今春、スバルのスタンダードモデル「インプレッサ」が、フルモデルチェンジ。いわゆるカローラクラスであるが、現在のスバルでは、軽自動車シリーズと小型車はダイハツからのOEMとなり、このインプレッサが事実上のスバルエントリーとなる。
新型インプレッサ

■セダンタイプもスポーツもはなくなったが
■インプレッサならではの走りや最新技術は健在
新型最大のトピックは、伝統の4ドアセダンボディーが廃止され、5ドアハッチバックに一本化されたこと。これは世界的なセダン市場の縮小による影響であり、5ドアハッチバックのサブネーム「スポーツ」が外され、単にインプレッサと呼ぶようになった。そのため、キャラクターもすばり若い世代も狙ったシャープなスタイルと、スバルらしい走りを持つ実用的スポーティカーを目指して作られている。
簡単に新型のメカニズムの特徴を説明すると、まず基本骨格となるプラットフォームを、先代インプレッサが初採用となる「スバルグローバルプラットフォーム(SGP)」から、レヴォーグなどの上位モデルが採用する「SGP×フルインナーフレーム構造」へと進化させるなど、基本構造を見直すことでボディー剛性の向上を図っている。
エンジンは、ガソリン仕様の2.0L水平対向エンジンに一本化され、独自のハイブリッド「e-BOXER」を主力とし、エントリー向けのピュアエンジン仕様も設定。数字上は、先代ガソリン車及びe-BOXER車と同じだが、エンジン本体にも改良を加えている。トランスミッションはCVTのみとなるが、こちらもしっかりと進化。駆動方式は、先代同様、FFと4WDから選択可能だ。

そして、スバル独自の先進運転支援機能「アイサイト」は、最新世代となるステレオカメラに単眼カメラを加えることで、視界を拡大させることで、より安心安全も進化させている。ちなみに、高度運転支援機能となる「アイサイトX」は、価格低減を目的に非採用だが、自動運転レベル2相当となる「ツーリングアシスト」は標準化されているので、ロングドライブでの疲労軽減を助けてくれるだろう。
新世代スバルデザインを取り入れたスタイリングは、先代の面影を残しつつ、よりスポーティーなテイストに。

■フロントシートのデザインが変わったのが最大のトピック
インテリアは、レヴォーグなどの最新スバル車と同様に、ダッシュボード中央に縦型大画面モニターを装備したもの。メーターパネルは、おなじみのアナログ2眼式となるが、視認性に優れる。メーター中央には、小型液晶パネルが装備され、アイサイトなどの機能表示を行なう。運転席周りでの注目点は、新構造となったフロントシートだ。シートはデザインこそ変化するが、構造自体は数世代に渡って使われることで、設計変更による刷新は大きなニュースなのだ。



ラゲッジスペースは、e-BOXERで311Lを確保。デザインなどの影響で、先代e-BOXERよりも25L縮小しているが、使い勝手は同等を維持したという。もちろん、後席は2分割の可倒式となるので、荷物に合わせて、ラゲッジスペースを増すことも可能だ。


■カタログにスペックに現れない
■静粛性やハイブリッド制御が進化した
試乗車は、販売の主力となるハイブリッド「e-BOXER」の最上位グレード「ST-H」だ。新型インプレッサに乗った感想は、素直な良いクルマだ。誤解を恐れずに言うならば、カタログスペックは平均的。
まずは静粛性の向上だ。遮音対策を強化することで、先代と比べ、耳障りなノイズの低減が図られている。走行音に関しては、ハイブリッド制御の変更も大きい。これまでのe-BOXERは、できるだけ電動走行をさせようと、エンジンとモーターの切り替えを頻繁に行なっていたが、その分、エンジン音が目立つ傾向にあった。しかし、新型では、エンジンとモーターのバランスよく使うことを重視。エンジンの作動時間こそ増えているが、急な回転数の上昇も起こりにくいので、走行音の変化が生む不快さがなくなったのだ。もちろん、燃費についても向上しているので、ご心配なく。

特に魅力を伝えたいのが、新型のフロントシート。その良さは、走り始めてすぐわかる。乗員の腰をしっかりと支えることで、安定した姿勢を確保。これによりクルマの動きが大きいカーブや峠道でも、安心して運転することができるのだ。
走りについては、ボディー剛性の向上に加え、レヴォーグなどの上位モデルと同じ2モーターの電動パワーステアリングを搭載したことで、ステアリングの応答性が向上し、ドライバーが意のままに操れる感覚が高まった。これはスポーティーな走りだけでなく、運転のしやすさや疲労軽減にも繋がっている。つまり、派手さはないが上位モデル技術の採用や見えない部分にもしっかりと手を加えることで、走る楽しさを備えたスバルらしいベーシックカーに仕立てられているのだ。
実用的な5ドアハッチバックとしての総合点はかなり高いが、もちろん弱点もある。最も注目されるのは、燃費だろう。ハイブリッドの燃費としてはWLTCモード燃費で約16km/hと、平凡すぎる(高速道路で約18km/hくらい)。これは水平対向エンジンによるパワートレインレイアウトの影響で、構造上、大きいハイブリッド用モーターが搭載しにくいのだ。そのため、ライバルと比べて燃費が不利なのは間違いない。それでも、先代よりも燃費が向上している点は評価したい。

全体的には、内外装共に比較的オールディーズといえる形状やレイアウトだと思う。特にコクピットは、縦型大画面モニターこそ今どきだが、メーター表示や操作系は基本に忠実だ。

個人的に注目するのは、試乗できていないエントリーモデル2.0Lガソリン車「ST」だ。装備が絞られるが、アイサイトを含め、基本性能には妥協なし。だから、お買い得感も高い。このエントリーモデルを試す機会があれば、その際は、またレポートをしたい。
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