去最大の102社が出展しました。
クルマも様々で、従来はスポーツ系車種が中心だったのですが、今年はキャンピングカーなどの姿も見かけました。バラエティーの豊かさは、ほかの自動車イベントにはないもので、見ていて飽きないという言葉がピッタリでした。
ポルシェやフェラーリの歴史を辿れるスペシャル展示




主催者テーマ展示は2つ。1つは今年で生産開始から60年を向えたポルシェ 911の各種モデルを揃えた「初期ナローからカレラGTまで」。いつの時代も最新技術を注ぎ込んだスポーツカーのシンボルであるポルシェ 911を、大きく4つの時代に分け、それぞれの時代を代表するモデル、1966年の911、1973年のカレラ RS 2.7、1993年の959、2006年のカレラGTが展示されていました。もうこれだけで垂涎モノです。





もう1つは、エンツォ・フェラーリ生誕125周年企画「フェラーリ・スペチャーレ」。スーパースポーツカー史に燦然と輝くフェラーリのスペシャルモデルが、なんと6台も集結! 1984年の288GTOに始まり、1990年のF40、1997年のF50、2004年のENZO、2016年のJ50、そして2020年のMonza SP1が一堂に会するのは、このイベントだけではないでしょうか? クルマ好きはもちろん、そうでなくても目が幸せになること間違いナシでした!
水素ロータリーやフェアレディZも!
国内メーカーの名車たちも負けてない!



メーカー、インポーターブースに目を向けてみましょう。まずは日産自動車。シーマ(1990年)が展示されていたのですが、オーナーは女優・伊藤かずえさん! 30年以上乗り続けたクルマを日産が2021年にフルレストアした個体です。伊藤さんは「普段は車庫に入っているので、こうして公の場に出られて本人も幸せだと思います(笑)。




今年創業75周年、4輪製造60周年を迎えるHondaは「四輪進出前夜」と題して、1962年に開発されたSPORTS 360とT360という2台の軽自動車を展示。EVを除いて、総排気量が全ブースで最も少ない展示でした。SPORTS 360は、排気量を360ccから500ccに拡大するとの突然の方針変更により1963年10月にスポーツカー「S500」として発売され、発売に至らず“幻”となったモデルです。
ちなみに鈴鹿サーキットのお披露目時に、故・本田宗一郎さんはSPORTS 360を自ら運転し、満面の笑みでメインスタンド前を早速と走り抜けたそうです。




マツダはロータリーエンジンを搭載したMX-30 e-SKYACTIV R-EV(欧州仕様車)を国内初公開!(ロータリーエンジン搭載のMX-30が日本で初お披露目! やっぱりマツダはロータリーだ!) 2012年で生産を完了したロータリーに再び火が入るとあって、ブースは終始大賑わい。
さらにコスモAP(1975年)、燃料としてガソリンのほか水素も利用できるRX-8 ハイドロジェンRE(2006年)を展示。さらにMXつながり、ということか1981年の東京モーターショーで発表したコンセプトカーMX-81を展示。MX-81は10年後のファミリアをコンセプトに、ベルトーネが設計したもの。



オートモビルカウンシル初出展だった三菱自動車は、4WDとEVの車両を展示。アウトランダーPHEV、エクリプスクロスPHEV、eKクロスEVといった現行車両のほか、過去のレースに参戦した2台の車両を展示していました。アウトランダーPHEVのアジアクロスカントリーラリー参戦車両(2013年)。競技用にサスペンションとロールゲージ、アンダーガード、シュノーケル(吸気用ダクト)を装備した車両です。MiEV Evolution III(2014年)は、2014年のパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムの電気自動車改造クラス優勝(総合2位)をした車両です。世界に三菱のEV技術と4輪制御技術(S-AWC)をみせつけたのでした。
歴代アルピーヌや日本初披露の911 GT3 RSも登場





