Honda純正ナビシステム「Gathers(ギャザズ)」(写真はVXM-237VFEi/21万5600円)

 Hondaの純正アクセサリーを手掛けるホンダアクセスのカーオーディオ&ナビゲーションブランド「Gathers(ギャザズ)」が2022年にブランド誕生35周年を迎えました。そこでカーナビの歴史を振り返るとともに、現在のカーナビ事情をご紹介しましょう。

「ナビはスマホで十分」という方、必見です!


カーナビのニーズは日本と海外だと違う

Honda車のマストアイテム! 35年を迎えた「Gathers」ナビの今昔物語
CIVICに搭載された「Honda CONNECTディスプレー」

 まず、現在のHonda車のナビは、大きくわけて2種類が用意されています。ひとつはCIVICをはじめとするグローバル車種を中心に用意されている「Honda CONNECTディスプレー」。一方、「ギャザズ」はNシリーズやSTEPWGNといった、日本向けの色が濃い車種を中心にラインアップされています(CIVICにもギャザズのナビは用意されています)。この「初めから搭載されているナビ」と「ギャザズ」はまったくの別物で、開発体制も完全に分かれているのです。


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DVD再生に対応したGathersナビ

 なぜこうなっているのかというと、日本と海外ではユーザーニーズが異なるから。海外では車内で音楽を楽しむ時はスマートフォンが主流。日本でもスマートフォンでカーオーディオを楽しまれる方が増えていますが、DVDやCDが年配の方を中心に今なお根強い人気があるのだとか。つまりグローバルの仕様では、日本の実情とは合わないというわけです。


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アプリで機能拡張ができる「Honda CONNECTディスプレー」
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トイレを検索するアプリも用意されている

 そこでホンダアクセスが日本向けの商品ラインナップを展開し、サポートをしているというわけです。実際に使ってみると、「Honda CONNECTディスプレー」は、アプリで機能拡張ができる反面、スマホに慣れている人には便利ですが、いまだガラケーの方が使い勝手がイイという方には操作が煩雑に思うかも。


 「ギャザズ」は使い勝手の面で迷いが少ないだけでなく、「かゆいところまで手が届いているなぁ」と感心すること間違いナシ。後述しますが、ドライブレコーダーとの連携やハイレゾファイル音源再生に対応するなど、機能面でも充実しています。長年Honda車に乗っている人にとっては、「ギャザズ」の方が使いやすいでしょう。


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ギャザズは1987年に誕生

 では、ギャザズの歴史を振り返ってみましょう。ギャザズが誕生したのは1987年のこと。カーナビゲーションシステムはなかった時代で、カーオーディオといえば専用メーカー品を取り付けるのが当たり前の時代です。ギャザズの製品ラインナップは、それら専用メーカーのOEMをチョイスした、いわば「カーオーディオのセレクトショップ」的な立ち位置でした。それゆえギャザズの名は「色々なメーカーが手を組むこと」からTogetherをもじった、とも(諸説あるうちの1つです)。


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DSPを用いて高音質化の道が拓かれた
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高音質化が図られたコンポーネント

 その後、カーオーディオはラジオ&カセットテープからCDへと主流ソース機器が移行していきます。あわせて音質にこだわる声も出てくるようになりました。それに合わせギャザズも1990年に高級オーディオシリーズの展開が始まります。


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写真は2007年のモデルだが、ナビゲーションシステムは90年代から登場しはじめた
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2DIN、3DINのコンポーネント群。写真の1DINコンポーネントにはMDが!
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車両通信が確立したのは1995年頃

 そして1990年代に入るとカーナビゲーションが一般化。ホンダアクセスはいち早く車両とナビゲーションシステムをつなげるメーカー横断の共通規格を策定するなど、来るべき将来を見据えました。そして時代は2DINや3DINサイズナビの時代へ。

またMDが登場したのも、この辺りです。


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ボックスウーファーキット
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当時のカタログ

 オーディオの面でも、「S-MX」など車種によってはサブウーファーを用意したり、デザインコンシャスなモデルが登場するなど、個性的なモデルがラインナップに加わります。こういう製品を見ると「この頃はドデカホーンというラジカセとかあったなぁ……」と、おじさんの昔話は止まらなくなります。


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最後のカセットテープ対応モデル(2007)

 2000年代に入ると、ギャザズのメインストリームはDVDナビ、HDDナビといったモデルが登場。そして2007年にはカセットテープ対応のモデルが姿を消します。システムも通信型ナビ「インターナビ・リンク」を搭載するなど、多機能化が進んでいきました。