フランス・アルピーヌは過去から現在のA110を展示。A110は1963年から1977年まで製造され、1600Sは1968年に誕生。この頃から埋め込み式の補助ライトがつけられたのは、この時代からと言われています。A110GTはラグジュアリーモデルで新色ブルーアピスMは上品のひとこと! Radical(過激)を意味するA110Rは、ルーフ、エンジンフード、そしてホイールまでカーボンで武装した1台。フードをカーボン化しため、なんとルームミラーはなく、カメラミラーを採用しているそうです。価格は1550万円で現在受注しているそうです。





新旧4台のモデルを展示したポルシェ・ジャパン。911 Carerra(Type993/1995年)とCayenne Turbo(Type957/2009年)は、いわゆる中古センターのクルマのようで、Cayenneには新規のオプションがいくつか取り付けられていました。
ブースで目を惹いたのが、この日が日本初公開だという911 GT3 RS(Type992/2022年)は、最高出力525PS、最大トルク465Nmというスペックもさることながら、3134万円というプライスタグにも驚き。さらにGTウイングなどのオプションが852万円分取り付けられて総額3986万円! Taycan Turbo Cross Turismo(2022年)のルーフには、約90万円というテントが取り付けられて、アウトドア感を演出。快適なツーリングの後に、好きな場所で休めるクルマに仕上げられていました。



マセラティ・ジャパンは新旧2台のオープンカーを展示。ミストラル・スパイダーは1963年から1970年の7年間発売したグランツーリズモのオープンモデル。生産台数は125台と希少価値の高いモデルです。そしてMC20チェロ(2023年)を日本初公開! チェロとはイタリア語で空を意味し、ルーフを閉じた状態のガラスルーフも、透明とスモークに変化する仕掛けがなされているとのこと。お値段は写真のPrimaSerieというグレードで4438万円とのこと。


中国のBEV専業ブランド、BYDも初出展。SUVのATTOを3台、2023年末発売予定のセダンタイプSEALを展示していました。


ステランティス・ジャパンはプジョー 308とアルファロメオのコンパクトSUV、Toneleを展示。308は昨年、9年ぶりにモデルチェンジし、写真のモデルはプラグインハイブリッドのパワートレインを搭載。Tonaleはアルファロメオ電動化の旗印として、マイルドハイブリッドとPHEV、そして2024年にBEVを投入する予定です。日本導入モデルはマイルドハイブリッドのエントリーグレードと、記念モデルで台数限定のエディツィオーネスペチアーレで、定数達成次第、ヴェローチェグレードへとチェンジする予定とのことでした。

自動車の製品開発や工業製品モデリング・システム開発を請け負うエイム(AIM)は、オートモビルカウンシルとしては初となるコンセプトカーを展示。自らの技術力を誇示すべく「EV SPORT 01」をお披露目。その名のとおりのBEVカーで、カーボンモノコックのフレームが印象的です。2023年7月13~16日にイギリスのウェスト・サセックス州 で開催されるGoodwood Festival of Speedに参加し、走らせるとのことでした。
個人的に気になったブースとクルマたち
メーカーやディーラーではありませんが、注目のクルマや展示をされているブースを3つご紹介しましょう。



まずは、国内屈指の高速サーキット「富士スピードウェイ」を運営・管理する富士モータースポーツフォレスト。近年は富士24時間レースやWEC富士など「耐久の富士」を強く打ち出していまして、耐久レースに参戦した車両を展示していました。
ベントレーは、1923年の第1回ル・マン24時間レースに唯一の英国車としてプライベート参戦し4位に入賞。その翌年からワークス体制で挑戦し優勝を果たしました。展示されている車両は1928年優勝者を再現したレプリカで、車名の「4 1/2」は、排気量が4398㏄に由来するそうです。
TS050 HYBRIDは、2016年に富士スピードウェイで開催されたWEC富士6時間レースで小林可夢偉選手がステアリングを握った優勝車両。この年のル・マン24時間レースでTS050 HYBRIDの5号車は、トップを快走するもレース残り6分でドライバーの中嶋一貴選手が「ノーパワー!」と無線で叫び、残り3分の時点で、ホームストレート上でマシンを停めたというモータースポーツ史に残る大事件が起きました。