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現在のナビは高付加価値が求められている

 そして現代は、大画面化とドライブレコーダー連携、Honda CONNECTディスプレーと同等のサービスが利用できるようになったほか、Honda SENSINGとあわせた運転支援オプションなどが搭載されるようになりました。カーオーディオから始まったギャザズは、今やクルマのシステムの一部となっています。


高音質にオーディオを進化させたギャザズ

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「音の匠」をオンにした状態
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「DIATONE SOUND」をオンにした状態

 では、現代はどういったモデルがあるのでしょう。まずはカーオーディオの深化を体験することに。現在のギャザズは、車両によって音響特性を合わせてセッティングをしているのだそう。さらにオプションのハイグレードスピーカーシステムと組み合わせると、「DIATONE SOUND」または「音の匠」のいずれかのモード(車種によって異なる)が利用できます。とだけではわかりにくいので、ご紹介しましょう。


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DIATONE SOUNDのセッティングパラメーター

 DIATONEは、三菱電機が70年以上にわたり手掛けるオーディオブランド。民生機のみならず、NHK放送技術研究所と共同でフロアー型放送・業務用モニタースピーカーを開発・納品するなど、我が国を代表するオーディオブランドです。標準スピーカーと、DIATONE SOUNDを比べると、音色、音の定位、解像感などのオーディオ専門用語で語る以前に、比較すること自体が間違いと言いたくなるほどの雲泥の差。入っている音をストレートに出す、という意思を感じさせる生真面目があり、それがDIATONEらしいなと思いました。


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音の匠のセッティング画面

 「音の匠」は、録音エンジニアで“音の匠”こと内沼映二氏が興した(現代表は三浦瑞生氏)のレコーディングエンジニア/マスタリングエンジニア集団“MIXER'S LAB(ミキサーズラボ)”によるチューニングがなされたもの。MIXER'S LABが手掛けた楽曲は数知れずで、今も様々なアーティストやレコード会社が、彼らに仕事を発注しています。その一方、彼らは2004年から自らレーベルを立ち上げ音源の企画・制作・販売をしています。SACDやハイレゾファイル音源は、オーディオファイルの間では高音質盤として知られています。


 ということで、ミキサーズラボのハイレゾ音源「BIG BAND SCALE~甦るビッグバンドサウンド~」から、ジャズを2曲試聴。こちらも正確、アキュレートな音を志向しているのだけど、ダイアトーンと違って、サラッとライトな楽しさを重視しているような印象を受けました。


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左が標準スピーカー、右がギャザズのユニット

 カーオーディオ専門店で、このレベルまでの音を求めると結構な投資が必要となるのですが、ギャザズの場合はスピーカーユニットを交換するだけでOKとのこと! その金額は車種によって変わりますが、それでも6万円くらいで終わるようです。ドライブが楽しくなること間違いナシなので、これは替えるが吉! と思います。


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S660(写真手前)とBEAT
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BEAT誕生20年目に誕生したカーオーディオシステム
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動作状態

 音の話ついでに、2台のオープンカーもご紹介しましょう。BEATとS660です。BEATにもカーオーディオが用意されていましたが、BEAT誕生20周年を記念して、2011年にiPhoneなどに対応するモデルを販売。販売終了して久しいモデルに向けたカーオーディオを作るとは恐れ入ります。そしてBEATにはスカイサウンドシステムと呼ぶ、ヘッドレスト付近にスピーカーを配置して、オープンエアーでも音楽が楽しめるアイテムが用意されていました。


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S660用ナビシステム
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ヘッドレストに搭載したスピーカー

 S660用ナビは、当初計画になかったアイテム。S660はスマートフォンとUSB接続すればナビが使えるのですが、精度や使い勝手の面でナビを求める声が高く、開発を進めていったとのこと。そして、こちらにもスカイサウンドシステムが登場! これも「BEATにあってS660にないとは何事だ」という市場要求から誕生したと言われています。


運転支援拡張ユニットは煽り運転防止機能も!

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リアカメラ

 次に最新ギャザズナビに搭載されている「リアカメラ de あんしんプラス3」をご紹介しましょう。これは「ナビ装着用スペシャルパッケージ」装備車または「Honda CONNECT for Gathers+ナビ装着用スペシャルパッケージ」装備車専用に開発された運転支援拡張ユニットで、主に4つの機能が追加されます。


 1つ目は自車と駐車枠との角度のずれを知らせてくれるダイナミックガイドラインと、ハンドル切れ角が視認できるアシストラインを表示する「後退駐車サポート」。2つ目は後退時に車両後方左右から接近してくる車両や歩行者などを検知し知らせてくれる「後退出庫サポート」。


 3つ目は走行中ドライバーからの死角になりやすい斜め後方に接近してくる車両を知らせてくれる「後方死角サポート」。

最後に車間距離が短い後続車両を知らせる「後方車両お知らせ機能」。「リアカメラ de あんしんプラス3」のオプション価格は2万2000円とリーズナブルな価格設定なのもうれしい限りです。


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バックしている状態のナビ画面の様子
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線が示すもの

 まずは「後退駐車サポート」。リバースギアを入れると、ナビ画面にリアの映像が出て、車庫枠の中に表示される線を入れるようにハンドルを切ります。これはよく見かける機能ですが、これがナビの機能だったことを知ると驚きませんか? もちろん車種ごとにハンドルの切れ角や車体のサイズが違うので、1車種ごとにテストしているので、画面に頼りきっても全然OKなのです!


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入庫中に突然人が出てきた時にアラートを出します
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その時のナビ画面の様子

 続いて「後退出庫サポート」。これはバックしている時に障害物を検知するとアラートなどでお知らせするというもの。突然死角から人が出てきた時にピー! と警告音が鳴ったりするのですが、てっきり超音波ソナーだと思っていたら、これが画像認識だったということに驚きです。


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車線変更時、死角にクルマが!
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車線変更時、クルマに衝突しそうになるとナビ画面と音でお知らせする
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煽り運転をされている様子
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煽り運転をされていることをお知らせする(オレンジ色のマーク)

 画像認識で驚くのが、後方死角サポートと後方車両お知らせ機能。後方死角サポートは、たとえば高速道路での車線変更時、近くにクルマがいたら警告音で教えてくれるというもの。長時間ドライブして注意力が低下している時に、強い味方になってくれます。そして後方車両お知らせ機能は、いわゆる煽り運転をされているかを判定するというもの。実際に走りながら、どの位の距離で何秒間だと煽り運転と感じるか、というのを実験して導き出したのだとか。


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リアカメラに付いた水滴を飛ばすアイテムもある!

 これらをカメラ1個で実現しているところが驚きです。「でも、バックカメラって水滴がつくと見えなくなるじゃん!」と思っていたら、なんとオプションで水滴を飛ばすブロワー機能のアイテムを用意しているというではありませんか! バックギアを入れた時に作動するようです。


昔の車種に最新のカーナビがつけられる!

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旧型N-BOX
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旧型N-BOXに適した8インチナビ

 先ほどBEAT用のカーオーディオを作り直して発売したことがあるとご紹介しました。実はほかにも「車種によっては昔のクルマに最新のカーナビを取り付ける」ことができるのです! まずは2013年式の初代N-BOXに、2023年式のギャザズを取り付けた例から。ナビは製造完了後、ある一定の期間を過ぎると「サポート対象外」になります。この時に困るのが「マップが更新されない」こと。新型は8インチディスプレイで十分な大きさ。これなら迷いはありません!


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現行N-BOX(Custom)
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Nシリーズ用9インチプレミアムナビ
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VEZEL
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VEZEL用9インチナビ
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ステップワゴン
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ステップワゴンの2列目シートにモニターをつけた状態。さらにオプションのカーテンを使えばカーシアターが完成する

 ほかにも「11.4インチ Honda CONNECTナビ」(ステップワゴン、ZR-V)、「9インチ Honda CONNECTナビ」(ヴェゼル)、「Nシリーズ専用9インチ プレミアムインター ナビ」(N-BOX Custom)が展示。さらにステップワゴンにはオプションの大型モニターも取り付けられていました。


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ギャザズの認知拡大に貢献した1999年スーパー耐久シリーズ参戦車

 今やナビはクルマの一部で、あって当たり前。それゆえ注目をしてこなかった自分を、取材を通じて恥じた次第です。純正だからこそ得られる親和性とHondaのクルマと同じ耐久性試験をクリアしているという安心感に加え、35年前に始まったオーディオの分野では「音の匠」「DIATONE SOUND」に代表されるような品位向上、さらには運転支援まで取り入れたギャザズのナビシステム。


 Honda車のマストアイテムであることを改めて確信するとともに、今後どのように深化していくのか楽しみになってきました。


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