次に、我が国が誇る高級オーディオブランドのテクニクス。なんと移動式の試聴ルーム「Technics Sound Trailer」を制作し、展示(試聴会)をしていました。確かにオーディオは機械はもちろんのこと、部屋の影響を受けますからね。期間中は定期的にレコードコンサートを実施していたほか、空き時間では自由に手持ちの音源の試聴ができました。


珍しいクルマを見たら写真を撮りたくなるものです。カメラメーカーのニコンもブースでは、カジュアルな「Zfc」とフラグシップの「Z9」という2台のカメラの貸し出しサービスを行なっていました。なんと3時間無料で試せるほか、32GBのSDカードをプレゼントという太っ腹ぶり!
ヘリテージカーも値上げが続いている
ヘリテージカーの展示販売ブースに目を向けてみましょう。

ポルシェ 944は、1982年、924と911SCの間に位置するパフォーマンスと価格として誕生したモデル。フロントには直列4気筒エンジンを、リアにトランスミッションを置くことで、重量バランスを改善。発売当時、944 Turboは世界一ハンドリングが良いクルマとして称賛を受けました。
写真の944ターボSはターボカップレーサーをベースとした1000台の限定車。ターボチャージャーが大型化され、250PSを発生します。現在の価格は1180万円。

ロールス・ロイス「クラウド」シリーズのベントレー版最終モデル。1962年から生産された「S3」の総生産台数は1286台、ロングホイールにいたっては「32台」が生産されたといわれています。ロールス社の新設計V8エンジンはアルミ合金製6230cc OHVで、ミッションは4速AT。ダンパー調整や、ドライブシャフトの回転からパワーを取り出し、ブレーキの効きをアシストする「メカニカルサーボブレーキ」など、当時としては先進の機能が搭載されていました。現在の価格は1580万円。



ローバー・ミニをベースに雑誌ラピタとコラボして「最後のミニで最高のミニを造ろう」とワンオフで制作した車両。クルマと最高の夏を楽しむにピッタリな雰囲気で、インテリアは上質、さらにモールトンが積載可能! リアラゲッジのドアをテーブルとして使うアイデアに感心しきり。現在の価格は585万円。

フォルクスワーゲン 初代ゴルフの4座オープンモデル。写真のモデルは89年にビッグマイナーチェンジを受けた後期型。ゴルフのオープンモデルは第2世代には設定されず、クラシックのサブネームがつけられ、3代目カブリオレの登場(1992年)まで販売される長寿モデルとなりました。Every Little Thingのボーカル持田香織さんが20歳で購入し、以後20年以上にわたり乗り続けられているのも有名な話です。現在の価格は289万円。

参考出品の形で展示されていたのは、モータースポーツ史に燦然と輝く金字塔、グループCカーの名車であるポルシェ962。そのロスマンズカラーといえば、1981年からル・マン24時間レースで4連勝を飾り、956や962といえばこの色と強く印象づけました。この962は、シュパンレーシングが作り上げた、ロードゴーイングバージョンで、ナンバー付き! 公道をこのマシンが走るとかロマン以外の何モノでもありません。ちなみに当時で2億円というプライスタグがついたとか。

こちらも参考出品という形でしたが、フェラーリ512BBが展示されていました。512BBiは1981年から1984年という短い期間に、わずか1000台ほどが生産された当時のフラグシップモデル。その頃、フェラーリはランボルギーニ・カウンタックと「公道最速」の称号で競い合っていたこと、そして日本ではスーパーカーブーム絶頂期に登場したことから、今もなお高い人気を集める1台です。

本田技研工業がS500に続いて1964年から1966年まで生産したコンパクトスポーツで、西ドイツへ初めて輸出したアジア製の四輪車としても知られています。オープンモデルとクーペモデルの2種類がありますが、クーペボディーは晩年の1965年から1年たらずしか生産されなかったと言われています。現在の価格は550万円。

ポルシェ911には様々なモデルがありますが、中でも空冷エンジン搭載車は昨今人気を集めています。写真の911(964型)は、911としては初となる4WDシステムとティプトロニックを搭載したことで、大きな転換期を迎えました。写真のカレラ2の現在の価格は1980万円。
■関連サイト